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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

三匹の子豚 another story

作者: 天邪鬼



初投稿です。拙い文章などあると思いますが、それでも言い方は、本編をどうぞ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 狼には、友達がいない。いつも一人。今日もひとり森で暮らしている。

 狼の住む森には、誰も住んではいない。狼を怖がって、みんな離れてしまった。人間の村に行ったこともあったが、みんな怖がって話すらせず、銃で撃たれた。そして、命からがらにげてきたのだ。あれから、もう人間の村には、近づかないと決めた。

 狼は一度も、生き物を襲ったことはない。でも、狼が狼である以上、怖がられてしまうもの。


「今日も僕は一人。わかってたけどさ。」


 しかし、今日からは一人じゃない。今日、三匹の子豚の兄弟が引っ越してきたのだ。狼はただ友達が欲しかった。子豚さんならきっと.........。


 一人、狼は森を歩く。子豚の家を目指して歩く。いつも見ているはずの森が今日は新しく見えた。

 大樹の元をこえ、洞穴の横を抜けた先は、子豚の兄弟の住み始めた家の建った場所。


 藁、木、でできた家が立っている。真ん中の子と、末っ子の子豚が住んでいる。兄の子豚は、少し遠くに住んでいるらしい。


「こんにちわ~~。」

 狼は挨拶を藁の家にむかって、声をかける。少しした後、ドアが開き子豚が顔を見せる。


「こ、こんにちわ。あなたが狼さんですか。思ったより優しい人で良かった。」

「僕のことを知ってるの?」


 正直、驚いた。ここに住んでいると知っていながら、ここに来る人なんて初めてだった。


「そりゃそうですよ。ここに住むって言ったら何度反対されたことか。」

「君も、僕が怖い?」

「いえ、あなたを私が怖がることはないでしょう。こんなに、優しそうな狼なのに。」

「な、なら!!。友達になってくれないかな?」

「もちろんです。私の兄たちを紹介しましょう。」


 末っ子の子豚は、隣に住んでいる子豚も紹介してくれた。真ん中の子豚は、狼を怖がっているようだったが、一度も生き物を襲ったことがないことを話すと、直ぐに仲良くしてくれた。

ちなみに、末っ子の豚の名前は、ピッグ。真ん中の豚は、ホッグ。というらしい。


 そして、狼と子豚二人は、毎日遊んだ。狼には、初めて友達ができた。


 ##############################################


「ボア兄さん、狼さんはやっぱり悪い奴なんかじゃなかったよ。」


「いや信じられないね。きっと今も、お前たちをいつ襲うか考えているに違いないね。だからもう、狼なんかと関わるな。」


 ここは、煉瓦の家。ピッグとホッグは、長男の子豚ボアのもとに遊びに来たところだ。


「どうしてなの?どうしてみんな狼さんを怖がっているの?あんなにいい人なのに。ただ、友達が欲しいだけなのに。」

「お前は騙されているんだ。あの狼は、一度人間の村を襲ったそうじゃないか。」

「違う!それは、人間が勝手に早とちりしただけだ。」

「どうかな。とにかく俺は、狼なんて信じられない。」


 その一言を聞いて、二人の子豚は煉瓦の家を出て行ってしまった。

「これも、お前たちのためなんだ。悪く思わないでくれよ。」


##############################################


 次の日。

 狼は朝の日課になっている森の見回りをしていた。そして、見てしまったのだ。二人の猟師が森に入っていくのを。

 狼は走った。ピッグとホッグに伝えなくちゃ。全力で走った。

 そして、子豚の家に着いたときすべては終わっていた。藁と木の家は、まるで息で吹き飛ばされているかのように、こわれていて猟師の右手には、二人の子豚の死体が。

 頭を撃たれて死んでいた。


「お前が噂の狼か。いや~あの豚ここに、豚と狼がいることをおしえてくれてよかったぜ。」

「ホントそうだよな。弟たちを売るなんて、ひどいことするよな。一応、依頼だし狼も殺っとこうぜ。」

 猟師たちはケラケラ笑っている。


 その瞬間、狼は動き出した。


 ..................復讐するために。

 

 狼は一瞬で近づき、猟師に首筋にかみつき、嚙み切った。ブシャっという音ともに、生暖かい液体が、狼を赤く染める。


「あ、ああああ。は、話が違うじゃねえか。狼は襲ってこないって言ってたのに。あの子豚絶対に殺してやる。」

 そういって、猟師の一人は逃げてしまった。

 追いかけようとも思ったが、また殺してしまうと思い、やめた。


 そんなことより、子豚たちだ。急いで子豚のもとに行ったがすでに息はなく、冷たくなっていた。


「ごめんね。僕とかかわったばかりに、君たちをこんな目にあわせてしまって、ほんとに、ごめんね。」


 狼は泣いていた。あふれるばかりの涙は、土を濡らし色を変える。

 狼は、森の中の少し広い広場になっているところに二人のお墓を作った。この広場でも、ピッグやホッグとよく遊んだ。


「大丈夫。君たちのお兄さんは守って見せるから。」

 

 狼は、お墓に一度手を合わせ、背を向けつぶやく。

 狼は、猟師の一言を忘れてはいなかった。


 ”あの子豚絶対殺してやる”


 何とかして守らなくちゃ。今度こそ守らなくちゃ。

 使命感にかられ、狼は駆け出した。


 煉瓦の家はとくに、何も変わりなかった。


「豚さん、開けておくれ。たのむ。あけてくれ。」

「お前が、俺の弟たちを。絶対ゆるさん。」


 家の中から聞こえたのは、以外な回答だった。


「何を言っているんだ?ピッグ達は、あの猟師に殺されたんだ。」

「嘘だ。おれは噂で聞いたんだ。お前が、弟たちを食べているときに、猟師がやってきて猟師の一人も食べられてしまった。って。」

「違う!!。僕はそんなことしてない!!」


 あの猟師だ。あいつがこんなデマを。あいつどこまで、僕から奪うんだ。


「ほんとだ。信じてくれ。次のターゲットは君だ。頼む。この扉を開けてくれ。僕に君を守らせてくれ。」

「俺はお前なんて信じないぞ。」


 その時、鳴り響くズドンという音――銃声だ。いつの間にか背後に立っていた猟師が、狼を撃った。

 幸い、即死は免れたが、狼は倒れてしまう。


「豚さん、狼なら殺しましたよ。安心してください。俺はあなたの味方です。」

 憎たらしい声が響く。

「やはり、あなたを信じてよかった。」

 ガチャという音をたて、扉があく。中に猟師が入り、子豚がお礼を言っている。


「ほんとに、ありがとうございます。生きた心地がしませんでしたよ。お礼は、私にできることならなんでもします。」


「そうか。..................なら死んでくれ。」


 猟師が銃を向ける。それと同時に飛び出た灰色の影。もう一度ズドンという音をたて、銃が火を噴く。

 灰色の影―――狼は、銃撃を受け、血が飛び散る。それでも倒れず、猟師に飛びつき、首筋をかみ切る。

 紅い血があたりに散らばり、猟師は死んだ。


 狼も倒れた。


「どうして、俺なんかを庇って。俺はお前を信じなかったのに。俺はお前を殺してほしいと依頼したのに。」

 ボアは泣いている。顔をグシャグシャにして、ボロボロ泣きわめいている。


「ピッグとホッグが守ってくれって言ってる気がした。僕の初めての友達だったから。言うことを聞きたくて。」

 

 狼には、分かっていた。もう自分は助からないことを。


「ねえ。最後にお願いをしてもいい?」

「なに?なんでも聞いてあげるから。」



 「..................僕と友達になってくれませんか?」

 「もちろん。」


 狼は、その言葉を最後に、死んだ。ボアの返事は、届いたかはわからないが、きっと届いたと信じているボアだった。


##############################################


 森の中。

 一人の子豚が祈りをささげる。

 主を失った森には、新しい主が住んでいた。

 

 新しい主は、毎日欠かさず三つの墓に祈りをささげた。


「みんな、元気にしてるかな?」


 

 完


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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― 新着の感想 ―
[良い点] 歴史の闇に葬られた部分、事実を捻じ曲げて伝えられた話―そういったテーマが、広く知られている童話の中に当てはめられています。世間で狼が悪者扱いされるのも、『人間が歪めた結果』だと考えれば納得…
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