芦名穣二
~少し時を戻し~
執事長と文官たちが奔走してくれている間、ジョージたちは「どうする?」と悩んだ結果、各村をもう一度回ってみた。
どの村もだいぶ活気付いて来て、笑顔が溢れている。
特に、プルウィルーサの祠はどの村でも綺麗に磨かれ、まだまだ自分たちの食料も少ないなか、新鮮なものが供えられていた。
恵みの雨に感謝し、小さな子供たちも手をあわせて「ありがとうございます!」と感謝をあらわした。
龍神山にも訪れ、そんな村人たちの様子を伝えると龍神は涙を流し「そなたらのおかげで過ちに気づくことができた。善良な人々を殺める事なく済ませられた。本当に感謝する」と言った。
「いやいや、普通怒ってもっと暴れ回るでしょ♪
しかしあのカミナリかっこ良かったなぁ~♪マジで『ラムウ』を召喚したのかと思った!
龍神様、俺の国の昔話では『雷』の事を『神鳴り』とも言うんだよ!
雲の上に、オーガみたいな角の生えた神様がいて背負った太鼓を叩くのさ♪こんな感じ!」
と風神雷神の絵を描いた。
「うわぁ!ホントにオーガみたいだね♪ジョージさんってとっても絵が上手、びっくりしちゃった!」
「ホントだめっちゃ上手いな!それにしてもリーダー、雷に食い付き過ぎ(笑)
あの時も、みんなが呆然と領主の亡骸見てたのに、1人龍神様をキラキラした目で見てたよな?」
「あははっ、面目ない。雷ってけっこう俺の国でもあったけど、あんな至近距離に落ちたの初めてで興奮したゎ♪
遠くで鳴ったらゴロゴロで、比較的近いとバリバリ~ドオーンだけど、あんな乾いたパリパリパリって音は初めてだった。マジ『ラムウ』♪」
「何かよくラムウラムウって言ってるけど、それってジョージさんの世界の魔法名なの?」
「あぁ、ジェイドにはまだ言ってなかったな。俺の生まれ育った地球という星には、魔法は存在しないんだ。もちろん魔物もいない。野生動物はいるけどね」
「え?じゃあお肉焼いたりスープ作ったりってどうするの?」
「魔法の代わりに色んな道具があるのさ。見てみるか?パーティーハウスの俺の部屋に持ってきた荷物あるから」
「うん、見た~い♪」
ジェイドが出したパーティーハウスから、大型の背負い袋のようなものを担ぎながら出てきた。
「これが懐中電灯、ライトの魔法みたいなモノさ。夜とか洞窟みたいな暗いところでスイッチオン!
これはペットボトル。もともとこの中に、水やジュースが入ってて飲み終わった後は、また飲み物を入れる容器になる。
これがライター。火をつける道具さ。こんな風にカマド作って中にマキ入れて、カチッカチッ。で、火がつく。
ね?便利でしょ♪」
「ほぉ~~!これは?これは?」
「あぁ~~これはスマホとパソコンだな……
ホントはこの中に色んな画像や音楽が入っているんだけどね、もう電池切れで起動できないんだ」
「デンチギレ?」
「こういう機械類を動かすには、電気ってものが要るんだ。それを貯めておくのが、電池。
山に入って絵を描いたり写真を撮る為に充電器も持って歩いてたけど、悲しいかなこちらの世界にはコンセントが無いのさ……」
「そうなんだ、もう見れないんだね。ジョージさんがこちらの世界でそのコンセントっていうのを作ってみるのは無理なの?」
「コンセントまで電気を送ってくれる、発電所がそもそも無いから無理かな?
というか、こちらの人には発電所って必要ないしね」
「えぇ!今度はハツデンショ?
ジョージさんの前の世界って色々面倒くさいんだね♪」
「あははっ、そうかもしれない♪
こちらに来たはじめの頃は、トイレとか風呂とか、何なん此処?って思ったけど今はこっちの方が便利かもしれない(笑)
もう向こうには戻れないカラダになってしまった(笑) 重い物の運搬とか。
電気ってのはね、ごくごく微弱なボルトみたいなモノなんだ。この世界の人には魔石があるからそんな大掛かりな発電所なんて無くても、水も火も風も不便無く使えるからね」
「……微弱なボルト……」
「どうした?ジェイド」ぽふぽふ
「う~ん、ミカさんちょっと僕の魔法見て♪」
「えぇ、いいわよ♪」
「じゃあいくね【ファイヤー】」どやっ
「「「ん?ジェイド?」」」
「アンリさぁん、ちょっと背中貸して♪」
「おぅ!なんだなんだ?」
「次はボルトいきますよ~♪【ボルト】」
「うぇ?ちょ!ちょ~待て!うゎっうゎっうゎっ!………あれ?何か気持ちいい……」
「……とまぁ、僕の魔法は生活魔法みたいなモノなんだけど、このボルトって使えます?」
「……そうだな、俺はもう元の世界に戻れない。どうせ電気もないから起動できないんなら壊れてるのも一緒だし、試してみてもいいかもな!
ジェイド、頼むゎ♪」
「うん、壊さないように頑張る!いくね♪
【ぼぉ~るぅ~とぉ~~】」
(((((声小さくしても魔力は変わらないと思うけどなんだか可愛い♪)))))
充電中を知らせる赤いランプが灯り、やがて緑になった。
意を決し起動ボタンを押すと、電源が入った。
「おぉ!マジか!起動したよ!」
「「「やったね♪」」」
-ピ~ロ~リリ~ン-
「「「「「音楽鳴った!」」」」」
「イヤ、今のはパソコンつきましたよ~って合図だから。
音楽ってのはこんな感じ♪」
動画を再生するとジョージのお気に入りのユニットが踊りながら歌っている。
この世界での歌というのは讃美歌のようなものばかりで、こういう激しいダンスとシャウトするような歌い方のジャンルは無い。
それもオドロキだが、この薄くて小さな箱に収まっている人達を見てジェイドが叫ぶ。
「この人たちは妖精さん?リリパットさん?閉じ込めて無理やりダンスさせてるの?」
かわいそう~という雰囲気で半泣きだ。
「ちゃうちゃう」と言いながらスマホのビデオ撮影でジェイドを撮る。
「ほれ、ジェイド。見てみ♪」
と再生させると、ジェイドが両手でほっぺたを押さえながら「早く出してあげて~~」と話しているところだった。
「あれ?これ僕?」
「そうそう。こんな風に撮ったやつだから、中に誰かを閉じ込めてるんじゃないの。すごいっしょ?」
「うわぁ、すごい!こんなこと出来る魔道具ってきっと無いよね?ふあぁ~♪」
ジェイドがぽちぽち触っていると、メール画面が出てきた。
「これ、ジョージさんの国の文字?くねくねしてて何か難しそう!」
『出展に際してのお願い』というタイトルのメールに、ジョージが「あ……」と呟いた。
メールを開くジョージ、少し瞳に哀しみが映っている。
『 芦名穣二様
暮夏のみぎり芦名様にはお元気でお過ごしのこと何よりと存じます。
さて、今回出展していただきます作品ですが………』
と、長々と続く文章を、パタンと閉じてクチビルだけで笑う。
そして深呼吸し、ニカッと笑いながらこちらを見た。
「この『芦名穣二』ってのが俺の母国の言葉で書いた俺の名前、漢字っていうんだ。
穣二はホントは『じょうじ』って読むんだけど、こちらでは発音しにくいから、ジョージって言ってるんだ。
で、この『みぎり』とか『していただきます』とかいうのが平仮名って言って、これを組み合わせて文章を作っているのさ♪
これはメールと言って、こちらでいうところの手紙とか書状って感じかな?
こちらの手紙のように紙に書いて配達してもらう形のもあるけど、これは文字書いて、この『送信』ってボタン押したら一瞬で相手に届くんだ」
にこやかに説明していたが、へにょっと眉毛が下がった。
「俺、この頃イラストレーターって仕事しててさ、まだ売れないから副業で土木作業員とかの肉体労働してたのさ。
やっと認められて個展を開けることになったんだけどなぁ~。ちょっとそれだけが残念……」
「「「「「………」」」」」
こういう時にかける言葉は見当たらない、ただ見守るだけしかない……はず?
「あっ!ジョージさん、これ!これ!ねぇこれ綺麗な色!」
「おっ?あぁこれ、その個展に出す予定だった作品のファイルだな♪見てみるか?」
「うん、見たい♪早く!早く!」
こっちの作品はこういうイメージで……とか、こっちのは夢で観た世界観を忘れないうちにと起き抜けに一心不乱に描きあげて完成するなり空腹と疲労でばったり倒れたなぁ~♪
等々、1つ1つの作品のエピソードを語って行くうちに、ジョージの笑顔は本物になっていた。
「おぉ、残ってた!ジェイド、見てみ♪これがラムウ様だ!」
「えぇ~~?これ……村長さん……?」
「「「「村長さん?」」」」
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