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「出せ!この野郎!」


俺が叫ぶが返事はない。怒りに内臓が煮え繰り返りそうだ。


いや待て。ここで体力を使ってもしょうがないだろう。俺は落ち着きを戻そうと手に人と書いて飲み込む。えっこれは緊張をほぐす方法だって?いいんだよ。そんな小さなことは。


なぜ捕まったのかを考える。反省では決してない。俺はおばちゃんが作ってくれたスタミナ丼を無我夢中で食っていただけだ。気づいたらおばちゃんが捕まっていて......


確か暴食の罪だったよな。あのスタミナ丼が暴食?無実もいいところだ。つまり原因はあの中の食材にある?あれか?宗教的に豚がダメみたいなやつか?それとも麻薬的な何かが入っていたとか?


いやいやもっと落ち着け俺。暴食の罪だぞ。つまり量が原因の筈だ。あの量で暴食だと?やはりおかしい。あれはたった5人前くらいしかなかった筈......


俺はたまに出される残飯を食べながら1ヶ月が過ぎた。


ーーーーー


あれから色々あった。少しづつ話して行こうか。


まず隣の牢屋にいたおばちゃんに何が原因で捕まったのかを聞いた。俺は暴食の罪。おばちゃんは節制の罪らしい。


原因はやはり量。あのスタミナ丼は法律の規定する量よりも多いのが原因で本来注文していい料理ではないらしい。つまり原因はおばちゃんにある。だがあんなに美味い料理を作ってくれたおばちゃんを憎めるはずもなく。


牢屋は地下ではなく地上にあり、質素なつくりとなっている。トイレと窓があるだけの簡単なつくり。窓の外では鳥が鳴いていたり、子供達が遊んでいたり。


他にもいろんな人とおしゃべりした。


「俺は忠義の罪で捕まった。せっかくこの国の警察になったのに逮捕する奴らはみんな俺の友達だったやつばっかりだ!あいつらは何にも悪いことをしていない!だから俺は上に言ったんだ。あいつらは悪くない!法律の方がおかしい!ってな。そしたらこのざまよ。かべでみえないだろうが利き手を持っていかれた。こんな俺だけど結構腕はたったんだぜ?剣と利き手さえあればこんな牢屋抜け出せたのに......」


これは忠義の罪で捕まったおじさんの話。この人も全然悪そうな人じゃなかった。


「この国の法律は誰が決めたんですか?」

「この国の法律は神様が決めたらしい。それも昔の神様が新しい神様になってからっていう昔話もある」


らしい。昔の神様から今の神様に変わった時に法律を決めたらしい。つまり神様がルールを決めたからそれが絶対だと。


文句は神様に言えって話ですね。わかります。これはもう神に抗議する一択しかないですねえ。俺今の神様嫌いだわ。だって飯が食えないんだよ?思う存分食いたいじゃん。飯くらい。たった5人前くらい、いいじゃん!


そのほかにも色々な話があるけど聞く?いや中には普通に悪い奴もいたから話したくない話もあるけど。


例えば、


「拙者は敵国から、この国のスパイとして送られたでござる」


こんなやつとか。


「どぅふふ、きらりんちゃんぬふふ」


こんなやつ。


いやもう何の罪だかわかんないけど逮捕だよ。


ーーーーー


最近飯が来ない。あの残飯が来ないのだ。俺の他にも空腹で死にそうになっているやつがいる。この国に何があったのであろうか。もしかしたらただ単に忘れ去られただけなのかもしれない。俺らによくしてくれた残飯をくれるお兄さん。あのお兄さんの身に何かあったのかもしれない。


それはともかく飯だ。飯がないと人は1週間で死ぬらしい。もう飯が来なくなって6回の夜を越えた。そろそろ死人が出てくるかもしれない。


かくいう俺も死にそうだ。だが他の人よりも健康、というよりも元気だ。さすが神様がくれた体だ。そういえば俺のスキルって何なのだろうか?確か精神耐性と健康な体、あとは『食』に極振りって言った気がするなあ。食に極振りってなんだよ。今になると笑えてくる。


コツンコツン


久々に聞く靴の音。俺たちの靴の音ではなく、牢屋の出入り口付近から聞こえてくる。飯だ!飯がくる!もうよだれが出てくる。なんだったかな?確かパブロフの犬だったかな?そんな感じ。


声が聞こえてくる。


「なんだいい女いないじゃねえか」


もうわかった。あいつらは飯を持ってない。グルルるると腹が鳴る。犬のようになく腹はあいつらを食らわんと泣き叫ぶ。


ぱん......ぱん......


銃声が聞こえてくる。その音はだんだん近くなってくる。俺は死に怯えた。一度死んだとはいえ死ぬのは怖い。体が震え冷たくなっていく。まるで死ぬ準備が整うかのように。


不意に声が聞こえた。


「おっ、いい感じに空腹なようなの!グラと契約するの?」

「誰だ!?」

「いいから、契約するか聞いてるの!」

「契約とやらは俺を救えるのか?」

「それは君次第なの!さあ契約するの?」

「する!」

「了解なの!」


ぽんっ


牢屋の中に可愛らしい幼女が現れた。かなり美形で美女にうるさい俺をも唸らせるほどに整った顔は幼いのに妖艶に見えた。髪は紫色、綺麗な紫は光の少ない牢屋でも光って見えた。


ぱん!


右隣から聞こえてきた。次は俺の番だ。


「田中君。君は魔法が使えるの!」


幼女が俺の頭に手を伸ばしおでこを触る。すんと思考が澄んでいく。そしてアイツがここの前に来る。


「おっ可愛い幼女がいるじゃねえか!こいつは後で犯すとして......男!お前は死ね!」


男が俺に銃口を向けて来る。ハンドガンか。この世界にもそんな物騒なもんがあるんだな。


俺は落ち着いて魔法を唱える。


『グラトニー』


男は姿を消した。それとともに俺の空腹がおさまる。


「よろしくな。グラトニー」

「こちらこそよろしくなの!」

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