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最強魔導師だって嫉妬する  作者: rainydevil
帝国 カラシヤ奪還編
58/69

カラシヤ戦線の固有魔導師

ブクマが何故か減っていきます(´・ω・`)


偶には感想とか評価とか、くれてもいいんだよ?

敢えて、あの小さな少年を脅す為に鋭く扉を閉める。

扉は思惑通りにピシッと鳴って、扉の向こうでは深い溜め息が聴こえる。


仕事とは言え、子供を脅す大人にはなりたくなかった、まだ14の子供に私は何をしているのか。


閉めたばかりの扉の前で、同じ様な溜め息が私の口からも出てきて憂鬱になる。

娘と同じ歳の子を人様から奪い取って、戦場に連れて行くなど、国民が知ればさぞ幻滅されるだろう。

だが、まぁ、他人よりも自分だ、仕方ない。



これはしょうがない事だと自分を宥めながら客室を離れ、私室に向かおうとすると、どうにも城内が騒がしい。兵士が、それも室内には相応しくないほどの泥と汗に汚れた兵士を囲み、どうすればよいか戸惑っている様子だ。


「どうした、 何か有ったのか…… お前、どこの隊の者だ、私の城にその様な格好で許されると思っているのか? 」


「はっ 、私は605番隊、カラシヤ防衛線歩兵部隊のプロミヌ・エルゲン少尉であります。緊急時故に、ご無礼をお許し下さいっ」


少尉が涙で声を震わせながら私の前に跪く。

防衛線勤務の兵士がこんな所で何用だ、それもこんなにも泥だらけで。

言っては悪いが600番代の部隊など、今は共和国との小競り合い程度を防衛線を維持しているに過ぎない、北の連合王国を粉微塵に叩き潰す間に時間稼ぎするくらいのぬるま湯だったはずだ。


「何事だ 」


だが緊急事態には違いない、まさか共和国に戦線が抜かれたのか、もしそうなら司令官共の首をいくばか飛ばさなければならない。


「……はい、只今、カラシヤが抜かれ、私達605番隊は後退、601 602番魔導師隊は全滅。生き残った者達で後退しつつあります」


最悪だ、想像以上に最悪だ。頭が痛くなる、いや、それどころではない、魔導師隊が全滅だと? ふざけるな、では何故お前達が生きている? 魔導師が最大の火力であり戦力であるこの時代に歩兵如きがどれ程役に立つと思っているのだ。

せいぜい数の威嚇にしかならない役立たずの給料泥棒が残って、肝心な魔導師が死ぬなど、せめて肉壁にくらいなれんものか、魔導師を一人育てるのに幾らかかると思っている。


「……言い訳を聞いてやろう」

倒れそうになるのを辛うじて抑え、続きを促す。

生存者全てを敵前逃亡として処刑台送りにするのもやぶさかではないが、せめて辞世の句だけは聞いてやらんでもない。


「……はっ、我々600番代部隊は共和国の……“固有ユニーク”魔導師と遭遇、その初撃にて我々は半壊、そのまま魔導師だけを狙われました」



悪い事が続いて起こるというのはどうやら本当らしい、もう立っているのもギリギリだ。ユニーク級の魔導師だと? 思わずフラついてしった。


「……それは本当か? 」


「間違いありません、固有ユニーク魔法は風魔法と土魔法の複合型、砂塵で竜巻を作る魔法でありました」


固有ユニーク魔法とは、魔導師の中でも特に秀でており、その個人しか使用する事が出来ないその名の通りオンリーワンの魔法、及びそれを使う魔導師を固有ユニーク魔導師と呼ぶ。


幸か不幸か、敵は複合型のユニーク級。複合型と言うのは、既存の魔法を組み合すことでできた魔法、突き詰めれば固有ユニークでは無いが、やはり大き過ぎる脅威であるために固有ユニーク級に認定されている。


これが原初型のユニーク級ではたまったものではない、その名の通りオリジナルの魔法など使われれば、帝国は負けが決定する。

現在、帝国にユニーク級は一人もいない。正確には一人いるが、そもそも兵士ではない。


つまり、今の帝国にカラシヤを抜いたユニーク級を返り討ちにする戦力はない。手早く連合王国を潰した後にと放っておいた共和国だが、悠長にしすぎたか。



「仕方あるまい、連合王国以外の戦線から幾らか戻してそのユニーク級を押し戻せ、帝都に入れるなど論外だ、早くしろっ!」

思わず口調が荒くなってしまう、仕方もなかろう。


実は、今の帝国は列強といえど、他国が想像している程の地力はない。不敗の戦歴と攻撃的の国風故で自分達を大きく見せ、『帝国に本気で楯突くと潰される』と思わせる事で攻め込まれるのを防いでいるに過ぎない。


帝国の歴史に局地的とは言え、敗走が刻まれるのは不味い、付け入る隙を与えてしまう。『アレ? 帝国って、意外とイケんジャネ? 』とは思わせてはいけないのだ、一対一ならともかく、帝国は既に喧嘩を売り過ぎた。


「……その事なのですが」

泥まみれの兵士は歯切れが悪いばかりか、動こうともしない。


「なんだ、早くしろ。のろまは嫌いだぞ? 殺されたいのか? 」


「いえ、しかし、共和国の襲撃に合わせたかのように、他方の攻撃が激化しています。これ以上戦線から引き抜くと、今度はそこが維持できません」


「待て……どう言う事だ。まさか、既に組んでいるのか……」



不味い、ゾンネ以外の4国が組んだか? なら不味い。まず勝てない、何より今の帝都に進軍している共和国を止める術がない。予備戦力など帝国には存在しない。

何としても奴等を帝都に入れてはならない、戦争は何もどちらかが擦り切れるまでやる必要はないのだ。敵地の潜り込んでナイフを突き付け、降伏文書を書かせるだけでいい。


帝国が戦力を四方に分散させて、肝心な帝都がノーガードだと言うことがバレてしまう。


「チッ………どこか引っこ抜ける戦力はないのかっ!? この際冒険者でもいいっ! 連合王国は諦めるっ! 部隊を戻せっ、それまで冒険者でもなんでも盾にして時間を稼げっ!! 」



冒険者などクソの役にも立たないが、図体ばかりは馬鹿みたいにデカいゴミ虫共だ、肉壁にでもしてやろう。

他に何か使える物はないか? ゾンネに頼るか? 悪くは無いが間に合わない。……ゾンネか。



「……おい、お前」

さっきの泥まみれの兵士は私の指令で走って行ったので、他にいたてきとうな奴に声をかける。


「はっ」

「……さっきの指令は無しだ、連合王国から引き上げる必要は無い。私に当てがある、直ぐに用意して向かわせる」


「……分かりました」


帝国の現状を知っている者だったのか、そんなものどこに? と表情かお出したが直ぐに戻す。




固有ユニーク" 、居るではないか ! 今ここに! 少々平和ボケしてはいるがユニークには違いないっ! それもとびっきりだ、複合型などとパチモンのユニークではない、正真正銘の原初型オリジナルがっ!


何て幸運だろうか、いや、攻め込まれているので幸福では無いが。幸いにもこちらには最強のオリジナルが居る、これを使えればさらに他国への牽制にもなる、ゾンネの物だが、私達が先に使ってしまえば周りは私達の物だと感違いしてくれるだろう。


「どけっ! 邪魔だっ! 」


後は持ち主に使用許可を頂くとするか、流石の私も、人様の物を勝手に使うほど非常識では無い。


今来た道をもう一度戻り、足早に客室へ向かう。




扉をノックし、暫く。部屋の中から声が聞こえ、扉を開く。


「サーフィア王女、お話があります」

なるべく手短に、のんびり社交辞令を交わす暇は無い。


「……フォルカス、外してください」

彼女も、彼女の従者も私の様子に察してくれたのか、文句一つ言わない、実に有能な部下だ、羨ましい。


二人だけとなった私達は単刀直入に話を進める。



「突然で申し訳ありません、サーフィア王女。……エディルトス少年をしばしの間、お借り受けしたい」


「……借り受ける? ですか? 」


流石は才女というべきか、私が突然来た事と。そもそも帝国が少年を自分の物にしようとしていた事からの変化を素早く読み取る。


「はい、必ず返すことを約束します」


「……どこで、彼に何をさせるつもりですか? ……それに彼を物のように言わないで頂きたい」


「それは申し訳ない、ですが、詳しくは言えません」


ゾンネにとて、弱味を見せる訳にはいかない。これから手を借りることが増えるだろう、足元を見られてはならないのだ。


「……問題外です、私の国民をそんな勝手で使われる訳にはいきません」

私の焦りを弱味とみたのか、いや、弱味そのもので、私達が下手に出ないといけないのが現状だ。



「……分かりました。……現在、共和国防衛線 カラシヤが共和国固有ユニーク魔導師によって押されており、現在即座に対応できる部隊が手元にありません」


まだ負けていないという事と、動かせないだけで予備戦力はまだあると仄めかせることは忘れない。……そんなものは無いが。


「……エディ君に、戦争をさせるのですか? 」


「そのための魔導師では? 」

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