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目立たない僕と華やかな彼女  作者: くろすく
7/10

花園さんと僕が馴染むまで 6


本当は10くらいで終わると思ってたんですけど…このままじゃ終わらない感じがビシビシしますね!





「とりあえず神谷くんをなんとかしないことには花園さんが危ないと思うんだよ」


さっきまでのゆったりとした空気は既になく、真剣な表情でイスに座りテーブルを挟んで向かい合う僕ら。


「とは言ってもなあ、具体的にどうしようって? あいにくだけど、ちょっとした証拠じゃあ警察は動いてくんねえよ?」


「それくらいは僕だってわかってるよ。だからどうしようかなって思ってるところ」


まあ、実際のところどうしようかは大体は考えているけど。でもこの方法だと面倒な借りを作っちゃうんだよなあ……。

できればやりたくはないけど、僕のプライドと花園さんの安全を天秤にかけたら傾くのは圧倒的に後者なわけで。


「はなちゃんにはもう彼氏がいるってことで代役をたてるのは? わりと手っ取り早いと思うけど」


「それが通用すれば良いのだけど……」


「一応僕は反対に一票」

「俺も」


「どうして? うまくいけば簡単に解決できると思ったんだけど」


坂井さんの案も悪くはない。相手が普通に花園さんの好みでなく真っ当な人間であるならば。こう言う言い方だと神谷くんが真っ当じゃない感じしちゃうけど。


「無理に刺激すると最悪の場合、花園が危険だ。よくて相手役がダウン、悪くて両方ダウンプラス花園は監禁みたいなルートになりかねない」


「いやいや、流石にそこまでじゃないと思うけど……陰湿な何かが始まるのは確かだろうね」


僕らの反対意見に坂井さんはぐうと唸って黙る。坂井さんの案は悪くないんだからね?


「花園さんよりも気になる人ができたら……ってそんなうまい話はないか」


「……だな。そんな簡単にいったらこんな話し合いしないでほっといて終了だわ」


特にいい案が浮かぶわけでもなく、黙り込んでしまう僕ら。けど坂井さんの案を採用するのは悪くないと思う。噂されても特に気にすることなく、喧嘩をふっかけられても問題のない人に心当たりはある。あるけど……。


「噂を気にしないで、嫌がらせにも強ければ代役が務まるんだよね、一応」


「どうしたよつかっちゃん。まあ、そうだけどよ」


ぼそりと呟くように、けれどみんなに聞こえるように発言した僕に注目が集まる。


「花園さんが良ければ、だけどさ…」


僕は花園さんに目を向ける。彼女は、これから僕がこれから言おうとしていることを正しく察したみたいだ。偶然だけど、僕がイライラしたのを見てたり、出会いも衝撃的だったりしたし。


本当は僕のいとこを使って神谷くんの情報を洗いざらい出してもらおうと思ったんだけどね、そんなことしなくてもラクに事態が抑えられる方法があるんだからそっちを使いたい。


「僕が、花園さんの彼氏の代わりになるよ」


前に妹の彼氏の代わりをやったこともあるし、多分なんとかなるんじゃないかと思う。その時も今回と似たような状態だったし。


「でも、そんなことしたら戸塚くんが……」


「それは多分大丈夫だと思うよ?」


「え?」


「変装するから」


こればっかりは言葉で説明するよりも実際に見てもらった方がいい。百聞は一見にしかずってやつだ。


「ちょっと待っててね」


そう言って僕はみんなを置いて洗面台に。

伸ばしっぱなしの癖っ毛をワックスを使ってきちんと整えて、眼鏡を外してコンタクトを入れて終了なんだけどね。


僕が変装(?)を終えてみんなのいるリビングに戻ると、みんながおかしな顔をしている。やっぱりこれ、結構効果あるんだ。妹の言う通りだな。


「つ、つかっちゃん?」


「いやあ、変わるもんだなあ」


「…っ!」


三者三様。坂井さんは驚きを隠せないかのようにこちらを指差して口を開け、基くんは感心しているかのように上から下までを行ったり来たり、花園さんは顔を少しだけ赤くしてこちらを見つめている。


「これ、妹考案の変装なんだけど結構効くんだよね。あとはいつもと違うちゃんとしたよそ行き用の服を着れば僕だってバレないと思うんだよね」


ついでに名前もちょろっと変えておけば僕としては絶対にバレない変装の完成だよ、と言うと確かにそうだとばかりに頷かれる。


「そういえば俺結構長いこと一緒にいるつもりなんだけどつかっちゃんの妹見たことないんだよな」


「私も話には聞いたことあるけど…」


基くんと坂井さんには悪いけど、これからも多分会わないと思うな。忙しいだろうし。でもまあ見たことくらいはあると思うよ?


僕はテーブルに置いてある雑誌を取って表紙を見せる。表紙には高校生くらいの女の子が写っている。


「この子だよ」


この前妹から雑誌の表紙やることになったから買って感想送ってって言われたから一応買ったんだけど…正直、若い女の子向けだから大学生の男が買うのは恥ずかしかった。


「この子って……モデルのshinoだよね?え? だって…え?」


「坂井さんそんな目で見ないで。妄想でもなんでもないから。一応その子僕の妹。義理だから妹っていうか義妹だけどそう言うと怒るんだよね」


特に僕が高校生の頃はめっちゃ言われたなあ。ずっと一緒にいるんだから今さら義妹なんておかしいって。


「義理って?親が再婚でもしたのか?」


「基くんは普通の人だったら気まずくて聞けないことでも聞いてくるよね」


「あ、わり。言いたくなきゃ別に良いぜ?」


「いや、素直に感心しただけ。別に言いづらいことでもないし。僕の両親は交通事故で死んじゃって、たまたま母さんと仲の良かった友達の家に引き取られたってだけ」


当時は結構意味わかんなかったんだよね。血の繋がりもない赤の他人をなんで引き取って育てようだなんて思うのか。

しかも幼児とかじゃなくて既に人格が出来上がりつつある小学生をだよ。だからなおさら信じられなかったよ。

ま、事実は義母が本当に面倒見が良くて、義父がお金持ちで良い人だったってだけなんだよね。


僕のさらっと投下した爆弾が爆発してしんと静かになる部屋。僕はもう気にしてないんだけど、こんな空気になるのが普通だよね…。


「あの、僕はもう気にしてないからこんな空気になるのってちょっと…」


「予想外に重い話だったからちょっと黙っちったわ、すまん。それで、こんな可愛い子と一緒に暮らしてたのになんで一人暮らしなんかしようと思ったんだよ?」


「あ、確かに」


「居心地が悪かった…っていうわけじゃないんだけどね、むしろ良かったっていうか逆に構われるっていうか…」


家にいた頃の…といってもそんなに昔のことではないけれど、思い出すと…なんか疲れるなぁ。


「単純に、一人暮らしってなんか憧れたからかな? 家具とか全部自分の趣味で色々できるし、いくら遅く起きてても怒られないし」


「あ、案外普通なんだ」


「むしろどんな理由だと思ったの?」


「実は家が息苦しかったとか?」


「うーん………それはないかな。って、別に僕の家族情報はもう良いでしょ」


そろそろ面倒になってきたので話を切る。そもそも今大事なのは僕より花園さん。僕の話はまた今度で良いよ。


「とりあえず僕…というか、変装した僕が花園さんと付き合ってるんじゃないかっていう噂を流せれば良いんだけど、なにかいい案ないかな?」


「そこはやっぱり、デートだろ」

「だね!」


「ええっ?!」


息を合わせて言う基くんと坂井さんに驚く花園さん。まあ僕も同じ案しかなかったけどね。


「遊園地とか水族館とかー…あ、映画でもいいし!それと普通にのんびり公園で散歩とか!」

「もちろん二人だけで手を繋いでな」



「お昼はカフェでランチが理想!」

「できるだけ大通りで人がいるところでな」



「夕方になったら、『どうする?帰る?』って聞いたりしながら実は帰りたくないって感じを醸し出して!」

「最終的にはつかっちゃんの家でのんびりがいいと思う」




と、そこまで話した二人を見たところで視線をスライドさせて花園さんを見ると顔が赤くなってもじもじしてた。

二人は当然わかってて言っているのでにやにやしている。


「じゃあ、デートコースは決まったからいつにしようか?」


なんだかいたずら心が芽生えてしまった僕はできるだけ爽やかに見えるように笑顔で花園さんに聞いてみる。


案を出した二人は採用されたのが意外だったのか驚いた顔を…ってなんでそんな顔してんのさ。


「…つぇっ?!で、デートな、いついつって…?!」


「僕と、花園さんのデートの日にちだよ。今日はもう無理だけど…早速明日にしてみる?一応日曜日で休みだし」


思い立ったが吉日っていうから今からっていうのは流石に時間が遅いし…夜ご飯とかだったらいいのかな?


「ああ、とりあえずこの格好してるから外でご飯でも食べようか? 一応、僕のいとこの家がやってる店があるし」


コンタクトもしてるし髪もセットしてるからちょうど良いや。


「え、そんなのあったのか?知らなかったな」


「まあね。ていうか、知り合いが近くにいないと一人暮らしを許可されてないっていうか……無駄に過保護なんだよね、母さん。父さんは意外と放任っていうか任せてくれるんだけど」


言いつつ僕はいとこに連絡する。一応連絡しとかないとあいつ怒るからなあ。嫌われてるっていうわけじゃなくて、久しぶりに会えるんだから話ぐらいさせろよって感じで。


なんだったら一人暮らしなんてしないで家に下宿でもなんでもすれば良かったろって未だに言われるけど、流石にいきなり行くのもおかしいって思うんだよね。


「それで、どうかな花園さん? 嫌だったらまあ適当にまた作るけど…」


「ううん、大丈夫よ。でも……なんか、緊張するわ」


「そんな堅苦しいような店じゃないから平気だよ」


と笑う。


そこまで話を進めたところで僕は花園さんの格好に目がいった。

僕のシャツにスウェットといった大きめの服を着ている彼女はそれだけでとても可愛いのだけど…。


「…一回、家に着替えに帰った方がいいかな? それとも家にある妹の服でも着ておく?たまに来るからあるけど……」


「そうね……ううん、一回帰ることにするわ。勝手に着てしまうのも悪いし」


そんなに気にしないと思うけど花園さんがそう思うんだったらそれでいいかな。

妹だったらこんな可愛い子は私の服なんかじゃなくてフルでコーデすべき!!とか言って服を買いに行きそうだ。


「二人はどうする? 一緒に行く? それとも帰る?」


ここまで僕らのやりとりを黙って見ていた二人だけど、僕の誘いに二人は首を振った。


「いんや、今日は帰っとくわ。色々やることもできたし」


「私も帰るよ。もとくんにご飯作んなきゃだし」


「そっか、じゃあ昨日と同じ感じかな」


基くんと坂井さんを車で送ってから花園さんの家のところまで行くってことで。




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