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にやんこの王国・にやん☆

作者: ののみやゆい(またの名・ののちゃ、のの1号)

ここは 猫の耳と尻尾がついた人々が暮らす平和な世界 

 にゃんこ族・・

そして そんな世界の小さな王国の中の・・街


欧州の中世の町並みのような 綺麗な街

レンガ造りの家に


別の通りには

それにパステルカラーを基調にした可愛い家も まるで積み木を並べるように

並んでる それぞれの壁はピンクにブルー イエローの色に塗られてる


豊かな森や湖や運河もあり 

にゃんこ族と呼ばれてる猫耳の人々が 

のんびり楽しそうに平和に暮らしている


そして にゃんこ族は 魔法資質を持つ者が多くいて 

時折 魔法の暴走の騒動の事件も多くあったのだ


・・・で

今回 起こった騒動といえば・・


雨が降る


いや・・飴玉が降る・・

降る降る!

ドンドン降ってゆく!


それはそれは・・

本当に

勢いよく 飴玉が降り積もる?


ザザザ!

ザザザ!ザザッ!


ザザザ!ガラゴロガラゴロゴロロ!


降るのは 雨・・雨ではなく

飴玉 キャンデイ


街に溢れんばかりのキャンデイの・・・大洪水が襲ってきたのだった

気がつけば 町はキャンデイに埋もれていた・・


事の始まりは 少年が小さな女の子の為に

魔法を唱えての事から始まったのだった

 


「じゃあ いっしょに魔法の言葉を唱えるよ!アシャシャ」


・・と少年(薄茶色の猫耳と尻尾つき)は

小さな女の子(こちらも黒の猫耳と尻尾つき)に言った


うれしそうに女の子 アシャはうなずく 


「リアたん! 一緒に魔法の呪文を唱えるねえ!」



二人は声をあわせて魔法の呪文を唱え それから


「この大きな袋にいっぱい 異国のキャンデイ 

しゅしゅキャンデイを降らせたまえ!!!」

・・・と言った


そう 袋いっぱいで 良かったのに

そのはずだったのに・・・


そして・・・


石畳の道路や塔の上に 町中に ものすごい音をたてて 

豪雨のごとくキャンデイの雨が降り注ぐ


雨ならぬ飴玉ことキャンデイ


ガラガラ!

ゴロゴロ! 

ゴロゴロゴロ!


降る降る・・キャンデイが ものすごい量のキャンデイ(包み紙に包まれた) が

空から降ってくる・・。


ドゴゴゴゴゴ!

まるでキャンデイが滝のように 豪雨のごとくに降りそそぐ


メキ!ボコン!

あ、あの家の屋根に穴があきました・・にやあ

あちらの家の屋根も・・・にやん



ゴロゴロと転がるキャンデイの山

道いっぱいのキャンデイ


あ・・・・キャンデイに足をとられて 紳士や 綺麗なドレスを着た方々(猫の人)が 

滑って転がる転がる

また転がった


まだまだ転がる・・転がってゆきます

どんどん転がってゆきます・・にやん


それから埋もれてる人達も多数・・・。

埋もれて、ピクピクしてます にやん!


尻尾だけ 見えてます にゃん


あちらこちらで悲鳴があがる

「うあ~ん」「きゃああ!」


こちらの転がったご婦人の長いドレスのスカートがめくれて 

そのレデイの悲鳴があがる


「きゃー!どうしましょう!にやん!」

「いや~ん 私のドレスが!」

「きゃあ~!きゃあ~!」


「いや~ん!にやん!」

「きゃあ!」



前に進もうとして 前後に揺れて転がりかかる紳士・・あ・・こけた。


となりにいたお店の人も荷物を持ったまま

ドガシャ!


あ・・・キャンデイの山の中にこけて 埋もれた・・。


誰かが

尻尾だけ出て・・ピクピクしている。


「きゃあ~!」「ひゃああ~!」

あちらこちらで悲鳴が上がる


他にもキャンデイのために 坂道をどこまでも 転がってゆく紳士や子供たち

「ひやああ!にやん!」 「きゃあ!きゃあ!にやん!」

「きゃああ~!」


ズザザサ

ああ・・子供(猫人)が転がってゆく

また一人 また一人と・・


「にゃん!にやあん!」悲鳴らしい・・


ザ!ザ!ザッ!

膨大な量 まるで怒涛の川の流れのような飴玉またはキャンデイの勢いに

逆らう子供(猫)

必死に歯を食いしばり

前に進もうと・・あれ・・・?


やっぱり 流されてゆきました

「あれ~!にやん!」


そしてある場所では・・

ザザザー!


子供たちはキャンデイに埋もれたり 

あるいはキャンデイに押し流されて 転がりながらも 

キャンデイをひとつ口にほばって


「美味い!」と歓声をあげる子供の猫(人)

「え!どれどれ?」他の子供の猫(人)


それはそれは 楽しげに うれしい歓声 いや悲鳴をあげている

いや・・歓喜の声か・・


とにかく、一番喜んだのは 子供(猫の人)たちのようでした・・。



街は とにもかくにも キャンデイの洪水で大騒ぎとなったのでした・・。


何はともかく 街の被害は甚大・・

建物は 飴玉・・キャンデイで破壊されてしまったのでした。



そして、それから


ため息をつきながら、魔法使いの先生が 家に戻ってきた


「・・・リア」やぶ睨みがちに 

銀色のふさふさ種である 猫耳 ふさふさ尻尾の魔法使いの先生は少年を見てる・・。

はっきり 言って、にらんでいる・・。

とってもブラックなオーラを醸し出してる。


今は ブラッキーな魔法使いであるアリステア先生(師匠かも)


「ごめんなさい! ごめんなさいにゃん!」 可愛い男の子

リアが半泣きで答える

男の子には しっぽと・・耳つき ピコンと立て下がり ビクビクしている 


そう 繰り返すが

ここは にゃんこ・・というか にゃんこの耳つきの半人半獣の人々の王国・・・


犯人?である

魔法使いの見習い・・の薄茶色のネコ耳としっぽ 

少々金色を帯びた栗毛の髪の男の子であるリアが泣いている


「あとで・・・おしおき・・」とぽつりとつぶやく 魔法使いの先生・・


銀色のふさふさの耳としっぽを持った魔法使いの先生が にらんでいる

先生の名前は アリステア 

種族は 多分にペルシャ系


見習い・・弟子の名前は 先程の男の子 リア

薄茶色の尻尾に耳つきである


そして

柱の隅で 心配そうに リアの様子を見てる子がいる


肩ほどのまっすぐ艶々の黒髪 猫の黒耳を持つ ブルーの瞳のにゃんこの子・・が じっと・・心配そうに見てる・・・・

白い肌で女の子とみまごう男の子のようだが・・可愛い美人である・・


で話は戻り・・


リアへの

お仕置きタイムのスタート!


「いたた!先生痛い!」

アリステア先生は リアのおちり・・いえ お尻をペチペチと叩いてる


ペチ!

ペチリ!


「町の広場に 魔法をしくじり 大量のキャンデイを降らせおって 

町中のものが滑ってころんで大騒ぎ・・だったな・・・」


「どうゆうわけだか・・魔法は消えず・・しかも洪水のごとく・・すざまじい量だったから」


「町は 大騒ぎになったのだ・・大量のキャンデーで屋根に穴があいたとか・・

キャンデイに埋もれただの

店中 キャンデイだらけになっただの・・

それから・・」


ふう・・

ためいきをつく アリステア先生


キャンデイの洪水での騒ぎの後始末


町長さん達との話し合いの末 決まったのは・・



今回は 犯人である弟子リアは町の者の人気者で

とりあえず 怒っている人はあまりいない・・・。

もちろん 悪意がないことは みんな 知っている


更には その先生である魔法使いの多大なる功績で 

なんとか見逃してはもらえることになった


が・・

しかし もちろんペナルテイとして 10日間 

町の一角に夜の明かり つまり 魔法の明かりで街灯をつける役を

仰せつかったのでした。


「町全てでは 一晩かかっても 終わらないから・・

一区間でいいそうだ・・と

入り江の地区 塔と湖の地区 それから・・」 


「家から近いのは 塔と湖それにテンボス運河の地区か・・」ふむ とアリステア先生


「さて どの区画にするかな?」 「銀の橋の地区あたり・・」

「銀の橋の地区はユニコーンやペガサスが多く生息するが、深い森の辺りの付近を通るから

ちと 子供(猫)には不向きか・・迷う事はないとは思うが」


じろりと リアを見る 


先生に お尻を叩かれ その上にこってり絞られた後で 

痛むお尻を なでなでしながら その話を黙って聞いていた


ふうーと ため息をつくリア


すると

そっと 先程の黒猫の男の子(美人)が来た


「ごめんなさい 僕の妹が 

キャンデイが欲しいって言ったばかりに・・」涙ぐむ美少女にゃんこ・・いや美少年か・・


リアは 黒猫の男の子を見ると嬉しそうに答えた


「大丈夫だよ ナジュナジュ!」


「妹さんのアシャシャが 喜んでくれるなら・・って 

ちょっと 叩かれたおちり・・いやお尻は少々痛いが 大丈夫」


「大好きな 誰より町で一番美人で可愛い綺麗なナジュナジュのためだもん!」 

・・・男の子だけど・・まだ子供だけど・・


いいのか?それで?


「アシャシャは 沢山のキャンデイが手に入って嬉しそうだったよ 有難う!

でも本当にごめんね!」

ナジュナジュに 頬にちゅー つまりキスされて リアは舞い上がる


「えへへ」

「い・・いやあ 今度はもっと 魔法を頑張るから まかせてよ!」 とリア


「えっと 今晩から町中の明かりをつけて回るでしょう? 大変だよね

僕も一緒にお供していい?リア? お夜食も用意してあげるね

いやじゃなければ 10日間付き合うから・・」


「いいの!ナジュナジュ」


「うん♪」


こうして 二人きりの夜のデートとなった 町の明かり番・・


いや・・・・

おまけはついているが 


「にいたん!リアたん!」


「ごめんね~妹の アシャシャがついてきちゃった」ナジュナジュ


「ま・・ま 人数が多いほうが楽しいから・・・」リア


「・・・ナジュナジュ 後ろのリュック 大荷物だけど

重くない? 大丈夫?」リア


「・・ん 見た目ほどは 重くないよ

今日の晩御飯だよ ご馳走作ってきたから

楽しみにしてて♪」 ナジュナジュ 


「うん!」


それから ぴったり ぺったりナジュナジュにくっいている

アシャシャを見ながら リアは・・


(ちょっと デートモードで楽しみにしてたんだが 仕方ないか・・)と心の中で

こっそり 呟くリア 


夕暮れの中 黄昏色に染まった美しい町


「綺麗だね」ナジュナジュは笑う

「うん!」

黄金の光を浴びるナジュナジュに見惚れながら

リアは力強くうなずく!


その町の街灯に リアは 魔法の呪文を唱えて

ひとつ ひとつ明かりを燈してしてゆく 


「琥珀の金と空の青の瞳 オッド・アイ そして白い翼 金の髪

愛らしき姿の優しき女神エルトニア 

ほのかな光を 夜の灯りを与えたまえ・・」リアは呪文を唱える


呪文の言葉に 

街灯にポンッと灯りが燈る・・。


途中でいろんな人達にご挨拶をしながら 作業を進める


沢山の人達の往来で 磨かれて すべすべした石畳を歩きながら 

蜂蜜色のレンガで出来た町のお店など建物の通りの街灯

ひとつひとつに明かりを燈す


ポン

ポン

ポン!


ふんわりと柔らかな光が燈る


それから今度は違う道りにある

御伽話で出てくるような それぞれ淡いパステルカラーのイエローやピンク 

薄い緑や青の壁の家並みが立ち並ぶ

家並みの通りにも明かりを燈す


「魔法よ 女神の祝福の光よ」


シュッ

ポン

ポン!


「大体だけど この辺りは済んだかな?」リアは呟く


「あれ?リア 噴水の広場は?」とナジュナジュ


「噴水の広場 あ!いけない忘れるとこだった」ナジュナジュに答える リア


階段のある 2つの噴水の広場 

 

円を囲むように

らせん状のゆるやかな階段に上下に噴水が配置されている

階段の途中にも 小さな噴水

周りには 花の植え込みや木・・ ちょっとした芝生のスペースまであった


広場の上部分にある石畳の階段で つるん!と

こけて落ちそうになる アシャアシャ


「きゃあ!」 とアシャシャの悲鳴が上がり


ナジュナジュは アシャシャを慌てて抱きとめるが 

階段の近くの小さな噴水の水で 

ナジュナジュも滑って足をとられて 一緒にころげ落ちる


ゴロゴロ!

ゴロン!


「ひやああ!きやあん!にやん!」 二人の悲鳴

そして二人を受け止めようとするリア 


「ナジュナジュう! アシャシャ!」

 

「時に風と水を司る麗しい女神アルテイシア・・・」

リアは浮遊の呪文を唱えるが 間に合わなかった・・


どたん!


「ふんじゃああ!にやん!!」 「にやん!」二人の悲鳴に

「ぎやあ!」リアの大きな悲鳴

二人の身体がリアを直撃した


ばたり・・・と倒れこむリア


「いでで・・」

二人の下敷きになりつつも なんとか助けることは出来たリアだった



「いてて・・」

「だ・・大丈夫 二人とも?」


「う、うん 僕らは大丈夫だけど

リアが下敷きになってしまって・・」


「だ・大丈夫?リア  ごめんね」

泣き顔になるナジュナジュ


ナジュナジュがリアに顔を近ずける


真近のナジュナジュの綺麗な顔 

サクランボウのような赤い唇 白い肌


ナジュナジュの深い青の サファイアのような瞳の色に

どきん!としながらも リアはこう答えた


「大丈夫だよ ちょっと痛かったけど ほら見てみて!

それより 二人とも 本当に 大丈夫?」とリア


「うん 僕らは大丈夫だけど・・」 ナジュナジュ

心配そうな表情をする


思わずテレながらリアは答える

「僕は大丈夫だから ナジュナジュは泣かないで 

ほら アシャシャは 笑ってる」とリア


「うん・・」ナジュナジュ


「リアたん ありがとうです。」 とアシャシャ


「さあ ナジュナジュ まだまだ頑張って

残りの街灯に明かりを燈すよ」

ナジュナジュに向かって リアは笑って答えた・・。


それから・・広場下の通りに向かう三人(三匹)


下には 今 評判の素敵な洋服店やお菓子屋さんがあって

・・・通り道なので ついつい店のショーウインドウを覗きこむ


まずはお菓子の店


ショーウインドウには

花の形をした砂糖菓子の数々に シュークリーム 

白いケーキの上には赤い果実が沢山のっている 

チーズケーキにも 同じく赤い果実

チョコケーキには 白いホイップクリーム


横には ラズベリーの香りの紅茶の袋

アールグレーの紅茶

アラビアのコーヒーにココア

ラベンダーのハーブ茶

カミツレのハーブ茶も


喫茶店もかねてるお菓子屋さんなので

飾りに一緒に置いてある


「食べたいよお・・・」とアシャシャ


「今度ね・・うふふ」とナジュナジュ 


「しゅしゅキャンデイは フリーウエアなんで 魔法複製は自由なんだけど・・


こういった特別のお菓子や服や品物は お店の人の権利を守る為に

著作権というガード魔法がかけられている・・から

複製出来ないだよね・・他にも特別製のガード魔法も付加されてるし・・・」とリア


「ねえ!こっち・・見て綺麗だよ・・」


それから 今度は隣にある洋服屋さんのショーウインドウを覗く三人(三匹)


「きれいでしゅ・・」と頬を赤くして嬉しそうなアシャシャ


「ここ・・子供用の服も置いてあるんだね あ!髪飾りや帽子に靴までセットである!

ショーウインドウの服 どれも素敵だね」


覗き込みこちらも頬を赤くするナジュナジュ


「ああ!見てるだけで ワクワクするよ」


「あれなんか オレンジ色のドレスと靴のセット ・・英国18世紀風のドレス 

低い腰位置で白いサッシュのリボンを結んだ分

白い襟に首元の赤い花が可愛い 頭は複数重ねたリボン風のヘアバンドか・・


それから 横の淡いイエローグリーンのワンピースも可愛い スカート部分は薄い生地を重ねて

下がイエローにグラデーションがかかってる

それに上の部分の金の刺繍 色にあって素敵な感じだ 頭は花の形をした小さな帽子


靴はトップに花飾りのついた 淡いイエローか・・

アシャシャに似合いそう すごく いい!」リア


「うん・・本当に素敵・・でも ちょっとお値段が高いから・・。」残念そうなナジュナジュ


「あ!ああ!」今度は興奮してアシャシャが叫ぶ


「あ! あれ 飾られてる2つの服 にいたんに似合う!!!」指を指すアシャシャ


「ああ!そ・・・」と思わず 興奮して 言いかけて・・しかし ハッ!と 気がつき口ごもる リア


確かに服も素晴らしく綺麗で美しく ナジュナジュの美しさを引き立てることであろう・・


しかし・・・


服はドレス・・・女物・・・


華やかで 沢山の赤いビーズや赤い宝石に刺繍して縫いつけた

ふわりとした シフォホンを重ねたロココ調の豪奢な赤のドレス 髪飾りに曲線を描く金と赤の宝石

金の宝石が埋め込まれた 赤い靴

 

白地に青の大きなリボンを巻きつけたような

ニンフを思わせる柔らかな生地の清楚なドレス

白地には 金と銀の刺繍が施されていた


髪飾りは 青と白とクリーム色の複数のリボンタイプのカチューシャに 

白の小さな花のヘアピンが

マネキンの髪の中で 沢山の花びらが降って落ちてきたかのように飾られていた


靴は 同じくニンフのイメージで 足ふとももまで リボンで巻くサンダルタイプ


「ええっと・・・」リア  


「まあ、僕は 本来三毛種にしか出ないはずのXXYだから・・女性化したら似合うかもね」

苦笑するナジュナジュ

「・・・でも男性因子のほうが強いみたいだから・・どうかな・・?」


「リアは・・?僕がどっちのほうがいい?」


「・・・え?」

憂いを帯びた ナジュナジュの青い瞳が リアを見つめている。

「もし・・」

「もし? もし・・?」どぎまぎしながら リアは聞き返す


「・・ごめん なんでもない・・」とナジュナジュ


「いつか アシャシャにこんなドレスを買って着せてあげたいな・・」ナジュナジュはつぶやく


「アシャシャはナジュナジュに似てるから きっと美人になると思うよ」とリアは言う


「ん!」 「なんでもない・・」


「ナジュナジュも綺麗だよ・・・ 僕はどっちでもいい・・ 

優しい綺麗なナジュナジュが大好き・・」聞こえないように

小さな声で頬を赤くして リアはつぶやいた


「今のは秘密さ」リアは心の中で呟いた


それから 三人は

どうにか 町のすべての街灯に明かりを燈してゆく


大きな街灯には 魔法の焔を飛ばして 硝子の中に燈す


さほど大きくないが 夕暮れの運河ぞいを三人で歩きながら

一本 一本 街灯に黄金色の光が輝く

ふと見ると 小さな船が テンボス運河を水音をたてながら 進んでいる

水鳥や 白鳥が船の横を滑るように 泳いでいる


「鳥さんだね リアたん 兄たん」アシャシャは嬉しそうに笑う


「そうだね・・って え!」


運河の白鳥をはじめ 水鳥たちが 声を上げて 飛び去る


羽魚の大群が運河を泳いでる 並の量じゃない 大群だ

運河が 魚達のものすごい数の大群で 銀色に


うようよ!うようよ!

本当に大群


「何あれ?」驚く ナジュナジュ

驚き何も言えず

絶句するリア

ごくりと唾を飲み込み やっと声を出すリア


「う、海にいるはずの羽魚が何故?

確かに テンボス運河は 海に近くて繋がっているけど!

あ、あれは!」


それから 一段落ついて ひとごこちをつく


「後は・・塔と湖の中の橋だけかな、この塔が 難題かも・・」とため息をつくリア


「本当にいっしょに行かなくていいの?」ナジュナジュ

「アシャシャ行きたい」とアシャシャ


「・・ここは ちょっと素人って言うか 魔法使い(見習い)じゃないと危険なんだ」


「ごめんね ここは 僕一人で入るからね」と宣言して 塔の中へ向かう


「き、気をつけて・・」心配そうなナジュナジュ

「行ってらったい!」と明るく笑うアシャシャ


ギギッと 重々しい鉄の扉を開き 心の中で思う

この塔は 昔 この町が小さくて 森の中にぽっんと 陸の孤島のように存在していた頃

出来た塔なんだけど・・・


森で夜遅くまで作業をした町の人と・・

遠くからの旅人が迷わずに 町を目指して来られるようにと 塔の最上階に明かりを燈していたんだ


で・・今も

塔の一番上の天辺に明かりをつけなきゃいけないだけど


昔のことだけど・・・悪い奴らが ここを占領して 町を一度襲って以来 侵入者除けを作ってのはいいんだが・・

塔の中は侵入者除けの仕掛けでいっぱい・・・。


平和になった今は 町長が 塔の中の侵入者除けの仕掛けを 

一応は安全用に改造 して ちょっとした特訓アスレチック用に改造したのはいいんだが・・

けっこう 攻略するのが 大変なんだな・・これ・・


「せめて魔法使い(見習い)か 戦士(見習い可)ぐらいの能力がないとね」

などと独り言を言うリア


らせん階段を上がりながら ブツブツとつぶやくリア


らせん階段・・上に登ってあがってるんですが・・

「あれ・・?」


「あれ!あれ!」


いつの間にか ゆっくり動き出して

自動エレベーターみたいに 下へと下がってますが・・


「げ!!おお~い!とまれ くそおお!!」


ガガガッ 勢いよく音を立てながら 階段はエレベーターとなり

下へと下がってゆく!


「く!くそう!負けるかよ!」


必死で 動きに逆らい 上の階にあがる

「はあ はあ・・しょっぱなから 体力を消耗させやがって・・はあはあ・・」

肩で息をするリア


とりあえず 一息はついたのだが・・


さらに・・ 


ギギギ・・きた!!



あちらこちらの壁からいくつもの巨大なネコの尻尾や手のみが 現れ! 

リア(侵入者)をハエ叩きの要領で叩こうと迫ってくる!


「ひゃあ!」ひょいとよける 「うああ!」ひょい おっとかすった 尻尾でリアの尻尾叩かれた!「いでえええ!!痛い!」

「ひゃああ!」「うあああ!」 「痛い!」


しかも中には 飛んでくるネコの手まで! ひゅん~んん びゆう~~ん 

「うわああ! 飛んでくるな!! 今度はネコぱんちかよ!!」 リアの悲鳴


ぼこん! 「くそう!直撃したぞ!!」


ぼここん!「うおお!また頭を直撃か!!」 どごん! 「は・・腹にきた・・きた・・」


更に ねこパンチ炸裂だ!

「うおおお!」 ドゴン!


どこどどこんん! 「か・・顔に来るなああ!あ・・鼻血・・」


ドカ!猫パンチで倒れるリア


更に とどめにとばかりに 背中にドンドン!

「うおお!」


「く、魔法使い見習い弟子の意地をみせてやる!」


すばやくチョークで魔方陣を描く

「ワワンがワン!可愛らしきもの! 純真さに 忠実なる心を持つ 4つ足の生き物!

人たる者の友よ 三匹のわん子よ 今 我の元に召還する!」


召還魔法で 子犬を三匹呼び出したリア


「きゅ~ん」「わんわん」嬉しそうに子犬はネコの手や尻尾に向かって駆け出して 


子犬たちは ネコの手や尻尾たちに 遊んで!!かまって!!と嬉しそうに追い回す

やはり ネコなので ネコの手や尻尾達は にゃーと鳴きながら ついつい逃げてまわる



「ははは・・か・・勝った・・ふふふ」少々壊れたような笑い声をあげるリア


かくして なんとか 少々ダメージを負ったものの ネコの手の軍団をくぐり抜けた・・。


「はあ・・はあ・・」 息つぎをしながら らせん階段を 上るリア


そして・・次は・・・


「我が名はスピンクス」(スフインクスの間違いでは?) 

「スピンクス・・・にゃーん・・じゃ」と更に強調する


「はあ・・」


ミニサイズのネコの顔をした スフィンクスもどきが らせん階段にどっかと横たわっていた

態度・・とっても偉そう・・・


「汝に問う・・この問題を解かねば 先へと進めぬ」


ああ・・本当に偉そう・・


「問題って 最初は4本足で歩き 次は2本足 最後は3本足で歩く?」リア


「確か答えは人間だろう? 4本足は赤ちゃん 2本足は子供および大人 

3本足は杖をついた老人・・」


「ちちち・・・ち ちがうニヤン えっと・・えっと・・にゃん」と・・スピンクス


「なんだ?悩んでいるのか?」


「ち・・ちがう!にゃん! そうだ・・

では 汝に問う・・」


「・・天空にある人 2つの光

・・・一人は天空の青の支配者 輝ける者

強き者の笑み


もう一人 暗き夜に現れる者 

さびしげな微笑 夜に現れるものは

恥ずかしがり屋で 時折 その姿を隠すもの・・」



「ええっと・・なんだろう?」 ひょっと横壁を見る 小さな窓があるのに気がつく


ナジュナジュに聞いてみよう・・学校の優等生だもんな・・


「おお~いナジュナジュ! ちょっと聞いていい?

クイズ出されて 回答できないと上の階に上がれないんだ」と大声で叫ぶ


「でね・・問題だけど~・・・・」


「それ・・多分 太陽と月 だと思うよ! だって 天空の2つの光で 青空と夜空の光でしょう?

・・で 夜だから星かな・・とも思ったけど・・姿を隠すのは たぶん 新月のことでしょう?だから月」ナジュナジュ


.「・・・・・・・だってさ」リア


「・・・これ!自分で解かぬか!!」とスピンクス


「最初・・人(猫)に聞くな・・とは言わなかったじゃないか・・」


「・・・・まったく・・今時の若い者(猫)は・・」スピンクスはブツブツ言いながら 彼(?)は道を通してくれた・・。



そして・・そして 更なる次の難題は・・・


がたん!ごろん!


巨大なボールが沢山

上から落ちてくる


中には飛び跳ねるボールもある・・


「ふんぎゃあああ!」飛び上がり なんとかよけるが まだまだ

ボールが落ちてきた!


三個目のボールのために 横壁に押し付けられる

「む・・むぎゅううう・・!」


「う・・うお・・」なんとかボールから 逃げ出して 上の階に上がる


「はあはあ・・いくら特訓用だからって・・きついぞ!これ!

大体! 何のための特訓なんだ!!」


叫んでると 今度は なぜか ちゃぶ台が沢山 階段の上から転がってくる

何故だか 巨大な野球ボールも一緒に転がってくる


「なぜ!なぜ!ちゃぶ台なんだ! それに この巨大な野球ボール!

それにバックミュージックに聞こえてくる

この歌はなんなんだ! 」


ちゃぶ台と野球ボールから 逃れたリアだったが・・


おお!今度は 目の前に巨大なボクシング用のグローブが空中から現れたぞ!

しかも なぜか背景が 白い四角コーナーと変わった 

ボクシング用の場だろう!これ!!

横で二人の人物が戦って・・白く燃え尽きているようだし・・


と・・とにかく逃げよう・・・


「ファイトお!チュウ!」

赤い半ズボンに

同じく赤いグローブをつけた巨大なネズミが僕に挑みかかる


僕より二倍ぐらい大きい!


容赦なく 巨大なボクシング・ネズミから 

右に左にパンチが飛んでくる


「うおお!」悲鳴をあげながら

逃げ回る


「ネコの手!」 柄のついたネコの手が現れる!

ネコの手は 巨大ボクシング・ネズミに立ち向かう


「いけ!そこだパンチ」 


そしてハッと気がつく

そうだ 今のうちか 今のうちに逃げよう


「すまん ネコの手 後は頼んだ!」


ところが巨大ボクシング・ネズミ

不気味な、 うなり声を上げたかと思うと

 

いきなり分裂して 二匹になる


「ゲッ!」


追いかけて来る もう一匹


必死になって避けて、逃げ廻る

 

「うおお!パンチが キックが飛んでくる!」

ヒュン!ヒュン!パンチやキックが炸裂!


「ぎゃああ!」


どうにか避けて、逃げて

更に上の階へ・・・


「はあはあ、やっと振り切ったぞ!」

汗を拭きながら リアは独り言を言う


「しかし まだまだ途中なんだよね

次には何があるのか・・心配になってきたぞ」


階段を上がると

なんだか 今までと趣きが違う

「敵というか 何かが現れる気配がない

静かなんだが?」


階段の扉の向こうの部屋

扉が半開きになっていた


危険!立ち入り禁止と書かれた看板がある


「え?」きょとんとするリア


なんだろう?

聞いた事がある・・・


一番 危険な部屋


そうだ この階の部屋


一番危険な部屋と聞いた 誘惑の小部屋では・・?


でも・・なんで 誘惑なんだろうか?


そうだ・・ここの小部屋は 本当に昔の侵入者用の魔法があって

どうしてだか 解除が出来なかったので つまり 本当に危険で・・


鍵をつけて 立ち入り禁止の看板を設置されていた


特に この部屋に入らなくても

すぐ傍には 上へと続く階段がある


・・・が・・なぜか 鍵が壊れて 半開きになっている


で・・開けなくていい 入らなくていい小部屋なのに 

つい開けて入ってしまった リアであった


だが そこ小部屋には 大きな鏡がぽっんと置いてあるだけだった・・。



鏡をのぞきこむと・・


そうだ!これは魔法の鏡なんだ! 見る者を誘惑して・・!!


「え?あ!」 そこには リアの隠された欲望が映し出されていた・・・。


鏡の中で 黒い艶やかな髪がさらさらと揺れてこぼれる

サファイアのような青い瞳 伏めがちの流し目で 妖しく微笑む


鏡の中に映し出されてるのは ナジュナジュ


リアに笑いかけて 自らの服のボタンをゆっくりと外してゆく 

 白い肌が少しづつ

露わになって・・半分服を脱ぎかけた状態を晒していた・・。


思わずまっ赤になるリア 


物憂げな目をして 半開きの 唇が 何かを求めているようだった・・

白い肌に 濡れたように艶めく赤い唇


「ボクノ唇・・アナタの唇とカサナリアイタイ」

鏡のナジュナジュがそう呟く


「それ・・キス?」

鏡のナジュナジュは微笑む

「ソウダヨ」


「あ・・・」ごくんと 唾を飲み込んだ・・・。


鏡の中から手が伸びてきて 本当にリアに触れようとした・・・。

唇を重ねあった後で 

鏡の中に引き込み 閉じ込める為に・・・


今にも触れようとしたその瞬間!


外から大声で ナジュナジュが叫ぶ!

「ねえ!リア 遅いけど 大丈夫!そっち行こうか?」


はた!と 目が覚めるリア  

鏡の中のナジュナジュは微笑んで ふあわり・・と消えた・・。


「くすくす・・」鏡の中から 楽しげな笑い声が聞こえ 次第にか細くなり

そして こちらも消えた


「だ・・大丈夫! ナジュナジュ! もうすぐ済むよ!」 


慌てて 頭の中の先程見た幻・・

妖しい鏡の中のナジュナジュのイメージを

振り払いつつ 


次の部屋のドアを勢いよく開ける


すると!今度は 人より一回り大きな蛾が 三匹襲い掛かる

燐粉で あたりが 黄色い

「うおお!」


ビューンと飛んできた巨大蛾

それをかろうじて よける 

リアの右側の横スレスレを飛び去る 大きな蛾・・


「ひやあ」たらりと汗を流すリア


部屋の奥で 20~30人程のお揃いの可愛いミニスカートのドレス姿で決まった

50cmサイズの小人さんが 微笑み歌う


しかも 振り付けつきである・・


「ドア♪ドア♪は どこかしらん♪

次なる部屋に続く ドアドアよん♪」


体当たりを仕掛けて来る 蛾の猛攻を なんとか かわしながら

泣き叫ぶように叫ぶ

「どこ!!!!」


「ここだったり♪」


「小人さん達 それ 小人さん専用で 60cmか70cmサイズだよね・・」

半分泣きながら リアは言う


「ここかも♪」 床・・足元に なんとドアがある!


言われて 慌てて 

ぱかん!とドアを開けると・・そこには


「ぐおおお!」 ちょうど池のようなものがあり しかも

ワニが うなり声とともに 大きな口をあけて 待ってますが・・・?


まっ青になりながら バタン!とドアを閉める リア

「小人さ~~~ん」 泣き顔を見せながら リアは言う


「どこかしらん♪ どこかしらん♪」歌いながら踊っている小人さん達の集団


「ねえ 美人で可愛い小人さん達 お、お願い!!」


「どうしようかしらん♪」小人の少女達(アイドル?)は笑う 


「うふん、 上だったり♪ 天井よん♪」

なんと、天井にドアがある!


「空を飛ぶ浮遊の呪文か 緊急用魔法のホウキを召還して・・いや!

巨大な蛾さんに手伝ってもらおう!」


蛾の背中にジャンプして飛び移り 更にもう一匹の蛾の背中に 今度は飛び移る

天井近くまで来て ドアを開き 端に捕まりながら 中に入る


そこは上へ続く 階段があった

「ふう・・」とため息をつく リア 


「安心するのは まだ早いぞな!」 しゃがれた低い声に 振り返ると 

巨大な骸骨の頭が一つ 宙に浮かんでいた

「きやあああ!」悲鳴をあげるリア


骸骨の口から 噴出したもの 冷たい風 

素早くよけたが 風のあたった場所は 氷で覆われている


「こ、こ、氷の魔法かよ!」泣き叫ぶリア


柱の影に隠れて わたわたと呪文を唱える

「焔の竜の王  伝説の王国の主

赤と金に彩られた炎の竜 アーシュランよ 焔よ その偉大なる力を ここに示せ!」


焔が空中に浮かび  竜の形を取る そして竜は炎を勢いよく 吐き出し

巨大骸骨を撃退した


役目が済むと 竜は 再び焔となり 円を描いて 小さな炎となり 消えた去った。


一番上の階に辿りつき 大きな灯篭に 魔法で明かりを燈す


リアは ここで大きなため息を一つ

「やれやれ・・まったく しかし

なんとか無事に済んだ」


「ええと・・帰りは 特訓というか 仕掛けはなかったよな・・」 


ため息をついて 下へ降りる

らせん階段へと向かい 勢いよく階段を駆け下りてゆく・・


「お帰り!リア!」「リアたん!」


リアは無事にナジュナジュ達と合流した・・・。



町のすぐそばには 大きな湖 


後は その湖の中の橋に明かりを燈すだけ・・・


そう・・・湖の中の小島があって 橋が架けられてる 


その小島 には ギリシャ風 の小さな建物と公園がある

町の住人の憩いの場所・・


先程までは 噴水の心地よい音と・・・

小鳥のさえずりが聞こえていた・・。


橋は空中に浮いており 曲線を描きながら

湖の小島に つながっている


橋は オパールで出来ていて 

オパールという石は 半透明で 光の加減で きらきらと・・虹色に輝く


特に今は月の光を浴びて とても綺麗だった 


その橋に小さな灯が沢山ついていて その灯にも 残らず明かりを燈してゆく

明かりがオパールの光の屈折させて さらに微妙な虹の色の輝きを増す


「綺麗・・」ナジュナジュ  「きれいでちゅね」アシャシャ


「本当だね」とリア


「なんとか無事に済んだね  晩御飯にしようか?」 とナジュナジュ

「ご飯!ご飯!」とアシャアシャ 


ニンジン キノコ などをみじん切りにして 細かくしたもの 

ミニオムレツや炊き込みご飯のおにぎり・・


それから ハムやレタスにチキンなどの

ボリュームたっぷりのサンドイッチに キッシュ 

野菜や豆を入れたミートローフに ミートパイ


ポットに入れたお茶2種類 紅茶と緑茶に 

炭酸入りのジュース  他にも黒スグリやブラッドオレンジのジュース

 

魔法瓶の小さなポットがもう一つ 白身魚やアサリなどが入ったポタージュスープ


「わー!ナジュナジュが全部作ってくれたの!」リア

「凄すぎ!!」瞳を煌かせる


「まあね えへへ・・」とほんのり、頬が紅くなり明るく笑うナジュナジュ


大きな湖のすぐそばの公園のベンチで 三人はパクパクとご飯を食べる

ナジュナジュの青い瞳が リアの顔を覗き込む


「どう?美味しい?」 なんだか心配そう


「うん!すごく美味しい!」と・・リア 


「よかった!!」ほっとした顔をするナジュナジュ


「キャンデー食べゆ?」とアシャシャ  

アシャシャは 小さなポーチを手首にかけて ポーチから キャンデイを取り出す


「あ・・例のキャンデイだね いただくよ 有難う」 とちょっと苦笑いのリア

「う、うまい」何気に涙ぐむ


「にいたんも 」アシャシャ


「はいはい 有難うね アシャシャ 」ナジュナジュ


キャンデイを口の中でもごもごさせながら

バックの中の荷物を整理しているリア

そして バックの中から何冊かの本が落ちて


それをひょいと 拾うナジュナジュ


 「リア 魔法の勉強の本 もってきてたの?」ナジュナジュ


「うん なかなか勉強が進まなくて 先生からの宿題もあってさ」


本を手渡すナジュナジュ さらりと 夜の風に 長いナジュナジュの黒髪が揺れる

ぴくんと ナジュナジュの黒猫の耳が微妙に無意識に動く

半分伏せた青い瞳  月の明かりを浴びる ナジュナジュ


その妙なる美しさに

どきん!とするリア


「アシャシャも本を見ゆう~」とアシャシャ


「ええっと・・魔法の呪文がかかれてるけど・・僕らが読んでもいいの?」とナジュナジュ


「声に出さなければね

それに 仮に声に出したとしても

魔法資質のあるネコは5匹に一匹で 魔法資質がない限りは 効果はないから

心配ないよ」リア


「じゃあ リアは5匹の中の一人なんだ すごい」


「えへへ」


だが・・もう一人(匹) 

実は 千匹に一人(匹)の大魔法資質のある猫がいたのだ


それはアシャシャ


アシャシャは たどたどしく本の呪文を唱える 


す・る・と・・

ポーチの中のキャンデイが 脹らみ 

どんどんと ふくらみ


そして 沢山のキャンデイが 巨大な風船のように 空へと上がってゆく

ぐんぐんと上昇してゆく


「いやああ! アシャシャのキャンデイ!」


沢山の風船のようなキャンデイ

その中の一個

キャンデイの包み紙の一部につかまり 飛んでいこうとするキャンデイを

捕らえるが 逆に いっしょに空へと舞がったのでした。 


「アシャシャ!」ナジュナジュは叫ぶ


「にいたん!! にいたん!」 泣き出すアシャシャ


リアは 携帯用の魔法のほうきを取り出した 

それは ペン入れの中の鉛筆といっしょに入っていており

つまり 普段は鉛筆サイズなのだ・・。 


その鉛筆サイズのほうきに呪文を唱える


「多くの神々に愛されし美しき者 

漆黒の髪とサファイアの瞳を持つナジュサナ

その妹の闇と雷の女神アーシャ 我に力を貸したまえ!」


ほうきを 普通サイズに戻すと 

リアは ほうきに乗り アシャシャを追いかける

「ようし!行けえ!」

ビューン! 


ぐるぐる廻り 旋回する

「待ってて アシャシャを助けてくるから!」


「よっ!この!」風船モードのキャンデイに捕まるアシャシャ

アシャシャを捕まえそうになりながらも

するりと風に揺られて 捕まえ損ねる

「く!」


「ひやん」風に揺らめくアシャシャ


「きや~ん!リアたん!!」涙を流しながらリアを見るアシャシャ


ふとリアはある考えが浮かぶ

(魔法資質のある猫人が 魔法の呪文を唱えると  魔法が使える! 

つまり あしゃしゃも 魔法資質があるわけだ


・・となると キャンデイがあんなに沢山増殖したのは 

あしゃしゃの魔法資質が 僕の魔法に増強したんだな!)


魔法のほうきに乗り 風船のようになったキャンデイに

摑まって空高く舞い上がった アシャシャを見ながら呟くリア


「にいたん! リアたん!」 泣きながら二人の名前を呼ぶ アシャシャ


風だけでなく

他の風船キャンデイに邪魔されて なかなか 

アシャシャの掴まっているキャンデイ風船には

追いつかない


「くそお!」 右に左にと 他の風船をよけながら 

魔法のホウキに乗って旋回するリア


「リア!アシャシャ!」 心配そうなナジュナジュ  


「アシャシャ!」 


ずるりと 掴まっていた風船キャンデイから手を離してしまった アシャシャ


「きゃああ!」悲鳴をあげる アシャシャ


落ちかけた アシャシャをキャッチしたものの 

バランスを崩して 魔法のホウキから落ちる


「うあああっ!」 「 きやああ!」


ひゅるるる~ とアシャシャを抱きしめて、空から落ちながら 

リアは魔法の呪文を唱える


「ナジュナジュ! アシャシャを受け取ってくれ!」大声で叫ぶ


アシャシャまでの小さなサイズなら 

リアでも空間移動の魔法の呪文を唱えることが出来る


「白き王たるリアンよ!

その友たる 夜の海に浮かぶ女戦士たるケンタウロス

獅子の名を持つレグルス

光の力をもって この少女アシャシャをナジュナジュのもとへ飛ばしたまえ!」


ナジュナジュの目の前まで  そう・・そのすぐそばまで

アシャシャを空間移動させて 飛ばした


ポンと 何もない空間 ナジュナジュの前にアシャシャが突然 現れる! 


「アシャシャ!」 現れたアシャシャを

ナジュナジュは受け止めた


そして・・

そして リアは


だばあーん!! 大きな音をたてて 湖の水の中に落ちた


「リアー!」アシャシャを抱きしめて ナジュナジュが悲鳴をあげた!


くしゅん! 

「完全に風邪をひいたようだ・・・。」と憮然とした表情で 

魔法使いのアリステア先生はリアに告げた


「・・・・・9日間の分は 風邪が完治するまで お休みでいいそうだ・・。」アリステア先生


「それから・・今回は止めておくのを忘れたらしいが・・

塔の特訓用の仕掛けはちゃんと止めておく・・と町長が言っていた・・。」

ぽっつんと追加でアリステア先生


心の中で 鏡の中のナジュナジュを思い出して 

ちょっと残念に思うリアがいた・・。


それから・・こちらは 現実のナジュナジュ・・・

「ごめんね!ごめんね!」と泣きながら言うナジュナジュ


「ナジュナジュ君は 

リア お前が完治するまでは 看病してくれるそうだ

よかったな リア・・」


にやあ~んと笑う 魔法使いの先生


「こんな美人で可愛い子(男の子だけど・・)が

そばについてくれて なんて幸運なんだ」アリステア先生


「ああ・・泣かなくていいぞナジュナジュくん リアは大丈夫だから・・」


そう言うとさり気に 

ナジュナジュの頬にキスをする 魔法使いのアリステア先生


「え?」と驚くナジュナジュ  


思わず 嫉妬から 軽く先生をにらむリア

(美人には すぐに手を出すんだから この師匠は・・) 


「そうそう・・アシャシャちゃんは しばらく通いになるが 

魔法使いの弟子になってもらうことになった

なにせ これだけの魔法資質

預かってもいいが まだ小さいから・・」

アシャシャを見ながら アリステア先生


そばでニコニコと笑っている アシャシャ


「当分は私たちで教えることになるが しばらくしたら 

お前同様に 三年間 都の魔法使い学校に通わせるといいのだが・・」


「試験も難しい上に 金がかかるから・・」ため息ひとつ 

まあ 奨学金制度もあることだし 

これだけの魔法資質 生かさねばもったいない」


こほんと軽く咳をして 先生は それから


「じゃあ ミント入りのまたたび茶でも 入れてくるから・・

あ・・リアには特製の激苦の風邪薬・・蜂蜜は なし」

ニッ笑って くるりと銀色の髪と尻尾をなびかせて 

席をはずす アリステア先生 


バタンとドアを閉った


すぐ傍で

まだリアのことを心配して 涙ぐんでるナジュナジュを見ながら

リアは微笑んで言う


「もう ナジュナジュ 大丈夫だってば!」


「今度 元気になって 9日間の義務が済んだら そうだね・・

皆で 飛行用の大きな鳥をレンタルして 

向こうの北の国の森にりんご狩りに行こうか?」


「それとも東の海を見に行こうか? 南の砂漠も楽しそうだよ

きっととても楽しいと思う・・ ね!ナジュナジュ」と はしゃぐリア


そして リアはこっそり 

心の中で思う・・もちろん先生(恋のライバル?)には内緒で・・


こくり・・とうなずくナジュナジュ


窓辺からは 大きな木が見える 木の葉がパラパラと降ってくる


「冬には 冬至祭り 雪の花が降るね・・・」とナジュナジュが呟く


空を見上げながら リアは 毎年の雪の情景を想い浮かべる

白い雪景色に染まった綺麗な街


街中に 色彩鮮やかな飾りの丸い明かりを飾り付けられ


街のおもな4箇所かの市場には

屋台がずらり・・


祭りの屋台の暖かなブドウのジュース

(大人用にはグリューワインから作ったホットワイン)


クマの形の柔らかいグミのハチミツキャンデイやら 

魔法使いの杖の形の巨大なキャンデイ

ジンジャーブレットの人型クッキーなどなどのキャンデイ専門の屋台


そうだ・・

怪しげな占いの店 


南の砂漠から来たという 

不思議な御婆さんは また今年も来るのかな?

時々変身して 若い綺麗な女性に化けてたっけ・・


黒い猫耳に 波打つような黒髪を整え 妖艶な瞳で微笑んだ

身体にぴったりとフィットする素晴らしい曲線の身体

大きく豊かな胸


しかし普段は 老婆の姿も見せる


どっちが本当の姿だろうか?


本人は どちらも同じく自分の姿だと言ったが?


リアは 何気に考え込む


まあ、いいか・・・大事なのは

僕の目の前の 綺麗なナジュナジュ


青いサファイアの瞳が 包み込むような笑顔で

こちらを見てる・・。


「そうだね ナジュナジュ 冬至祭りも楽しみだ」

心の中で それも楽しそうだとリアは思った。


「僕がご馳走作るよ そうだね メインの食事は鳥でしょう?

肉を巻いて焼いたもの

マッシュのジャガイモの付け合せに ミニトマトにきゅうり

グラタンもいいね!


異国のジャパンのお豆腐を使って 豆腐サラダもいいかも・・

中華風の卵焼き飯も作るよ!


スープは ジャガイモとコーンのクルームスープに

コンソメ


お菓子は

シュートレインにクリスマスプテングに

ホワイトクリームやバタークリームのケーキに

陶器の丸球に入れたシナモン・シュー

ジンジャーブレッド 黒すぐりのジュースとか・・」

微笑む ナジュナジュ


「手伝うもん」明るく笑うアシャシャ 


「そして春には アーモンドの花か桜を見ようよ・・

みんなで一緒ならきっと楽しいよナジュナジュ」リアは笑う・・


「じゃあ お花見用のお弁当もまかせて!」にっこりと笑うナジュナジュ


「何が いいかな? ジャパン(日本)風のおにぎり!それから たこさんウインナーとか・・

大豆の味噌スープ(味噌汁)!」


「そうそう! 緑茶も水筒に入れて持ってゆこう」本当に うきうきと楽しそうに笑うナジュナジュ


「それも手伝うもん!」アシャシャ 嬉しそうに笑う


ナジュナジュやアシャシャは リアを見て 嬉しそうに微笑んだ



FIN


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