テーマ6 新しい生活エリアと喋りすぎる案内人
2019年、よろしくお願いします。
第一層は、遮るものが何も無い真っ平らな平原だった。しかし、出てくる魔物は普通ではなかった。
第一層で出てきた魔物は2種類。
一つは、物理攻撃を8割方減らしてしまう羊。
もう一つは、魔法攻撃を8割方減らしてしまうスライムだった。
でも……セツナとナリアには関係なかった。
セツナは普通に殴って倒してた。少し変だなぁと思ったのは、羊の魔物の体が異様に冷たかったことくらいだ。
ナリアは、炎の熱でスライムを溶かしていた。少し変だなぁと思ったのは、炎の色が青い色だったことだろうか?
見事に2人は一撃で魔物を倒していった。
そして第2層、3層4層5層………………と、短時間で強引な力の突破という名の攻略をしていき、ついに第10層、ボスのいる階層へ。
セツナとナリアが三人目を探していた理由もわかった。
「……私、真ん中」
「じゃ、アタシが右で」
「僕は左」
ボス部屋が三つあり、そのうち2つでもクリアすれば良いらしい。
僕、完全に頼りにされてないな……
まぁ、実際戦えるかどうかと聞かれると、無理だろうね。武器や魔法の基礎は教えてもらったけど戦い方を教えてもらった訳じゃないし、とりあえず、やれるところまでやってみよう。
扉を押し開けて中に入る。
中は思ったよりも明るかった。
ガシャガシャ
と音を立てて部屋の中央に武器を構えてたっているのは、鎧をきたスケルトンだった。
骨なのにガッチリしている。将軍みたいだ。
向こうは槍、こちらは弓矢。
遠距離戦にすれば僕の勝ちだ。
「光魔法、付与」
構えた矢に光魔法を付与し放つ。
スケルトンは槍を払って矢を落とした。
「やっぱり一本じゃダメか。なら……」
今度は二本、光魔法を付与して連続で放つ。
1つは落とされたがもう一つは胸のあたりにある骨に刺さった。しかし、まだ立ったままだ。
「(そうだ……これなら)閃光」
敵の目が眩むように、僕とスケルトンの間に光を発生させた。
そして光魔法を付与した矢を二本放つ。
放った矢は、額と右肩のあたりに当たり、スケルトンは倒れた。
「ふぅ〜。なんとか勝てた。でも、セツナとナリアはもう終わって待っていそうだなぁ」
出口の扉を押して出ると、案の定、2人は先にいて僕を待っていた。
「お待たせ〜。2人とも早かったんだね」
「……ん。壊すだけだから」
「まぁ、私ら戦闘は孤児院の方で教わったからね」
「……ん。強い先生がいた。ラックも教わるといい……」
「へぇ〜そうなんだ。じゃあ今度僕にも紹介してよ」
「……ん。明日行こう」
少し話しをしたあと転移陣に乗る。
第11階層からはどんなところだろうと少し期待して乗った。
「ようこそ! 第2の生活エリアへ! ここのエリアは『森』がテーマとなっております。第1生活エリアは『近代都市』というらしいですよ。ここでの移動はバスではなく船になります。川の流れに乗って行きたいところに移動してくださいね。川は浅いので落ちても大丈夫ですよ。ちなみにここは『森』がテーマなだけあってエルフの方々が多いですね。そういう私もエルフなんですよー。まぁ他の種族の方もいるのですが、それと『森』よりも『近代都市』の方が面白いからという理由でそっちの方が好きというエルフもいるのです。私はここに初めて来た人たちに、説明するというお仕事をしているのですが冒険階層はどうでしたか? 面白かったですよねー! 最初は平原、次は凸凹平原、その次は…………………………………………ときて最後は一対一の戦いですからね。この後も面白いですよ。水の中に入ったり、火山に登ったり、まぁ色々ありましたね〜。あとここにもルールが存在します。あっ、ダンジョン共通のルールではなくて生活エリア特有のルールです。ここ『森』では永住するなら作物を育てて売るというルールがありますので、ここに家を持つときはそれはやってもらいます。意外と人気なんですよ。歳をとった方なんかに。『近代都市』ではこれはないですね。ほら宿ばかりだったでしょう? あそこは………………なんですよ。これで私の話したいことは2割ほど話せましたね。何か質問はありますか?」
転移した直後、僕たち3人は、とてもおしゃべりなエルフのお姉さんに捕まり、1時間以上立ったまま聞かされた。
というか、あれで2割なのか……。セツナとナリアも訳分からんみたいな顔してるし……。
「あ、大丈夫です。丁寧な説明、ありがとうございます」
ぼくがそう言うと、エルフのお姉さんは嬉しそうな顔になった。
あっ、嫌な予感……
「そうですか! そうですか! 私よく喋りすぎて言いたいことがよく分からないと言われるのですが、これでもあまり喋らないように簡潔に説明しているのですよ。なんでうまく伝わらないの? ともっと短く説明をと自分に言い聞かせてきたのですが、それがようやく実りました。私は幼いころは……………………だっんですよ。それで5歳のときに…………」
それからぼくは1時間、彼女の話を聞いた。セツナとナリアは先に行ってると目で合図をしてきた。
話を聞き終わったぼくは、あのお姉さんの声がまだ聞こえるような感覚を残しながら2人と合流した。
読んでくださりありがとうございます。