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私に世界は救えません!  作者: 星影さき
第四章 リヒトの島の冒険
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レオンのこと

レオンが主人公のスピンオフ『空に散りゆく黒い花』

バドが主人公のスピンオフ『夏夕空に鳥は飛ぶ』

リディアとファルシードのほのぼのスピンオフ『私に世界は救えません~小さくなったキャプテン~』


こちらもよろしければどうぞ!

「あ、ええと、それは……」

 リディアは、もごもごと口ごもる。


「まさか、小僧が話したのか……?」

 ライリーは目を見開いていたが、リディアは首を横に振った。


「じつは……」


 それからリディアはゆっくりと時間をかけて、全てを伝えた。

 証が共鳴して、過去に飛ばされたこと。

 ネラ教会によって、リジム島が消されたこと。

 そして、レオンという男のことも。



「そうか。証の力は、人智を超えるんだな」

 話を聞き終えたライリーは、乾いた笑いを浮かべていた。

 どうやら、証の力に圧倒されてしまったようだ。


「私も(これ)をただの印だと思っていたんですけど、いろいろと秘密がありそうですね」

 リディアはそっと、左胸に触れて呟く。


 カルロは『千年前は全ての家系に、証があった』と話し『証を宿せば、魔法を使えていたようだ』と言っていた。


 千年前に『何か』があったことは明白であり、ネラ教会はその『何か』を隠そうとしている。

 それは恐らく、リディアの風の証やファルシードが持つ裁きの証に関係しているのだろう。



「証の秘密、それを知るのは相当に厳しいだろうなァ。敵が……デカ過ぎる」


 諦めたような表情でライリーは笑うが、酒瓶を握る手には血管と筋とが浮き出ており、彼の無念さを訴えかけてきた。

 寿命を奪う裁きの証をファルシードへ渡してしまったライリーもまた、証について知りたいと願う者の一人なのだ。



 あたりはしんと静まり返り、宴会をしている団員たちの笑い声が遠くから聞こえてくる。

 打つ手がない苦しみに、二人は言葉を見つけられないままだ。

 漂う空気はあまりにも重く、押し潰されてしまいそうだとリディアは思った。



「やっぱりレオンさんは、すごい人ですね」

 “急にどうしたのか”というような視線を向けて来るライリーに、リディアは困ったように微笑む。


「レオンさんは辛い宿命を背負っていたって嘆かないし、いつも明るくて優しくて。私は、レオンさんみたいに強くなれません」


 どうすれば彼のように強くなれるのかと話すと、ライリーは視線を落とし、首を横に降った。


「……いや。アイツはいつも運命に苦しみ、嘆きと憎しみの感情に包まれながら生きていた」


「え?」


「妻から証を受け継いで以来ずっとだ。アイツはネラ教会を恨み、裏を暴くことにひどく執着していて……狂っているように見えることもあった」


「狂って……?」

 とてもそうは見えなかったと、リディアは小さく息を飲む。

 


「だが、小僧を拾ったあたりから変わったんだ。アイツはよく笑うようになった」


 「きっと、大事なものを思い出したんだろう」と、優しく目を細めたライリーの横顔は、かつてレオンがよくしていた表情に似ていた。



「なァ、リディア。アイツは……苦しまずに逝けたか?」

 ライリーは微かに震える声で聞いてくる。

 恐らく彼はあの日、レオンを見捨てた形になってしまったことを、いまも悔いているのだろう。



「レオンさん、最期の瞬間にこう言っていました。“ありがとう。いい人生だった”って。そして、幸せそうに笑ってたんです」


 リディアは零れ落ちそうなほどの星空を眺めて微笑む。


「そうか……そうか……」

 リディアの隣でライリーは手で目元を覆い、大粒の涙を止めどなく溢していたのだった。

第六回ネット小説大賞の一次選考通過しました!

ありがとうございます!!

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