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セルシオ・メギストス・フォン・マルセーナ

ここではほとんどがセルシオ君が話します。

身体弱いのに沢山しゃべらせてごめんね♪

お疲れ様さまでした。

「これは………まさか!」


「はい、山の頂上におられる豊穣の神さまの御子様で間違いないかと……

申し遅れました、わたくしはこのメギストス・マルセーナ家の次男、セルシオと申します」


その少年は傲岸不遜な父親の遺伝子を1ミリも受け継がなかったような、色白で儚げな面差しをしている。

もっと言えば、病弱……という雰囲気だ。


「こちらこそご挨拶が遅れて申し訳ありません。私は、アシナ=ジョージと申します。

ここに控えておりますのは、私の仲間『チーム・アシナガ』のメンバーでございます。よろしくお願いいたします。

ところで何故こちらに龍神の御子様が?」


「長い話になると思いますがお聞きください。

街の者からお聞きになられたかもしれませんが、わたくしには兄がおりました。

兄は父上をそのまま若くしたような人でした。

わたくしは幼少の頃より身体が弱く、いつもベッドの中で過ごしており、父上からは疎まれておりまして、部屋は使用人たちと同じところに置かれてまして(笑)

有り体に申せば、使用人たちが色んな面で支えてくれたお蔭で今まで生きて来れたのでは……とも思っております。

後継者でもあり自身によく似た兄を父上はとても可愛がり、わたくしのような病弱な人間は嫌悪していたように思います。

というより、端からわたくしという存在を抹消していたようにも感じました。

兄からは……特別可愛がられたということはありませんが、普通に話しかけていただき、わたくしに対しては巷で囁かれているような乱暴な行為も一切ございませんでした。

……が、父上にはそれが気に障るようで兄が話しかけて下さっている時にはひどく睨み付けられ、いつか毒を盛られるのではないか魔物の森に捨てられるのではないか……と

怯える日々を過ごしていたものです」


そこまで一気に話した事がなかったせいか疲れてしまったのか水差しから水を注ぎ、飲み干すと一息ついた。


「それが一変したのは、兄の事故死でした。

怒りにまかせ何の落ち度もない馬屋のご主人や供の者たちを処刑し、父上の前で些細な粗相をした使用人たちに当たり散らし、誰もが恐怖し息を潜めて暮らしていたのですが……」


「4ヶ月程前のある日、当時使用人部屋の真ん中辺りに位置するわたくしの部屋の扉を乱暴に開け、満面の笑みを浮かべながら、『セルシオやどうしてこんな処で過ごしているんだい?』……と言われた時には、『あぁ……遂にこの時が来た。魔物の森だろうか毒殺だろうか……』と、死を覚悟いたしました」


「「……セルシオさん……」」


「然り気無く、わたくしの盾になるように立ってくれたこのメイド達など目に入らぬかのように押し退け、わたくしの手を握りしめ『離れの陽当たりの良い部屋を用意したから、そちらで養生しなさい。こんな処に居たら治るものも治らないからね』と、猫なで声で笑いかける父上の顔は、生まれてから何度も目にした怒り顔や侮蔑の顔より、遥かに恐ろしかった……」


「「「「……………」」」」


「その日からわたくしはこの離れに居を移し何もかもが一変しました。

定期的に医師が薬を調合してくれ、滋養のある食べ物も与えてもらい、少しずつ体調も良くなってきてはいたのですが……

ある日少し熱が上がり怠くて寝込んでしまったら、次に来たのは別の医師でした。

その医師に、前の先生は?と尋ねると、真っ青になりブルブル震えだしました。

本当の事を教えて!と強く尋ねると、わたくしの具合が悪くなったのはその医師のせいだと言われて投獄されたとの事。

まさか?と思い、食事を残した時の事を聞いてみると、やはり同じように投獄されてしまっていました。

わたくしは混乱の極みに陥りました。昨日までは明日の『生』すら約束されていなかった……なのに。

本当にこの男は、あの父上なのか?……と」


「「「……マジか……」」」


「それからは、具合の悪い時も元気なふりをし、食事を残してしまった時にはこの者たちには申し訳ないけど全て食べてもらうようにし、極力父上にバレないように注意しております。

しかしなにぶんこの敷地内でしか過ごせないわたくしです、あまりにも情報を得る手段が無い……

そこでこの者たちの力を借り、信頼のおける目となり耳となる者たちを雇いました」


「大丈夫ですか?少し休憩されては?」というと、穏やかな笑みを浮かべ礼をした。


「申し訳ありません(笑) 確かにこんなにたくさんしゃべって疲れてしまいました♪メアリーさん、お茶とクッキーか何かお願い出来ますか?」


「畏まりました」


メイドがアフタヌーン・ティーの準備をしている間、皆は王都の話やギルド内の面白話などを披露していたが、ジェイドはセルシオをじっと見つめていた。



(【セルシオ君の病気を治す方法あるのかな?】)


=鑑定=

セルシオ・メギストス・フォン・マルセーナ

*中程度の魔循環不形成を発症

*投薬により完治(上級錬金術使用)

*錬成素材

・ドラゴンの逆鱗

・オブシディアン

・プラチナビーの目玉

・マミラリア草

・ニンファエア草

・カエンボクの実

・一角マーラの角


(………何個か僕、持ってるな………)



「おいおいジェイド!なにセルシオ君に熱い視線を送ってるのぉ~♪」


「うん、美少年だね!羨ましい♪」


「お前が言うと嫌味に聞こえる……」


和やかに雑談を交わしていたが、キリッと真剣な表情をしたセルシオに、皆は姿勢を正した。


「父上の態度が豹変したのは、国王様に兄の死を報告に向かった後からでした。

もしかすると、わたくしを後継者として宣言したのかもしれません。

父上は叔父上たちとは不仲なので、叔父上のお身内を後継者にするよりわたくしにしておいた方が良い……と考えたのでしょうか?

まぁ、そんな感じで今は少しでも長生きさせようとしているのかもしれませんね。

その後、邸内に見知らぬ人の出入りが増えたりと、何やらざわざわした感じでした。

あれは父上が多数の兵士をどこかに向かわせる4~5日前の事、法衣のようなモノを着た怪しげな男が訪ねて来まして……

父上がその男に大金を支払っているのを見たので、慌てて尾行してもらいましたら……上機嫌で飲み歩き、街から出たところで……

父上の手の者に拉致され魔物の森で暗殺されたそうです」


「「「………」」」


「酒場でその男は大声で『そこらの兵士で龍退治なんて出来るかよ!』と、嘲り笑っていたそうで」


「龍退治?」


「はい。その時は誰も『龍退治』の意味も分からず、単なる酔っ払いの戯言……ぐらいに思っていたのですが……」


「それからすぐに邸内が慌ただしくなり武装した兵士たちが街を出発しました。

それから2日程して、領内全てに轟き渡るような轟音と激しい稲光が絶え間無く続きました。

何が起こったのかと混乱していたのですが、翌日兵士たちが帰還しました。皆、一様に顔面蒼白でガチガチと震えていました」


「尾行してくれた者が俊足を使い帰還してすぐに伝えてくれました。

山頂にあった龍の巣を丸一日見張り、孵化したのを見届けた親龍がどこかに飛び立った隙を狙い、この魔方陣付きの籠にこの子を押し込め下山したそうです。

親龍の咆哮が轟いたのは、それから1時間半ほどした頃。当たり前でしょう、帰巣したら子供がいなくなっていたのですから……

大変なことになると、彼は必死で走り帰り、馬車での帰還の兵士たちより6時間近く早く、その内容をわたくしに伝えてくれました」


「ちょうど医師も来ている時でしたので対策を皆で相談しました。

医師が言うには、都市伝説的な確証の無い……噂話程度らしいのですが『魔力系の病には龍の逆鱗が効く』と。

わたくしは眩暈がしました。

もし本当に逆鱗が効くとしても、遠い昔からこの地を守護して下さっている龍神様の御子様のお命を奪うなど到底出来る筈もございません。

医師の協力を得て、今すぐ逆鱗を投与せよという父上に『生後半年を過ぎないと、逆鱗の効果は顕れない』と信じこませ今に至ります。

時間稼ぎをしている間に何とか良い方法は無いものか……と必死で模索していたところ、領内の村を救済して下さっている6人組の冒険者様がこの街に入ったと……

どうか!どうかこの子を親元に返すお手伝いをして下さい!」



「わかりました。我々でお役に立てるかどうかは分かりませんが、一度その龍神様にお会いして来ます。

どういう結末になるか見えないので、もう少しこの子を預かっておいて下さい。

話が纏まったらまた伺いますが、繋ぎはここから5~6分のところにあるカフェ・フルベールでいいですか?」


というと、隠密らしき二人を紹介してくれた。





では……と、門を出た後「なるほどな……」とジョージは呟いた。


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