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テーマ2 学園編の始まり……ではありません

 

『ご乗車ありがとうございます。まもなく『生活の学び舎』に到着します。荷物の確認をして、バスが止まってからお立ちください。前の方にいる人から順番に降りてください』


 居心地の良い振動でうとうとしかけていた僕は、バスを操っているおじさんの、耳に響くようなそこそこ大きな声で覚醒した。

 少しするとバスが止まり、プシューという音をたててドアが開いた。


『案内所』と呼ばれるあの建物も、出入り口は人の手で開け閉めする扉ではなかった。


「すごいなぁ」


 感嘆の声が口からこぼれ出る。


 僕の村では扉のある家は、村長の家や食料倉庫で、あとの家は草や藁を編んだものを入り口に垂れかけただけだったのにな……。


 このバスには、僕を含めて6人いた。

 全員人族だったので、まだ他の種族の人は近くでは見ていない。


 僕は前から3番目だったので3番目にバスを降りた。


 降りた先では、一人の女性が立っていた。


 肩まで伸びたサラサラと綺麗な黒い髪で、背丈は僕と同じくらい。たぶん歳は僕より上だろう。胸は小さすぎず大きくもないちょうど手に収まるくらいの大きさで、顔は整っていて美人。


 高価そうで変わった服を着ているが、その服は貴族様が着るような派手な色でやたらとヒラヒラした服ではなく、黒一色でピシッとした仕事ができると思わせるようなだ。彼女自身の雰囲気と相まって、とても似合っている。



 バスに乗っている人が全員降りると、バスはどこかに進んで行った。


 そして、女性が話し始めた。


「通知通り、今回は6名ですね。私はユーラ。ここではユーラ先生と呼んでね。このダンジョンには、ここができてから1ヶ月くらいで来たので、いちおう古参でもあります。聞きたいことがあれば聞いてください」


 ここができてから1ヶ月で来たのか……


「あの? ユーラ先生も冒険者なんですか?」


 僕は気になっていたことを聞いた。


「えぇ、冒険者よ。今でも一週間に3回、冒険(アドベンチャー)階層(フロア)の方にいっているわ。あぁ、さっき何でも聞いてと言ったけど、冒険のことは自分で確かめにいってね。そのほうが面白いから」

「はい……」


 そういえば、受付の人も「ここにいる冒険者は冒険が趣味になっている人が増えている」と言っていたなぁ。


「トイレはどこでやればいい? 案内所では説明されたけど、よく分からなかったんだが……」


 今度は僕と同じバスに乗ってきた同じ歳くらいの男の子が質問をした。

 僕もトイレにいきたくなってきた……。


「じゃあ、先にトイレにいって、そのあとは昼食にしましょう」



 ○



 トイレにいったあと、学び舎の食堂で昼食をとり、教室というところに案内され、簡単な説明をされたあと解散となった。

 寮という決められた部屋に案内された。

 学び舎の中では決められた服があり、それを着て過ごす。

 朝昼夕のご飯は無料で提供される。



 そして、1ヶ月が経つころ、僕は学び舎を卒業した。


 1週間で卒業した人もいれば、2ヶ月かかった人もいた。

 学び舎の授業の中で、他種族との交流もあった。


 最初は食堂であっても、偏見などがあり、関わりを持たなかったが、徐々にそういったこともなくなって、卒業するころには普通に喋ったり、トランプやビリヤードといった、学び舎にある娯楽で遊んだり……。


 ここでの生活は楽しかった。


 卒業祝いとして1万G(ゴールド)をもらった。


「ありがとうございます! これから頑張ります!」


 お世話になった先生――先輩冒険者の人たちだけど――にお礼を言って学び舎を出ていく。


「おうよ! これも良い経験になるから、お前もやってみろよ!(給金もそこそこいいしな)」


 出発する前、そんなことを言われた。



 この後は、バスに乗って住宅区域と商業区域の境付近にある、ホテルという一泊2000Gの宿に泊まった。

 バスの中から見る街の景色は、やはり凄かった。


 そして次の日、ギルドに行ってちょっとした説明をされたあと、仕事を受けた。


 鉱石の荷物運び、ペットの散歩のお手伝い、レストランと呼ばれる食事処の接客、スポーツ観戦の手伝いなど……。


 ダンジョン(ここ)の仕事は楽しいなぁ。



 一週間、こんな感じで過ごしたラックは、ダンジョン攻略のことなどすっかり忘れていたのである。





読んでくださりありがとうございます。

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