ジェイドのファイヤー
ジェイドが育った村は農村ではあるが、近くに発生したダンジョンが有名になり、宿屋や雑貨屋が建ち始めて少しずつ発展しだしてきた。
冒険者たちもたくさん訪れ、村の子供たちはいろんな冒険譚をせがみ、木の枝を振り回し、冒険者ごっこに明け暮れた。
いつものように両親の耕す畑の手伝いを終えたジェイドは、村の出入口の門からヒョコっと顔を出して辺りを見回す。
「あったあった! これはスライムの核だ!たくさん落ちてるよ、ラッキー。
薬草見っけ♪【お片付け】」
門から←ダンジョン・町→へと続く道の両脇にある草原で見つけた薬草やハーブ、冒険者たちが捨てて行った弱小モンスターの核や死骸を集めて行く。
草原に埋没した、キラキラ光る玉。
「うゎ~綺麗だな!【これは何かな?】」
=鑑定=
水晶の欠片
「水晶?ふ~ん…… お日さまにあたってキラキラ綺麗だなぁ」
ジェイドは毎日毎日村の周辺で木の枝やら薬草等をお片付け(一般的には、アイテム収納という)をしていた。
あまり力も強くなく争い事も嫌いなせいで、村の子供たちがよくする冒険者ごっこなる撃ち合いには参加しなかったが、普通の遊び……パズルや縄跳びなんかはむしろ得意だった。
ジェイド8才の頃、村長さんと元冒険者のおじいさんに村の子供たちが集められた。
「さて、今日はお主らがどの魔法属性に秀でているか見てもらうことになったんじゃ。
さて、火の魔法からやってみてくれるかの?みんな」
「「「「は~い! ファイヤー!」」」」
みんなの人差し指の先に出る、拳大の火の玉………の中でただひとり、
チロチロと、火種のような炎。
「ジェ……ジェイド。もう少し魔力を込めてみよ」
真っ赤な顔で、うんうんと力を込めるも一向に大きくならず、ついには「ぷはー」と息切れを起こした。
「ま……まぁジェイドや、火の魔法は相性が悪かったのやもしれんからの。
ほれ、次は水の魔法をやってみよ、みんな」
「「「「は~い! ウォーター!」」」」
ザバーと大量の水を出すみんなの横で、チョロチョロ~っと流れるジェイドの水魔法。
「あれ?」
「………まぁ、今日はこれくらいにしとこうかの。
急に魔法をたくさん使うと疲れてしまうからの。今日は解散じゃ。」
特に気にする事もなく、自宅に向かうジェイドの後ろ姿を見ながら、深いため息を吐く村長であった。