第三章のあらすじ
☆第三章 裁きと呪い
ファルシードの胸に証があるという事実に、リディアは困惑していた。
証は“血縁で受け継がれるもの”とされてきて、証を持つ者は皆ネラ教会に管理されているはずだからだ。
リディアはファルシードを問い詰めるが、毎度はぐらかされて真相にたどり着けずにいた。
本人に聞くのは無理だと悟ったリディアは、わけ知り顔なカルロに声をかける。
カルロはまず、自身の過去について語る。
学者である彼の父は『ネラの標』(ネラが生まれて以降千年の歴史が古代文字で書かれている書物)の研究を、隠れてしていたようだ。
だが、古代文字や歴史の研究は教会によって禁じられていたため、カルロの父は密告されてしまう。
裁判にかけられることもなく、エドガー司祭の手によりカルロの一家は銃殺されることとなった。
カルロも磔の刑に処されたのだが、通りかかったファルシードにより救出される。
闇が辺りを包み込み、カルロとファルシード以外が気絶したため、ファルシードが証の力を使ったのだろうと、カルロは推察していた。
また、カルロとの話から、二人以外にもフライハイトはわけあり者が多いことをリディアは知ることとなる。
バドは大貴族の息子で軟禁状態のまま教育を詰め込まれ、傀儡のように扱われていた。
ケヴィンの母親は、祈りの巫女に文字を教えようとしたのち、不審な転落死。
航海士レヴィも、ネラ教会の海図に嘘があることを不審に思っていた。
仲間たちは皆、ネラ教会の枠をはみ出してしまった者たちばかりだったのだ。
その夜、ファルシードの“裁きの証”とリディアの胸にある“風の証”が突如として共鳴する。
そして、リディアは過去の世界へと飛ばされることとなった。
飛ばされた先はリジム島。
そこは幼いファルシードとノクスがおり、古代言語と精霊信仰が残る島だった。
だが、ネラ教を信じぬ“異端は悪”であり“悪を切り捨て、力ある者が世界を治めなければ、世は保てない”というネラ教会トップの考えから、リジム島は襲撃を受けてしまう。
ファルシードとノクスは偶然焼き討ちを免れ、ネラ教会にスパイとして潜り込んでいたレオンという男に助け出される。
襲撃を指示する教会の船には、若く地位のある神官カーティスがおり、燃える島を見て高らかに笑っていたのだった。
フライハイトの団長ライリーと副団長レオンとの誘いから、ファルシードとノクスもフライハイトに入団することとなる。
レオンは左胸に“裁きの証”を持っていたのだが、現在の持ち主ファルシードとは似ても似つかず、彼らは血縁ではないようだった。
幼かったファルシードもやがて、青年へと成長していく。
ある日、彼らのもとにネラ教会の船が現れ『レオンを引き渡せ』との命令が下される。
裁きの証は寿命を食らい、宿主は長くても十年しか生きられない。
それを知っていたレオンは、ライリーに裁きの証を頼むと言い残し、ネラ教会の船へ一人向かった。
カーティスと対峙したレオンは証を渡さないために、裁きの証の力を使って自身を消滅させてしまう。
消えた証はライリーの目の前に現れたのだが、宿すことを恐れた彼は拒絶してしまい、裁きの証はファルシードの胸に宿ることになった。
目の前で見た過去の映像から、裁きの証は、血縁以外の方法で受け渡しが可能だとリディアは知ることとなる。
そこで過去は終わり、リディアは現在へと戻される。
すると、眠るファルシードが悪夢にうなされていた。
裁きの証は力の代償として、命を食らい、悪夢を見せてくるのだ。
リディアはファルシードの境遇と、気丈な彼の隠された弱さを知り、心を痛めたのだった。