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最強魔導師だって嫉妬する  作者: rainydevil
帝国 カラシヤ奪還編
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心の箱

少しだけ短いですが書きたいことを詰め込みました。読んで貰えると嬉しいです。

「えっ? は? え、何? どゆこと? ……誰? 」


今が戦場だということを忘れてしまうほど頭の中が転がって揺れる。


「……まだ分からないの? 相変わらず最低ね、私よ、真央よ」


落ち着きを取り戻したのか、オリヴィエちゃんもとい【僕の姉】らしき岡町 真央が呆れた顔をした。僕の記憶が正しければ、よくこんな感じの表情で眉を顰めて溜息をついていた。

そのとき僕はその表情が酷く嫌いだったのも思い出した。



「……姉ちゃん? 」

「えぇそうよ、久しぶり」



……特別仲が良かった記憶なんてないが、ずっと会いたかった。

母さんでも父さんでもなく会いたかった。僕のことをどう思っていたのか、話したいことが沢山あった気がする。ティナでもサーフィアさんでも埋まらなかった何かが足りた気がして口がうまく動かない。


「あぅ……えっと、ぇ……その……ぅぇ」


口が動かない代わりに大きな涙がボロボロと溢れてきて顔についた煤を洗い流してくれる。


「……分かってくれた? ねぇだからさ、今度こそこんな醜くて怖い世界なんて見ないでハッピーエンドになってよ?

貴方の死んだ世界は何も変わらなかったよ? 全部今まで通りだった、私も母さんも父さんも、少し時間がかかっただけで何も変わらなかった。

でもずっと何かが突っかかっていた。貴方が何かをずっと訴えていたのは知ってたけど知らないふりをしてきて。でも自分で命を絶った訳じゃないから私達のせいじゃないって全部事故のせいした。

でもこの世界で楽しそうな貴方を見たら私達が間違っていた気がした、だから今度は私が罰を受けるからさ」


違う、そんなことはもうどうでもいいんだ、そんなことじゃない。僕は何もせずにずっと黙って、気づいて欲しいと思って怒っていただけだった。


「違う! ……違うんだよっ! そんなことしなくてしなくていいから僕を見て欲しいいんだ、認めて欲しかっただけなんだ、頑張ったねって言って欲しかっただけなんだ……だから今度こそ 」



僕が初めて生まれて物心がついたとき、心に箱を作ってみた。あんまり大きくはならなかったが、これからこの中に沢山詰め込むんだとワクワクもしていた。

それから少し経ってから僕はその箱に蓋をして鍵をかけた。もちろん中身を失くさないためだ。


でも実際中は空っぽだった。何処を探しても箱の中に納めてそのズッシリとした重さを安心できるものはなかったから、諦めて埃が被る前に棄ててしまおうと思った。


今度はおなじ失敗を繰り返さないために、生まれてすぐに箱を作った。今度は前よりも少しだけ大きかった。打って変わってあれもこれも失い難いもので箱がいっぱいになって、もうとても蓋なんて閉じることはできない。

両手で抱えないと持てない程重い箱に満足していると、どっかの誰かさんが棄てた筈の埃まみれの箱引っ張りだしてきた。


するとどうだ、空っぽの筈なのに振ってみると音がする。これはきっとあれだ、以前の僕が見向きもしなかった程に豆粒大の想いが開けてくれと叫んでいる。



涙はとまって何故だか怖くもない、むしろワクワクする。誰かに自分の勇姿を観せるのはこんなにも嬉しいものなのか。


僕達が話している間にずいぶんと叩かれて割れ目の入った氷結層アイスバリアを消して神輿から飛びだし見下ろす。


僕は自分がとても大事だし痛い思いは極力したくない、でも物事には全て例外が存在する、僕が言いたいことはつまりそうゆうことだ。



「悪いけど君達は死んでくれ、僕は僕の中にあるものは大事だけどそれ以外は結構ぞんざいに扱ってしまうタイプなんだ」


向けた掌の先に赤い円が次々と現れてそこから竜巻のような火柱が上がっては消えそれを繰り返す。

次々と味方が焼かれてパニックになって武器を棄てて逃げ出した者は放っておく。


高い空から見下ろしていると突然、風を切る音を立て氷の槍が僕の方に直進する。


「……えいっ」

しかし重力加速などはされていないようなので重力靴グラヴィティブーツで叩き折る。


「ワシはイスラ王国の固有ユニーク魔導師〝氷槍のエスムィール〟じゃぞ! 」


「あ、そう……」


名乗るも何も僕はまだユニークでもなんでもないので、お返しに先の2倍ほどの氷槍を作り加速を加えてエスムィなんとかさんにお返しする。


「むっ!? 返事をせんか無礼者!! ワシを誰だと思っている!? 」


「さっき聞いたよ、覚えてないけど。で? その程度がイスラ王国のユニーク級なの? 」

その程度でユニークなら精々今のアラト程度でしかない。


おじさんが額に青筋をたててさらに氷でできた槍を空の僕に飛ばすが空を飛ぶ物体を相手にしたことがないのだろう、勢いが足りていない。


見よう見まねで氷槍を創り、それを空一面に並べて矛先を地面に向ける。


「僕の名前はエディルトス・ディアマン、ゾンネ王国のシスコン魔導師だ。よかったら覚えて帰ってネ」


右手を伸ばして制御していた魔法を手首を曲げて解放する、それと共に支えを無くした槍達は重力に乗せられ、青い服を着た人の群れに向かって落ちた。





ーーーー


例えばどうしようもなく後悔したとして、そのときどうすればいいのか。

僕の場合はたいてい忘れようと努めるし、実際に忘れたフリは得意な方だ。そしてそのフリもさらに時間によってなかったことにできる。


失って困る物を無くしたことがないからだと思う。

でも承認要求というのはそんなに悪いことなんだろうか? これはダメなやつの槍玉によく挙げられる。


ある芸術家が認められたくて描いた作品はつまらないものだとか、僕はそう思わない。誰だって人間なんだ、誰かの為とか何かの為でないと自分の存在を自分で認めれなくなってしまう。



「ありがとう、私の2番目に大事なものを守ってくれて」

姉ちゃんが少し悲しそうな顔で僕に礼を言う、帝国軍は自分達の力で勝った訳でもないのに大きな雄叫びをあげて勝利に酔う。



「……そっか、僕の方こそありがとう。色々話したいことが沢山あったんだけど、全部終わってからにしよう。僕の話を聞いて欲しいんだ」


満杯になった2個目の箱を見せてあげたい。どんな顔をするだろうか? 喜んでくれると嬉しい。そしてまだまだ入れたいモノは増えてくるだろう。どうせなら見つかったガラガラの箱に入れていくのも悪くない、そしてあの時投げ捨ててきたモノを拾うために道を引き返してもいいかもしれない。


そうすればこの小さな箱も少しはうかばれるだろう。


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