テーマ8 邂逅?
決闘?が終わって、ギルドに戻るとセツナとナリア、そしてダガーさんが待っていた。
何て言われるかな?
「……おつかれ」
「ラックおつかれー!」
「おう。久しぶりだな」
やっぱり、内容については語られなかった。
まぉ、それはそうだろうな。
僕、何もしてないし。
というより、歴戦の冒険者であり決闘マニアであるバルトさんが、拳くらい大きさの石に躓いて気絶するなんて、あそこにいた誰が予想するだろうか……。
「うん……まぁ、ね。ダガーさん。お久しぶりです」
「ここの生活には……もう慣れてるな」
「はい。慣れてないのは、取締隊と癖の強い代償患者さんくらいですねぇ」
レイス隊。通称、取締隊。
テーマダンジョンでの犯罪や違法行為を取り締まる部隊。
顔や胴体はなく、黒いローブから手だけ出し、その手には鎌を持っている。
住民や客が違法行為をした際、その内容に見合った代償を本人から貰う。
例えば、暗殺者が誰かを暗殺しようとすれば、その暗殺者は行動開始前に絶対麻痺という状態になり、代償として全ての手足に髪の毛、歯がなくなる。
代償を受けた者は、代償患者と呼ばれ、専門の病院に運び込まれた後、世話をされる。
僕もその人たちの世話をする仕事をしたことがあるが、大変だった。
ちなみに、ここができてから3年ほどだが、重罰の代償患者で退院した者はいないらしい。
「まぁ、あれはな」
ダガーさんも遠い目をしている。
そこでナリアも会話に入ってきた。
「昨日も誘拐未遂があったんだよね。四本の手足を代償としてもっていかれてたよ」
そういえば昨日の朝、ナリアは遅れていた。
騒ぎがあったって言ってたのはそれだったのか。
「まぁここではやる方が悪い。それよりもラック」
僕の肩に腕を回し、顔を近づけてくるダガーさん。
「どっちが本命なんだ? 両方か? 若いっていいな〜」
ブフッ!
二人を見ながらそんなことを言うダガーさん。
「それにしても……」と言ったあと、僕から離れたダガーさんは「まぁ、頑張れよ」と言い行ってしまった。
「……ラック。孤児院に行こう」
ダガーさんが去って行ったあと、黙って話しを聞いていたセツナがそういった。
それはいいけど、昼ごはんはどうするのだろうか?
それを聞いたら、今なら孤児院でお昼を食べれるらしい。
森エリアでお土産を買ったあと僕らは孤児院に移動した。
○○○
「あ! セツナとナリアの姉ちゃんだ!」
「本当だー!」「ナリアお姉ちゃん、遊んでー」
孤児院に移動すると、セツナとナリアのところに小さい子供たちが走りながら寄ってきた。
人族の子もいれば、獣人族や魔族の子もいる。
エルフやドワーフ、海人族、竜人?の子供もいる。
まぁ、簡単に言うと全部の種族だ。
「あのぱっとしなさそうなお兄ちゃんだれー? お姉ちゃんたちの恋人さん?」
小さなエルフの女の子が二人にそう言っていた。
ぱっとしなさそうっていうところは余計だよ。
「……冒険仲間」
「師匠に会わせたくて連れてきたんだよ」
二人とも、迷わず即答だったなぁ。
「そうなんだ! じゃあ先生呼んでくるね!」
子供たちは「先生ー!」という声を上げながら、一斉に院の中に入っていった。
なんだかあれだけ子供がいるとすごいなぁ。
そんなことを思っていると、後ろから爽やかな声が聞こえた。
「あれ? セツナとナリアじゃないか?」
その言葉に僕ら三人は振り向く。
爽やかな顔の青年がいた。背は僕よりも高い。ナリアよりも数センチ高いくらいだ。
この人が二人の師匠か?
「二人とも、大きくなったねぇ」
なでなで……もみもみ……
二人の師匠さんは、片手でセツナの頭を撫で、片手でナリアの胸を揉んでいた。
「聖炎!」
手から青い炎を出し師匠さんを攻撃するナリア。
セツナは僕の隣に避難していた。
「えーと、もしかして、あの人が?」
「……そう。私たちの師匠」
ナリアの炎攻撃を踊るように軽々と躱して笑っている爽やか青年さん。
しばらくして、二人の戦闘は師匠さんの勝利で幕を下ろした。
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