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最強魔導師だって嫉妬する  作者: rainydevil
帝国 カラシヤ奪還編
62/69

アイロニー

評価とか感想とかすごーく欲しいです まる


あと、物凄くどうでもよいのですが本日をもって20歳になりました、わーい。

「まだ気にしてんのか? 」


教室の机に頬杖をついてむくれていると、ギリギリになって登校したアラトが何か喚いている、ウザい。


あれから僕とサーフィアさんはあっという間に帝国を追い出された。曰く僕はオリヴィエちゃんの胸を凝視していて非常に不愉快、そんな奴の手は借りたく無い、と。


嘘ではあるけど、もうちょっとマシな嘘はなかったものか、そんな慎ましい胸なんて誰が見るかよ。いやまぁ凝視ではないから、ちょい見くらいだからね?

ティナの慎ましい胸はあれはあれはで良いものなんだよ?


「お前にはもう二人も美人がいるんだからな、一週間話したくらいの行きずりの女に入れ込むのは良くないと思います 」


僕が無視しているとアラトが調子に乗ってくる。


「童貞が何知った口きいてんだよ、死んじまえ、バーカ」

調子に乗ったアラトはオンゲで煽ってくるクソガキ並みにウザい、頭がハッピーセットなんですね。


「……荒れてんなぁ」

「久しぶりに荒れたエディ君ですねぇ、まぁ確かにアラトはウザいですが」


僕達が帝国から帰って四ヶ月、帝国の力はどんどん弱まり、囲む四国からあっという間に攻め込まれ息も絶え絶えといったところだ。

こうなるから僕が必要だったのか、今更首を突っ込む訳にはいかないと分かっていても、知った人が追い込まれていると思うと心に何かが突っかかって気持ち悪い。


「でもまさか帝国が負け始めるなんて、思ってもいませんでしたねぇ」


僕の席にクロナちゃんが来て、項垂れた僕の髪を弄りながら話す。そうゆう何気ないボディタッチは童貞男子が勘違いしちゃうから辞めて欲しい。


「でも俺達だって卒業したら魔導師として働く訳だし、無関係でもないだろ? 」


「そうですね……帝国がこのまま無くなってしまえば、次に狙われるのは唯一戦っていなかった私達かもしれません」


「戦争が起こるんかねぇ、死にたくねぇなぁ」


「サーフィア王女様は何と? 」


実はサーフィアさんとクロナは割とは仲が悪い。表面上は取り繕っているがこの二人を合わせると冗談抜きでスマッシュでブラザーズな戦いが始まる。修繕費はもれなく僕が支払う、冗談じゃない。


「……何にも、助けたい気もあるみたいけどサーフィアさんが出てくると僕達まで巻き込まれるから、なかなか手を出せないみたい」


「ならお前だけでも行ったらいいじゃないか? どうせ飛んでったら直ぐだろ? 」


「そうだけど、だけどなぁ。……それこそ関係ない人も巻き込むかもしれないし」


自分で動いたら、何か間違ったときに自分で責任を取らなくちゃならない。


「かと言って何もしなくても巻き込まれるのはもう確実なのでは? 」


クロナがまるでない他人事のように僕の頭で遊びながら呟く。いつの間にか三つ編みを作られていた、また女子力が上がってしまう、くっころりん。


「今から僕が帝国の助っ人として現れて、周りの国をボッコボコにして、オリヴィエちゃん達を助けて来たら、それは間違ってないのかな? 」


誰かがそう言ってくれれば、それを理由にできる。自分でもしょうもない人間だと思う。


「その子が死んでから後悔するのと、助けた後で色々責められるのと自分で決めるんだな」


「……むぅ」


アラトのくせにもっともらしい事を言う、でも多分アラトなら助けに行くんだと思う。その生者に突進するゾンビみたいな思考はある意味羨ましい。



ーーーー



「ただいまぁ、エディ様のお帰りだぞぉ」


誰かが反応してくれることを期待して、庭に向かって声を上げる。ちなみにティナには無視される、母さんには怒られる、父さんには拳骨されるのであまり意味はない。


「どうしましたか? エディ様」


僕の帰りにかけつけたのは元スラム住人のハルノちゃん、今はメイドの仕事をしたり休日はアラトと遊んだりしている。

どうやら庭に放置された地龍の卵を磨いていた途中だったらしい、あんな物放っておいていいのに。


「ぁーうん。まぁ、ハルノちゃんでいっか」


本当はティナと話したかったのだが、聞こえていなかったそもそも無視されたのか。


「……酷ぃ」

ハルノちゃんが涙目になった、ごめんよ。


「ぁぁ!! ごめんっ! ごめんよ? ……じゃあ、ちょっと相談に乗ってくれないかな? 」


「相談? ですか? ……私に? 」


いい加減人に相談しないと行動できない自分が恥ずかしいしみっともない。

それでも誰かに聞いて欲しいし共感して欲しい、相談というよりも愚痴に近い何かだと思う。

それにもう僕の心は決まっている、自分よりも歳下のハルノちゃんに〝やって来ていいですか?〟なんて聞いてる訳だ、ダサい。



「うん……例えば、自分自身どうしてもやりたいことがあって、でもそれは色んな人に迷惑をかけてしまう、嫌われてしまう、巻き込んでしまうかもしれない、そんな時はどうしたらいい?

もう考えるのもしんどいんだよ、どうして知らない奴の事なんかで僕が悩まなくちゃならないんだ?

戦争なんて意味が分からない、そんなにしたけりゃ自分の国を割って殺し合えばいいだろっ! 」


つい、熱が入って庭の土に蹴りを打つ。ハルノちゃんが僕に怯えたように肩を一瞬震わせ、一歩下がる。



「……ごめんなさい、難しいことはよく分からないです」


僕に怯えてのか、それとも申し訳なかったのか、涙を堪えて俯いてしまう。その仕草がまた僕をイライラさせる、僕は小さい子をいじめて憂さ晴らしして本当に小さい人間だ。


「僕の方こそ、あたってごめん……」

早く頭を下げて逃げてしまおう。惨めな気持ちなんて嫌というほど味わってきたのに未だに慣れない。


「と、とんでもないですっ! そうじゃないんです、エディ様は〝できるか〟〝できないか〟じゃなくて〝やるな〟〝やらないか〟で迷っているんですか? 」


顔が赤くなった。怒りとか羞恥とかその他ごちゃ混ぜになった感情が波のように押し寄せてゾワゾワする。

そんなつもりはあったのか無かったのか、僕にはヘタレ野郎と言われた気がして突き刺さる。


「どうせ後悔するなら何かして後悔した方が納得するって、アラトお兄ちゃ……アラトさんが言っていました」


受け売りが恥ずかしかったのか、それともアラトをお兄ちゃんと呼んだのが恥ずかしかったのか。


そんな言葉は頭がおかしくなるくらい聞いた、後悔するのに納得なんてできるわけないだろう。


アラトはいい奴なんだろうけど、多分前世の僕なら大嫌いだったと思う。自己啓発本に乗ってそうな台詞とか転職サイトのCMみたいな台詞は吐き気がするほど嫌いだ。


総じてああゆう事を言っている奴等は動けない人間のことをよく知らない。あまつさえ何で動けないの? とか思っている連中だ。30回くらい挫折しろ。


今の僕がアラトを嫌って無い理由はごく単純、今の自分は底辺でないから、別に挫折してないから、人間なんてそんなものです。


「……ふん、いつかアラトを手下にしてこき使ってやる」


「アラトお兄ちゃんもエディ様の下で働きたいって言ってましたっ!! 」


急にハルノちゃんが目をキラキラさせ、両手を前に持って自分のことのように嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。


なんだあいつ。



「お帰りエディ、歳下の女の子を泣かすとはいけないなぁ」


「あ、アウル様っ‼︎ 」

割と初めから見ていたらしい父さんがハルノちゃんの頭を撫でながら僕に拳骨を落と……ふふ、もう同じ手はくらわない、ミニ氷結層アイスバリア‼︎


「ごふぅっ」

二発目が顔面に飛んで来た、ごめんなさい。


父さんはハルノちゃん達をえらく可愛がっている、母さんから聞いたところによると娘ができたみたいで嬉しいらしい。今も緩い顔でハルノちゃんの頭を撫でてお小遣いをあげている。


娘もどき(僕)とは何が違うのか。



「……それで? そこの愚息はまた何かしでかしたのか? 」


「愚息って言うな! このやろうっ!! 」

最近反抗期のエディです、どうも。


2発目の拳骨を貰ったあたりで僕も黙る。


「……別に、何にもないよ、まだ大丈夫、だから僕も頑張るよ父さん」


自分にしかできないこと、こんな言葉は大嫌いで、そんな物は無いと思っていたし、今だって僕じゃなくてもいいんだと思う。


そんな捻くれた僕だけど、何となく、たまにはどっかの主人公みたいにヒロインのため戦ってみようと思う。だから観ていて欲しい。


「……そうか。その、上手く言えなくてすまない。でも、無理はするな」


父さんも父さんらしくするのに四苦八苦してるのかもしれないと思うと少しだけ可笑しい。

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