さぁ出発だ!……と準備
奇声をあげ狂喜乱舞する国王を残し、執務室を後にした。
「……なんか国王様、引きますね……」
「あぁアレな、昔アイツがまだ子供の頃悪戯してて蓋に付いてる宝石がはずれてしまったらしい。
で、強力な糊でくっつけてずっと今までバレずにいたんだけど、先月アイツの息子が触っている時にポロっと取れてしまって、息子ギャン泣き」
「うわぁ……」
「自分が子供の頃に壊したんだから、元々壊れてたんだよ~だから大丈夫だよ~って息子を宥めたんだけど、逆に『お優しい父上様、国宝を壊してしまった私をそんな風に庇って下さるなんて!万死に値します、どうか私を牢屋に入れて下さい』と言って聞かないらしい」
「そうかぁ~普段の国王様を見てたら本当に『庇って』いるように見えるよね」
「あぁそうだな(笑)
修復師にやらせてみたらしいが何故か直らず困り果てていたからサ、試しにジェイドに預かってもらった」
「怖いよジョージさん!もしもっと壊れちゃってたらどうするつもりだったの?」
「あははっ!アルの親父の形見のことがあったから絶対大丈夫だと思ってたよ」
「僕、心臓止まりそう!」
「まぁまぁ。それと他のみんなも買い出しに出てくれてるけど、俺たちも見に行かないか?安くて栄養のあるものいっぱい買っとこう!」
「あっ!ジョージさん、店で古くなって売れそうもないような商品を出来るだけ安く買ってね♪悪どくない程度に」
「そうか、そうだな!よっしゃ任せろ」
ひやかしたり真剣に交渉したりしながら露店を巡っていると、ある店でジョージが止まった。
『イーネ5kg・60銅貨』
「ねぇコレ、どうやって食べるの?」
「あの……石で砕いて鶏に与えると美味しい卵を産みます。
牛に与える時はそのままでも大丈夫です」
店先には誰も居ず、やっと客が来た!と喜び顔を上げたら畜産家ではなく冒険者風の二人連れだったので、がっかりした少年少女たち。
ついに最年少の女の子が泣き出してしまった。
「え~~どうしたの?僕たち何かした?」
「いえ、すみません。実はまだ一つも売れてなくて……というか、誰も見向きもしてくれなかったところに声をかけられ喜んだんですが……農家さんじゃなかったので、がっくりきたのだと……申し訳ありません申し訳ありません!」
「えぇ~~何でそんなに必死に謝ってるの?」
「まぁ冒険者の中には乱暴なヤツもいるからね。
とりあえず、ここにあるイーネは全て買うよ。あとまだ在庫はあるの?」
「え……?いいんですか?ありがとうございますありがとうございます!
ここにあるのは30袋なのでえ~とえ~と、18銀貨になりますけど……」
「わかった!コレってよそのお店でもこんな値段なの?」
「いえ、普通の店ではこの倍ぐらいの値段で売っていますけど、もうお金も無いしこの子らも何も食べてなくて……
とにかく少しでも売らなくちゃってあの値段に……」
「そうかぁ~じゃあ全部売れた……ということで、商談しようか。どこかのお店でご飯食べながら、ネ♪」
「ありがたいお話なんですけど、家でも待っている子達がいますので一度家に食べ物を持って帰ってやりたいのでまた後でボクだけ来てもいいですか?」
「じゃあ、ここの屋台で食べ物買ってから君の家にお邪魔してもいいかい?俺たちもちょっとお腹空いたよな、ジェイド」
「うん、そうしようそうしよう!あと何人いるの?」
「家では5人待っていますけど……」
「わかった!んじゃ僕、買ってくるネ♪」
「おじさ~ん、このお鍋にスープ20人前入れて下さ~い!」
「おぅボウズ、ありがとな!4銀貨だ」
「お兄さん、この串焼きとあっちの、11本ずつ下さい!」
「サンキュー、2銀貨と20銅貨とコレおまけな」
「わぁ~ありがとう!」
と、色々買い込んできたジェイドを見て、少年は顔を青くした。
「じゃあ行こうか。ジョージさん、お金払ってくれた?
ちょっと安くしすぎだと思うんだよね」
「そうだな、そういうと思ったよ(笑)相場からちょっとおまけしてもらって、1袋1銀貨で30銀貨でどう?」
「ほ……ホントにいいんですか?コレでこの子達の食べ物だけじゃなく薬草も買える!」
「くくくっ、ジェイドが絡むと『薬草事件』が起きるな、あはは!」
「もう!ジョージさんったら!僕の持っている薬草で大丈夫ならすぐに渡すよ。早く家に案内して!」
彼等の家に着くと、3人の幼い子供が顔を出した。
「こんにちは、僕はジェイド。お兄ちゃん達と話があって来たんだ。先にご飯にするから、みんなに手を洗って来てって伝えてね♪」
「ご飯?やったぁ~~!みんなお手々洗うよ♪」
みんなが手洗いしている間に、2番目に年長の子に食事の盛り付けを頼む。
長く満足な食事をしていないなら一度に全てを出さないことを徹底して、病人のところに向かった。
長兄がいうには、外周にある林で皆で木の実採りをしていたところに毒グモが出て、子供たちを庇った夫婦が咬まれたとの事。
「この二人の本当の子供は、2番目と5番目の子なんです。ボクたちの両親は、行商に出ている時に魔物に襲われて……あの子とあの子の親もそれぞれ病気や事故で……。孤児になったボクたちを育ててくれて、なのに……!」
紫色に腫れ上がった脚と高熱で意識が朦朧としていて、誰が見てももう何日ももたない……という感じだ。
「ジェイド、毒消し草と上薬草出して。もしかしたらペニシリ草も持ってる?」
「ペ……ペニシリ草なんて貴重な薬草、持ってる人なんて……」
「うん、持ってるよ!何枚?」
「え~~~?」
「よっしゃ!2枚で大丈夫だろ。サンキュー!【錬成】」
「うわぁ!スゴいねジョージさん!もしかして錬金術師さんなの?」
「アホぅ、ただの冒険者だよ!ほれ、お前、名前何だったっけ?早く飲ませてあげてくれ」
「キールです。ありがとうございます!すぐに飲ませて来ますので!」
薬を飲ませると、紫色に腫れ上がった脚も元に戻り、穏やかな寝息になった。
「んじゃとりあえずはキールも食事にしよう。その後商談な」
「はい、ありがとうございます!勉強させていただきます!」
皆のところに着くと、みんな笑顔で楽しそうに食事を摂っていた。
「あっ!キール兄ちゃん、このパンとっても美味しいの!こんな美味しいパンはじめて!」
「ボクもっと食べれるって思うんだけどジュリお姉ちゃんがダメっていうの……」
と、わいわい楽しげだ。
「みんな!そこにある食べ物は全部このジョージさんとジェイドさんが君たちにって買ってくれたんだよ。ちゃんとお礼を言おうね♪」
みんなから感謝の言葉をもらいながら食事を終え、倉庫に置いてある大量のイーネに喜ぶジョージ。
「なぁなぁ、あの二人もうすぐ目を覚ますだろ?俺が病人食を作ってやるよ!
ところで、普段はどうやって生計をたててるの?」
「はい、普段はあの場所で二人が屋台をやっています。
安く仕入れた食材で作るので、日によって違うものになりますが、商品が固定されてる店の間にあるので、飽きることなくけっこう売れています」
「なるほどな~おいジェイド、台所に行くぞ。ちょっと借りるな」
「イーネはいいっね~~♪」とか意味不明な鼻唄を歌いながら料理するジョージ。
味見だ!と小皿に入れられたソレを食べると、意外やとっても優しい味がして思わず笑みがこぼれた。
「じゃじゃ~ん、イッツ雑炊♪」
「イッツゾースイ?」
「ノンノン!雑炊。俺の故郷で、病気なんかで長く食事を摂れなかったりした人に出す、病人食だよ。
ほら、長い間絶食してたりした時にいきなり普通の串焼きや脂っこいものを食べると、お腹がびっくりして、ひどい時には死んじゃったりするから、まずはお腹に優しい、スープや雑炊がいいのさ♪
これ、イーネで作ってるんだぜ。
つか、これが俺の故郷の国では主食。こちらでいうパンなんだけど、色々バリエーションがあって、日替り屋台ならうまくいくと思うんだけど♪」
気がついた夫婦に食べてもらい、在庫のイーネを全て買い取り、イーネで作る料理のレシピを伝えて家を出た。
「ねぇジョージさん、お腹に優しい食事……きっとこれからの旅には大事だよね。ちょっと金物屋さんに行って大鍋たくさん買って、明日の出発までにいっぱいスープやゾースイ作っとこうよ!」
「そうだな。悠長にその場で作ってられないかもしれないしな。買いにいくか。
あの家族の屋台、うまくいくかな?もし万人に受け入れられず売れなかったとしても、あの家族には価値がわかったんだから飢えることだけは無いんじゃない?」
と、大鍋などの調理器具を買った後パーティーハウスに戻った。
ミカさんが様々なスープを、ジョージが雑炊を作り……
あとは旅の間の食事用にと思いつく限りの料理を作り準備万端。
翌日ギルドに頼んであった素材を受け取り、帰り道でも屋台の商品を買いながら帰宅した。
「さぁ出発しようか」の言葉に、ジェイドが尋ねる。
「ねぇ、このパーティーハウスは持ってっちゃダメなの?テント張ったりなおしたり時間かかるでしょう?
これなら馬小屋もちゃんと付いてるし、馬さんたちも安心して寝れるよ!」
「「「「「可能なら……」」」」」
「は~い♪んじゃ【お片付け】ネ♪」
ひゅん!と消えたパーティーハウス。
「くくくっ、最高だジェイド。
最初に向かうのは、メギストス領だ。行くぞ!」
「「「「「お~~!」」」」」




