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パルジャニエール

「この領地でのアレクセイからの指示は『本当に後継者は存在するのか』調査することだったんだ」


「ん?じゃあ国王はセルシオの事を知らねぇのか?」


「あぁ、あの領主はアレクセイには長男のバジルクのことしか知らせていない。

そして長男が事故死した件を報告にきたのだが……

後継者はどうするのだと聞かれて『まだまだ私も若いですので大丈夫ですよ』と答えたらしい」


「……それってもしかして……」


「あぁ。アレクセイは普段からあの男の噂を聞いていてな……。

悪政をしき領民に無理無体を強いていると、そして長男もまた同じような人物であると。

しかし領民が一揆を興すようなこともなかったので、どうしたものか……と悩んでいたそうだ。

そこにもってきて長男の事故死の報告。

セルシオの言ったことは本当だ、嬉々として馬屋や供の者を罰したと報告したんだと(笑)」


「うへぇ………」


「で、後継者の事を尋ねたら、ぬけぬけと大丈夫だと言ったので『後継者がいないなら領地を国に返還してもらい将来有望な若者に治めさせ経験を積ませる』と伝えたら、ひどく狼狽したあと思いついたように『実は次男がいますが内気過ぎて……どうせ長男が後を継ぐのでと今まで内密にしておりました』と言ったんだと。

その後、3週間程王都で用事を済ませてからメギストス領に帰る予定にしていたのを、急用が出来たと慌てて帰ったので、アレクセイも不審に思ったらしい。

多分、自分が王都にいる間に部下に命じてセルシオを殺害しようとしていたんだが、領地返還を言われて慌てて命令を取り消す為に帰ったんだろう」


「そうか……自分は死ぬまで領主でいられると思っていたから、この際セルシオを亡き者にしてしまおうと思ったんだな。

しかし領地の件を言われて考えなおしたわけだ。

セルシオさえ生きていたらずっと贅沢三昧出来るからな」


「ともかく次男は実在したわけだが他の問題が浮上したな……」


「しかし、今のままではセルシオも危ういな。父親の脅威はなんとかなったが如何せん病弱だ。今日のあの話を聞いていたら、きちんとあの父親を退けた上で領地を継げれば立派な領主になると思うんだけどね」


「ねぇ、ジョージさんって上級錬金術師?

都市伝説もあながち間違ってはいないんだけどね♪」


「ん?ジェイド、治療法がわかるのか?」


「えっとね、彼の病は魔循環不形成って名前だよ。

上級錬金術師さんが錬成したらお薬作れるって♪」


「おやそれドコ情報?」


「ふふっ♪僕情報!たまに気になった事を調べたいなって思ったら、頭の中で誰かがしゃべるの♪」


((((鑑定か?鑑定なのか?)))))



「とにかく……治療法はまた後の事にして山に向かおう」


「「「「「お~~!」」」」」



山の中腹まで転移し、そこから気配を探りながら頂上に向かっていく。

山の主である龍の気が立っているからか他の生き物は息を潜めているが、いつ襲ってくるかわからないから。


そんな中ジェイドひとり「わぁっ♪」とか「ぉ~~~」とか言いながら、なにやら採取しまくっている。


「大物なのか子供なのかわからんな……」


緊迫感ギンギンだった雰囲気が和らぎ、こういうところがジェイドのイイトコなんだよな~とジョージは微笑みを浮かべた。


しばらく歩いていたら、ジェイドが急に「あ~~~!ニンファエア草があった~~!」と叫びながら山肌を少しよじ登り、その場に生えていたニンファエア草を大量に採取した。


やったぁ~~と喜びのあまり両手で掲げ、立ち上がり跳び跳ねていたら、足下の小石を踏んでバランスを崩しころころと落ちて来た。


それほどの高さでもなく、転がっている様がなにやら可愛くて、皆は声をあげて笑っていたが、元の道まで落ちてきても勢いが失せずに反対側の崖の方にフッと消えた。


「「「「「ジェイド~!」」」」」


慌てて皆が下を覗き込むと、巨大な龍とジェイドが見合っていた。



ころころころころドシン!


『ぬ?』


「あ~~びっくりしたぁ!両手離したら落ちちゃった。……あれ?」


じっと見つめあう一人と一匹。


「あっ!龍神さま?助けてくれてありがとうございます♪」


『助けた?……知らぬな。何のことだ』


「龍神さまがちょうど昇って来てくれてなかったら、僕この崖の下まで落ちて死んじゃうところだったの、ありがとう!」


「「「「ジェイド!大丈夫か?」」」」

急ぎ滑り降りて来た皆に、にっこり笑って

「うん、大丈夫♪龍神さまが助けてくれたの♪」



「おぉ!龍神様、旅の冒険者のジョージと申します。この度は仲間を救っていただき感謝いたします。ありがとうございました」


「「「「ありがとうございました」」」」



『……別に助けようと思って助けたわけではない。たまたま上昇して来た我のカラダに触れて止まっただけのこと。

人の子よ、我は今気が立っておる故、疾く下山せよ』



「……それは御子様の件で……?」



『なに!?うぬらもあやつらの仲間か!赦さぬぞ、あの子の仇、必ずや伐つ!』


「御子様は元気に生きておられますよ、落ち着いて話をお聞きくださいませ!」


『そのような話、信じられるものか!どこにもあの子の気配が無い!

あの日、あの子の命名の儀に使うガジュマーの木の枝を取りに行っている間に居なくなった!気配を探っても大勢の人族の気配しかせん!きっとあやつらが我が子を殺めたのじゃ!』


「いえ!生きておられます。逆鱗を求めた輩に連れ去られましたが、ある人物に手厚く保護されていますので、どうか私達の話を聞いてくださいませ!」


『どうせ不老長寿だとかの戯言を信じた輩の仕業であろう!

この辺り一帯、草木も虫も生きてゆけぬよう、滅ぼし尽くしてやるわ!!』


空には暗雲がたちこめてきた。



「もぉ~~!【龍神様、大人しく僕たちの話を聞いて!暴れるの禁止!怒鳴るの禁止!】わかった?」



途端に空から雲は無くなり、龍神はというと何やらもがもがふがふがしている。

まだ怒っているのだろうか、鼻息だけがフーフーと辺りの草を靡かせている。



(これは魔法というより言霊か?)

ジョージは何故ジェイドが攻撃系の魔法が不得意なのか、原因らしきものがわかった気がした。



「(まぁまずは)龍神様、我々は御子様を保護されている人から、一刻も早くあなた様のもとに返して差し上げたいので協力して欲しい……と言われて赴きました。

この事は理解いただけましたか?」


………コクン………


「気配を感じられない……というのは、この山から連れ去る時にあなた様が取り返しにこないように魔方陣付きの籠に入れられたからでした」


………ゴゴゴッ……コクン………


「必ずあなた様のもとに御子様を……という我々や依頼主の事を信じてくれますか?」


………コクコク!………



「籠を開けるのは、この山の麓に着いてからあなた様の立ち会いのもとで行いますので、我々の魔力を感じたら麓まで来て下さいね」


………コクコク………


「今、雨が降らず、たくさんの人々、動物植物が命の危機にさらされています。

どうか再び雨を降らせて下さいませんか?」


……………………………………………………


「どう為されましたか?雨を降らせる気は無いと?理由を教えて下さい」


『たかだか100にも充たぬ程の寿命の生物のくせに我が子に害をなしおってからに。人などどいつもこいつも同じじゃ!そのような者共の為に雨など降らせとうないな』


「………………………………」


『……なんじゃ!ならば息子は返さん……とでもぬかすつもりか?

人というのはいつも自分勝手で愚かな生き物よ』


「……いえ、必ず連れて参ります。

ところであなた様のお名前は、プルウィルーサ様……ですか?」


『……プルウィルーサは、我が父の名じゃ。少し前……3500年程前に身罷ったがの。我の名はパルジャニエールである。

どこでその名を聞いた?』


「この地に暮らす人々からですよ。ということは少なくとも3500年以上も前からこの地に暮らす人々は、プルウィルーサ様を崇め奉っています。

今パルジャニエール様は、3500年を『少し前』とおっしゃいましたよね。

先ほどあなたが言ったように、人間は戦乱も病気も怪我も無くともたった80年程しか生きられない。

そんな儚い命の者共が!3500年もの間!伝え記す文字も持たない頃から……親が子に孫にと伝え、感謝を込めて奉って来た『プルウィルーサ』の名の!一文字でも間違っていたか!答えよ!」


『いや……間違ってはおらぬ。どのように感謝の意を表すればよいか我には思い付かん』


「彼等は何も求めていません。ひたすらプルウィルーサ様に感謝し、その年にとれた収穫物を見てもらいたくて、ここの祠にも奉っている……ただそれだけです」






『あいわかった』




優しい雨が降りだした。


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