上から見た景色
1話の書き足し及び細かいところの修正をしました。初めてなので小説を書く上での細かいルールなどを間違えていたら教えて貰えると嬉しいですm(__)m
想像していたのと違う。
ここで凄い所を見せてチヤホヤされるはずだったのに。
試験官も、後ろを向いておしゃべりしていた生徒達も一様に口を開けて惚けている。
「……何か悪い事したかな? ごめんね、偉そうにして……」
試験官の教師は泣きだしそうになっていた。
「す、すいません!少し張り切りすぎてしまって……あ! あの人形壊してごめんなさい‼︎ 直ぐに直しますね‼︎ 」
直ぐさま僕は金属でできた人形の鉄くずを集め魔法で溶かし、再構成する。
「そうゆうことでは無いのだけれども……というかどうやって直したのよそれ」
試験官が頭を抱える、金属は金属分子が寄せ集まって出来ている、とかいうにわか知識でも魔法は発動する。
2人のやり取りで観ていた人々に加えアラトとリョウも意識が帰ってきた。
「……人は見かけによらないな」
「……そう、ですね」
「失礼だな、二人共」
アラトとリョウと話すことで僕に対する取っ付きにくさは和らいだようだ。
アラトはバカだからそんなことは考えてなさそうだけど。
「あの子かわいいのに凄い魔法使ってたよぉっ! 」
「あんな小さい子が? ……へぇ、かわいいじゃない
」
「しかもあの子男の子らしいよ⁉︎ 」
「マジで⁉︎ リアル男の娘⁉︎ ……ヤバッ……よだれが、ジュる」
「男の娘と男の子が仲睦まじく……いいねぇ」
などと聞こえてくる、ティナの言う物好きなお姉さんがここにはいるようだ。
お隣に腐ったお姉さんもいるようだが。
「なぁリョウ」
「何ですか? 」
「顔がよければ男でもいいと思わないか? 」
「……思いませんねぇ」
「アラトはそっちなのか? 」
リョウにこっそり聞いているとアラトが呼ばれた、さっきとは一変、ライターくらいの火をつけたアラトに試験官は満面の笑みで「そうそう、新入生はこうでなくっちゃ」などとつぶやいていた。
実力試験も無事? に終わり僕達はこれから通う事になる洋館の一室のような教室に入った、3人は同じクラスで担任は試験で半泣きになっていたあの試験官であるらしい。
「みなさんはじめまして、私は貴方達の担任となるレーナです、得意魔法は水魔法です。
私には魔法について色々聞いてもいいからなんでも相談してね? ……要らない子もいるみたいだけど」
レーナ先生の蒼い目が僕を見つめる、心なしか憎しみが籠っている気がする。
「良かったな、早くも目をつけられてるぞ」
「アラトはなんでも一言多いな……」
「それじゃあとりあえず自己紹介してくれるかしら、じゃあお願い」
そう言われて1番前に座っていた生徒から順に自己紹介をしていく。
ほとんど聞き流していたが数人気になった生徒もいた、1人は試験でエディの前に強力な魔法を使った生徒だ。
「トーマス・ハーデリアだ、我がハーデリア公爵家は代々強力な魔導師が継いできた、私もそれに恥じぬようこの学校で学びたいと思っている。
得意な魔法は炎の魔法だ、よろしく」
チラりとこちらに目を向けた後、彼は席に座った。
彼はこの世界の中で純粋な天才なんだろう、先の試験でも多くの生徒がせいぜいアラトと同レベルだったからだ。
正直、寝る間も惜しんで魔力の訓練を続けることができる彼が、羨ましく妬ましい。絶対こいつには魔法を教えない。
僕の方が凄い、あの程度の魔法僕の足元にも及ばない、なのにどうしてか気持ちが晴れない、念願だった天才を見下ろしている筈なのに。
チラりと向けられた彼の視線が怖い、初めて天才というやつから見上げられた。亀が必死の形相で迫り来る中で、ウサギはおちおち昼寝などできないのである。
本物の天才から向けられる『追いついてやる』という目に自分が恥ずかしくなる。
本当のことを知ったらあいつは僕を鼻で笑うんだろうと思う。
「僕、あいつのこと嫌い」
「俺もだな、何となく」
「全く……アラトが2人になった気分ですよ」
「大変だな、駆除しないと。キ◯チョールもってこい」
「キンチョー◯ってなんだよ」
入学式の予定が全て終わりとなり後は帰るだけとなったとき僕は周りの視線から逃げるようにアラトとリョウと別れ帰ろうとした。
異世界らしい石で舗装された廊下は、歩く度にコツコツと鳴る、僕の場合はテクテク、と言った感じだ、カッコよくない。
テクテクと脚を踏みならしていると不意に体が持ち上がる。
突然の事に驚いて声を上げることも忘れていると、犯人が僕を後ろから抱き締め、頭に頬擦りをしながら話かけてきた。
「私は観てたのだけど、はじめましてかしらエディルトス君、私はこの学園の生徒会長のサーフィア、よろしくね。」
「……はじめましてエディルトスです……もっと撫でてみませんか? 」
美人のお姉さんになでなでされる、さぞかし今の僕の顔は気持ち悪いだろう。今日、ほっぺは洗わないことにした。
そう言ってクスクスと笑うのは、肩まで降ろした綺麗な金の髪に意志の強そうな青い目を持った15歳ほどの女生徒だった。
というか試験場にいた物好きお姉さんだった。
生徒会長だったんだ……
「ところで何かご用ですか? 」
僕の要望に応え、サーフィアさんは両腕で僕の胴を持ち上げ、青銀色の髪に頬ずりしながら応える。
「そうよ、あれほどの魔法を使える貴方に話があるの」
「魔法は教えませんよ? 」
お願いされたら断れないかもしれないが。
「分かってるわ、そうじゃなくて、この学園には新入生の歓迎を込めたお祭りがあるの、その中に国王様まで見て下さる御前試合があるのよ。エディ君の実力なら出ても問題がないと思ったからどうかなって」
「僕も新入生なんですがいいのですか? 」
「んー……前例がないからなんとも言えないけれど規則上の問題はないわ」
「……出ます」
「まだ何も説明してないけどいいの? 怪我だってするかもしれないし」
「大丈夫です、僕は魔法があれば負けませんから」
魔法だったら誰にも負けない自信はあるし正直異世界人頭悪くない?とまで思ってる。
それにサーフィアさんは心配そうな目で見ていたが僕にとっては大きなチャンスだ、もし国王に自分の存在を認めさせることができれば自分を追いかけてくるトーマスなど遠くへ突き放せる気がする。