偉人と名言
設定の都合で主人公達の年齢を変更しました。
勝手をして申し訳ございませんm(__)m
僕が屋敷へ帰ったとき、地球では見たことのない植物が花を咲かせる庭で母さんとメイドのティナが水をやりながら僕の帰りを待っていた。
母さんは無事入学を果たした僕を見ると微笑みながら話しかける。
「お帰りなさいエディ、そして入学おめでとう。学校はどうだった? 」
「ただいま母さん、ありがとうございます! 友達もできました! 明日が楽しみなくらいです‼︎ 」
露骨な子供アピールをしてまでいないと母さんに甘えてしまいそうになる。
誰かにこの不安をぶつけたかったがそんな子供のような自分を人に見せたくなかった。
「……そうね、エディも今日は疲れたでしょうから部屋で休んでいなさい」
何かを察したのだろうか母さんは会話を打ち切った。
魔法で幾度となく吹き飛ばしては補修したボロボロの部屋の中、不貞腐れてベッドで寝転んでみた。
(トーマスだっけあいつ、機関車みたいな名前して何でこんなに気に触るんだよ)
そんなことを考えていると扉ををノックの音が聞こえる。
「入学そうそう喧嘩でもしましたか? 」
ティナに遠慮しろと言うのはもう飽きた。
「喧嘩じゃないよ、一方的に嫌いな奴ができただけ」
「……意外と器の小さい男ですねエディ様」
主人に向かって言う言葉ではないが、むしろそれが心地いい。
「そんなことよく知ってるだろ? 」
「昔からすぐに拗ねてましたからね」
「僕の足元にも及ばないくせに僕よりも凄いやつがいるんだよ」
「エディ様よりも凄いなんて私には分かりません」
「僕にはできないことをそいつはできるんだよ」
「.……よく分かりません」
「なぁティナ、ある有名な天才発明家が昔『天才は1%のひらめきと99%の努力』なんて言ったんだ、どう思う? 」
トーマス・エジソン、またトーマスだ。
「確かに心惹かれる名言ですね、でも私は100%の努力をしたのに何も残せなかった人だってたくさんいると思いますよ? その方は素晴らしい方ですがそれはあくまでその方のやり方です。結局のところ勝てばいいんですよ、勝てば官軍です。10%の努力でも勝てば99%の努力を否定できるんです」
暴論なのに、なぜか納得しそうになる。
「むちゃくちゃだな」
「でもそうでしょ?陽に当たるのはいつも勝者です。エディ様の嫌いな方が99%の努力をしたところで、メイドの尻を追いかけては気持ち悪い顔をしているエディ様が勝てば天才はエディ様です」
「ティナは僕のことをそんな風に思っていたのか」
否定はしないけど。
「でもありがとう、何だかいい気分だ、ズルでもチートでも99%の努力をしたあいつも僕からみたら取るに足りないんだ、5%の努力で否定してやる」
「凄まじいまでのクズですね……しかも10%も頑張らないのですか」
ティナに呆れられたがお返しにお尻をさわさわしてやると舌打ちをしながら部屋から出て行った。
言ったからには結果を残さなくてはならない、さっそく翌日御前試合のルールを詳しく聞くためサーフィアさんを訪ねてみる。
「言ったのは私だけど本当に出るのね……まぁいいわ、ルールよね」
じゃあ昨日なんで話しかけてきたんだ、本当に僕の事抱きしめたかっただけじゃないのか……
「大事なことは1つだけで相手を死に追いやることは禁止よ、王の前であるし私達は学生なのだから。それ以外は特にないわ、武器も持ち込み可だしなんなら飼いならした魔物を連れてきてもいいわ」
「武器もいいのですか? 」
「えぇ、でも魔法が有るのだからたいていの人は起動力を上げるための魔法をかけた魔導具が多いわね。例えば炎系の魔法が得意な人はブースターと呼ばれる噴射口をつけて魔法の爆風で移動する魔導具、風系の魔法が得意な人はウイングと呼ばれる羽を広げ風を使って空を飛ぶ魔導具、氷系の魔法が得意な人はボードと呼ばれる魔導具で凍らせた地面を高速で移動したりするの」
聞いてみれば関心するような使い方である、異世界人は魔法の原理よりも利用法に執着しているようだ。
理由は分からないが、この世界の魔法は命を持つものには作用させる事ができない、もしできたら人に向かって『心臓が潰れろ』と命じれば殺せてしまう。
よって魔法を使って戦闘を行う場合、命の宿っていないものから作ったエネルギーを人にぶつけることしかできない。
「相手を殺さなければ何をしてもよいのですね? 」
「もちろん死ななくとも今後の人生に影響するような状態にすることも禁止よ? 試合は今日から4ヶ月後よ申請は私がしておくね」
礼を言って帰ろとするとサーフィアさんが不服そうに見返りを求めてきたので、お礼に抱きついてやるとサーフィアさんはヨダレを垂らして喜んでいた、サーフィアさんはいい匂いがする。winwinの関係だ。
御前試合、正確に言うとビアス学園魔法祭に新入生が出るという噂は何故か広まっていた。
変態生徒会長の仕業だろうだが好都合だ、何もしなくても有名人になれて少しばかり鼻が高い。
「おいエディ‼︎ お前魔法祭の試合に出るんだって? 」
「凄いですね、確かにあの魔法は凄かったですが新入生で出場なんて初めてですよ」
教室に戻るとアラトとリョウが話しかけてきた。
「うん、生徒会長に誘われてね。どうせなら優勝してやるよ」
「大した自信だな、しそうだから何ともねぇよ」
「それはともかく出場するのなら魔導具はどうするんですか? あれがないとまともに動けませんよ」
「それなんだけどさ自分で作ろうと思うんだよ、面白い物ができそうだし。良かったら一緒にくる? 」
「マジかっ⁉︎ 」
「……いいんですか? 」
人の魔法を聴くことに躊躇った様子だがリョウも興味があったようだ。
この2人にはなんとなく、教えてもいいような気がした。
話を聞いていたのかトーマスがにこちらを見ていた。『もうお前なんて怖くないぞ』と睨み返してやるとトーマスは頬を染めて目を逸らした。
「おいエディ、お前生徒会長狙いじゃないのかよ、何男を落としてんだよ。」
……こんなやつに悩んでいた自分がバカみたいだ。
「トーマス……君も来る? 」
トーマスはもちろんアラトとリョウも驚いていた。
「……いいのか? 」
「全部は無理だけどな」
なぜか頬を染めているトーマスだったがきっと嬉しかったからだろう、きっとそうだ。
努力家のトーマスにもズル(チート)を教えてやろうと思っただけだ。