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セルシオとジュピターとラムウ

「雨を降らせていただきありがとうございます。

そもそもあなた様はお優しい方ですので、きっとこの願いをお聞き届け下さると思っておりました」


『ふぉふぉふぉ!なんじゃ急に持ち上げて。そなたらが約束してくれたから雨を降らせたまで』


「いえ、パルジャニエール様、あなた様がもし本気で人間を滅ぼそうとしたなら、暴風雨を3日も起こせばこの地を更地に出来た筈です。

人も家も流され山は崩れ河は氾濫する……本当ならそうされても仕方ない事を人間は仕出かしたのですから。

なのにあなた様は旱の方を選んだ。

優しい方です」


『なんとも面映ゆいの(笑)』


「御子様は2~3日のうちにお連れ出来ると思いますので。

本当は明日にでもお連れしたいのですが、いま保護してくれている少年が、ついて来て貴方に一言謝りたい……と多分言うのではないかと思います。

しかし病弱なため、体調と相談しながら……ということになるかもしれませんので今日伝えて直ぐ……というわけにもいかないかもしれません。申し訳ありませんが少し日にちをください。

なるべく早くお連れしますので、もう少々お待ち下さい」


『無事な姿を見れるのなら少しぐらい何でもない。しかし病弱とは……その少年が連れ去ったわけではないのだな?』


「えぇもちろん違います。彼の父親が不確かな噂を真に受けて、この地に兵士を差し向けたのです。

子を思う親心から……などではなく、自分の栄華の為に。贅沢する為に!善良な民から税をむしり取り!

ろくでもないヤツですよ!」



……とまたジョージは暴走気味だ。

仲間にどぅどぅと宥められながらセルシオの言葉を伝えた。


「彼は『もし本当に逆鱗が効くとしても、遠い昔からこの地を守護して下さっている龍神様の御子様のお命を奪うなど到底出来る筈もございません』と……『どうかこの子を親元に返すお手伝いをして下さい!』と

頭を地に擦り付けんばかりに……そう叫びました」


『なんと!その少年は自分の命よりも我が子の命を!

父を奉ってくれている民といいその少年といい、まだまだ見守るべき者たちはいるものなのだな……』


「そうですね、人間も捨てたものじゃないでしょ♪」



「ねぇねぇ、龍神さま。この山にカエンボクの実ってありますか?

もしあったら僕たちが来るまでに採って来て欲しいの♪」


「「「「「ジェイド……」」」」」


『むぅ……カエンボクか?確か谷底の洞窟あたりにあったような……。

よし、採っておこう』


「わぁ!ありがとうございます♪」


「「「「「何か申し訳ありません」」」」」


『なんのなんの、お安い御用じゃ』



急ぎ街に戻りカフェ・フルベールで飲み物を注文するなり皆は脱力した。


「ジェイド……おまえ(笑) たまげるわっ!」


「えっ?どうして?」


「パルジャニエール様に用事頼むか!? 腰抜かしそうになったゎ!(笑)」


「待ってるのヒマかなぁ~と思って」


「「「あはははは!」」」



音もなく隣の席に座る二人組を確認すると、ジョージが


「龍神さまとお話出来ましたよ。出来るだけ早くお連れしたいと思いますので、セルシオ様にお伝えください」と囁いた。


「今すぐ伝えて来ますので、いましばらくこちらで待っていただけますか?」


「わかりました。よろしくお願いいたします」


「では!」

ウエイトレスが来るよりも早く立ち去った。


返事を待つ間に、ジョージにドラゴンの逆鱗を持ってないかと尋ねるジェイド。


「ん?ドラゴンでいいのか?あるぞ。あとは何が要るんだ?」


「さっきの山でニンファエア草採れたし、カエンボクの実は龍神さまが採って来てくれるでしょ♪

あと足りないのはオブシディアンだけかな?

ほかは僕持っているから」


「オブシディアンか……あれは宝石屋か?石材屋か?」


「パーティーハウス待って来て良かったじゃん♪

ダンジョンのお宝の中にあったはずだぜ。後で出してみようぜ♪」


「やったぁ!揃ったんだね?じゃあジョージさんよろしくね♪」


「うわぁ……何かめっちゃ軽~く言われたけど責任重大な気がする。。。」


「大丈夫だいじょうぶ♪ジョージさんならバッチリだよ!」


「はぁ………で、他にはどんな錬成素材が要るんだ?」


「ドラゴンの逆鱗、オブシディアン、プラチナビーの目玉、マミラリア草、ニンファエア草、カエンボクの実、一角マーラの角。この7つだよ♪

ドラゴンをやっつけられさえしたら、あとはそんなに難しい材料は無いよね、良かったね♪」


「そうなんだ……それにしてもジェイドは色々持っているなぁ」


「うん、そうだね。とにかくいろんな物を集めてるよ、僕。

ホントはね、もう少ししたらアルさんかミナさんにお願いして王都かどっかギルドのある街に連れてってもらってね、商業ギルドに登録したいなって思ってたの。

リヤカーでも曳いて、セシルさんのチャウダー君みたいな相棒連れていろんな街を旅したいなぁって思ってたの♪」


「おや、ジェイドは俺は連れてってくれないのかい?」


「えっ?ジョージさんは魔王さん倒したら元の世界に帰るか、お姫様と結婚するんじゃないの?」


「なに、その二択(笑) どこの童話の話さっ!

元の世界には帰れないらしいよ。お姫様と結婚なぁ~アレを義父(チチ)と呼ぶのは嫌だから却下!

つか、お姫様ってまだ7歳(笑)

ジェイドとお似合いじゃないか?いけいけ!もれなくあの男がついてくるぞ(笑)」


「え~~僕もヤダ!」


本人の預かり知らぬトコロで二人の男性にフラレたお姫様には、何の落ち度もない………。

そんな話をしながら時間を潰していると二人組が戻って来た。


「お待たせいたしました。明朝8時頃に西門からお入りいただきたい。その時間帯、かの御仁は朝食を摂りながら兵士たちの報告を聞いたりするのでこちらには目を向けないと思います。

セルシオ様が是非同行させて欲しいと申しております。大丈夫でしょうか?」


「やはり行くとおっしゃいましたか。体調の方は大丈夫ですか?

道程は転移で行くので一瞬ではありますが……」


「誰が止めても無理でしょう(苦笑)

原因たる自分がきちんと御前で心より詫びなければ、長く篤く龍神様を崇め奉って来た民衆にも、酷いことをしてしまった龍神様親子にも顔向け出来ないとおっしゃいました。

万一の為に医師も同行して下さるとのことです。

医師は……それはもう、スライムのようにぷるぷる震えていましたがこの数ヶ月セルシオ様と接してみて、是非お守りせねばと自分から手をあげられました」


「よし、じゃあ明朝8時に決行ね♪」


「「「「「「「お~~」」」」」」」


今度はちゃんと着席して飲み物を注文した二人に、ウエイトレスさんもにこにこ顔だ。


細かい打ち合わせをして二人と別れた。



「セルシオは人望あるんだろうな、まぁ民衆には今のところ知られていないが……。

元気になって皆の前に出ることができるようになったらきっと良い領主になれると思うよ。

問題はあのオヤジだな、抹殺するか?」

とまた不穏な発言をするジョージに皆が「まぁまぁ」と宥める。


「それは国王様に決めてもらったらいいと思うよ♪

もともとあの領主に不信感を抱いていたんなら、今回の件を詳細に伝えたら国王様がなんとかしてくれるよ。

だって龍神様の怒り具合によったらメギストス領だけの話じゃなく王都にも、この大陸全土にも被害が及んだかもしれないんだから。

だからジョージさんは感情を交えず客観的に今回の事件を国王様にお伝えしてね♪

感情が入ると私見に思われるからね、お願いねジョージさん♪」


「何かもうジェイドの方が俺よりオトナ……。

やっぱり平和ボケした国で育った俺は大人に成りきれないのかな……」


「平和な国だったの?良かったじゃない♪

ジョージさんの生まれ故郷の話も聞きたいけど今は国王様への報告書だよ。

でもこの一件が無事終わったらいろいろ聞かせてね、楽しみ♪」



翌朝、先日のメイドに連れられセルシオのもとに向かった。


「皆さま、本当にありがとうございます!

さぁ一刻も早く向かいましょう。父上の動向が何やら不穏です」


「セルシオ様、薬湯をお飲みになってからになさってくださいませ。体調が悪くなりますと龍神様にご迷惑をおかけしますよ?」と医師に言われ、慌てて飲み始める。



さぁ出発だ!……という時に、ガヤガヤガチャガチャと廊下から物音がし、領主が飛び込んで来た。



「よくよく考えてみればセルシオ、オマ……誰だ貴様ら!」


「父上、よくよく考えてみればわたくしは不要……ということですね?ではこの子も不要でしょうから、今から龍神様にお返しして来ます」


「【メイドさん達も見付からないよう、隠れてて!】じゃあジョージさん、行こう!」


「転移」


「どういうわけだ?誰も居なくなったではないか!

メイド達を探せ、口封じしなくてはならん。

セルシオは龍神山に向かったんだな、見つけ次第即刻闇に葬れ!急げ!」


((((私達が見えてない?))))



メイド達を探す為に5~6人を置き、他の兵士はそれぞれ龍神山まで馬を走らせた。



山の麓に到着した途端、セルシオは頭を抱えて蹲った。


「「「「セルシオ様!!」」」」


「すみません。具合が悪くなったわけではないんです。薄々感じてはいましたが……面と向かって言われるとやはりキツいものがありますね(苦笑)

父上にとってわたくしは存在する価値もなかったということなんですね……」


「セルシオ様、僕ね、ジョージさんに誘われて村を出る時に両親から『死んだものと思っているから二度と帰って来るな』、『気味が悪い、自分らの子だとは思えない』と言われたの。

物心ついた時から愛されてないのはわかっていたけど、どこかで淡い期待を抱いていたんだけど……おかげで踏ん切りがついたの。

だからセルシオ様も、エイッて踏ん切りつけてセルシオ様を大事に思ってくれる人たちを信じて大切にすれば良いと思います!」


「ふふっジェイド君ありがとう。

皆さん、湿っぽくしてすみません!さぁもう大丈夫です」



『ふむ……そこな少年と幼子の話が終わるのを待っておったのだが……ヒトというのは親子の情が薄いのかのぅ……』


「あっ!龍神様、ただいまです♪こちらが御子様を大事に保護してくれてたセルシオ様です。ところで今『幼子』って聞こえましたけど、それって誰のことですか?

僕、9歳だから幼子じゃないですよね!」


「ジェイド君……。

龍神様、お初に御目にかかります。メギストス領主が次男、セルシオと申します。

この度は……誠に、誠に!御詫びの言葉もございません。

どうか龍神様のお怒りはこの身1つでは足りないとは思いますが、何卒……。

この地の民草はあなた様を深く信仰し崇めております、あなた様を心の支えとし、日々を過ごしております。

この度の暴挙は我がマルセーナ家のみが責めを負うべきものでございます。どうかどうか……」


『少年よ、そなたの言葉もこの地に住まう民の篤心さもこの者たちから聞いた。

既に雨を降らせて大地は潤って来ておる。こちらこそ怒りに任せて大切な者たちを失うところであった。すまぬことをした』


「も……もったいない御言葉、深く感謝いたします」


『ところでそこな幼子よ、我には人の子の9歳がとれほどのものか解らんでの、失礼であったなら謝る』


「うゎ~ん!また幼子って言った!龍神様のばかぁ~~!」


「おまっジェイド!すみません龍神様、こいついつも実際の歳より幼く見られて……ちょっとトラウマになっているだけで、他意はありません。

ほれリーダー!はやく籠を開けましょ!こっち持って来て」



ミカに抱きしめられながら、えぐえぐ泣いているジェイドに龍神はおろおろしてしまっている。


「よっしゃ!アンリ頼んだぞ、此処に置くからなっ」


「任せなさ~い♪ほらすぐに出してやるからな【アンロック】」


解錠されるなり、パルジャニエールの方に飛んで行く仔龍。


『おぉ!怖かったであろう、よくぞ無事で!』


『父上さま、あのセルシオ君がずっと色々話しかけて下さってたので怖いことも寂しいこともございませんでした。とても優しくしていただきました』


『本当に感謝する。さてこれから早速命名の儀を執り行いたいが、何やらいろんな事が有りすぎて名を考えるのを失念しておったな。はて、何と名付けようか……』


ジョージが首を傾けながら、

「プルウィルーサ・パルジャニエール……と来れば、ユピテル……いや、ジュピターなんてのは如何です?」


「うゎぁ!ジュピターって恵みの雨を降らせ、生き物を育む風を吹かせるって神話の中に出てくるよね、カッコいい名前!」


『なるほど、ぴったりの名であるな。

【古より連綿と続く我が一族の末席に名を連ねる新たなる命よ。汝をジュピターと名付ける。天の理、地の理、己が定めを受け止めよ】』


ガジュマーの木の枝をパルジャニエールが捧げると、1mにも満たなかったその身体が眩しく光り、大きくなった。


『無事、命名の儀も終えた。力が漲って来たであろう。これでそなたにも嵐龍としての能力が備わった』


「良かったぁ♪さぁ次はセルシオ君の番だね。ジョージさん、パーティーハウス出すからサクッと作っちゃお♪」


「……おぅ、わかった」


おッかなびっくり錬成すると、早速ジェイドが鑑定。


(【この薬は何に効くの?】)


=鑑定=

高品質の魔循環不形成の治療薬



「やったぁ!さすがはジョージさん、高品質だって♪

セルシオ君、早く飲んで飲んで♪」


「わたくし……ですか?一体何の薬なのでしょう?」


「これでセルシオ君の病気が治るんだよ、早く飲んで~♪」


「なんと!ジョージ様がお作りになった……錬金術師さまなのですか?

セルシオ様、早くお飲みになって下さい」

医師からも勧められおずおずと飲み干すセルシオには、すぐにその効果がわかった。


「今までのような身体の怠さもない、魔力が隅々まで巡っているのが判る。何という奇跡!」


「良かったね、これからは領民のみんなにも会いに行けるね♪」



皆でお祝いパーティーのような事をしているところに、大勢の兵士がやって来た。


兵士たちも疲れているが、馬たちは疲労困憊、今にも倒れそうだ。


「あ~もう!何て酷いことするの!ほら、お水だよ早くお飲み」

と兵士たちの間をすり抜けて馬たちに水を与えるジェイド。


「あっすまない、ありがとう」とお礼を言ってくれる兵士たちもいた。



「やっと見つけたぞ、セルシオ!別にお前自身を国王に会わせずとも身代わりを立てれば良いこと、お前がいつ具合が悪くなるかと気を揉む必要もなくなったというものだ。

安心して死ね!行け、者共!」


しかし兵士たちは躊躇する。

普段からセルシオより優しい対応をされていることと、今は『殺れ』と言っていてもこの領主の事だ、いつ気が変わってセルシオ殺害の罪で裁かれるかもしれない……と。


「何をしている!言う事が聞けないならお前らの身内も全て根絶やしにしてくれるわ!」






その瞬間、

ゴロゴロでもない、バリバリでもない、もっと乾いたような……




パリパリパリ!というような音と、

金属が擦れ合う……が一番しっくりくるような

ヒュィンヒュィンヒュィン!というような音と、

空気を揺るがすような激しい振動と共に、閃光。

そして、ドゴォォン!





辺りが静寂に包まれた。





そこには直径10m超のクレーターと、その底部には黒く焼け焦げたナニカがあった。







「まるで、『ラムウ』だ!」と興奮するジョージの声だけが辺りに響いた。


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