隣の芝はジャングル
次話からはファンタジーしに出かけます、本当です、嘘ついてごめんなさい、今度こそ本当です、嘘ついたら、今日から新年まで毎日投稿する事を誓います。
クリスマス? あぁ?
※ リョウ視点
あの日、エディ君と公園で話してから4年。
それから色々なことが分かったり分からなかったり。
まず4年前の卒業式の日、サーフィア会長がサーフィア王女だったことが分かったり、その部下というか秘書というか、その側近にエディ君がなっていたり。
正直サーフィア会長もエディ君も、あそこまで遠くなると嫉妬なんて起こす気にもならないですね。
ただ、未だにあの二人への憧れは冷めないままですが。
あの大騒ぎになった卒業式の日から、エディ君は人が変わったように自分磨きを始めました。
自分の立場への自覚からなのか、周りとサーフィア会長に求めらる期待に全て答え、今や学園中、王都中の憧れでもあります。
そんな僕達も後半年で学園を卒業し、成人して晴れて正式な魔導師と成り、めでたくお国の為に身を粉にして働くことになるでしょう。
アラトも僕もクロナちゃんも、エディ君の教え子の僕達は昔では考えれないような成績を残し、既に三人とも卒業後の就職口に困ることは無くなりました、アラトはエディ君の部下になるんだと言っていますがどうなるんでしょう。
そして、魔法祭でアラトと僕は一度、クロナちゃんは二度、準優勝を果たしました。
もちろん優勝は4年ともエディ君、昔のあの戦いに慣れなくてアワアワしていた姿も人気でしたが、今の公私を分けて冷徹に、機械的に敵を排除していく姿も新入生には憧れの的のようです。
なんでも今王都で人気の創作小説のヒーローがドSのイケメンなようで、エディ君がそれに似ているとか何とか。
まぁ、そもそもそのモデルがエディ君らしいので当然と言えば当然なのですが。はっきり言って全然似てません。
というか、エディ君は『限りなく女性に近く中性的な顔』とかいう意味不明な自己評価をしていましたが、それはもうただの美少女では? 美化され過ぎでは?
立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花、口を開けば雑草。まぁこんなとこでしょうか。
僕なんて逆立ちしても雑草ですがね、……ハハッ。
しかし、エディ君も僕達と同じ高等部の最終学年ですが、もうほとんど学園に来ることはありません。
既に学ぶことが何一つ無いという事もありますが、仕事やその他諸々で、学園に来れる日がないのでしょう。
エディ君の活躍は王都に居れば毎日のように耳に入りってきます。
昔のドラゴンフライの件もあり、さしずめ英雄といった扱いです。まぁあれだけの魔法を使い、王女様の副官として有能、さらに見目麗しいと言われればそりゃあ民主の憧れになるのも当然です。
何故僕はここまで友人を褒めちぎらなければならないのでしょう。
相乗効果と言っては失礼ですが、サーフィア会長の評判もうなぎ登りで、顔を出してまだ4年というのに国王陛下を凌ぐほどの人気があります。
「リョウ先輩っ!! あのっ! 今日はエディルトス先輩は居ないのですかっ!? 」
あれまぁ、今日でもう三度目です。
僕やアラトは毎日のように後輩達から、エディ君が居るか居ないかの確認窓口と化しています。
クロナちゃんを窓口にすると機嫌を悪くするので僕達が引き受けます。
もちろん女性も多いのですが、少なくない人数の男子生徒も訪ねて来ます、エディ君はまぁ、ギリギリ……ギリギリ男の子なんですよね、多分。
その件に関しては昔アラトが証拠を掴んだそうです。
「あぁ、ごめんね。今日は来れないみたいですよ。次に学園に来るのは明後日と聞きました…………で、いいんですよね? 」
名も知らぬ後輩が帰ったのを確認してから、隠れていたエディ君に向ける。
「うん、ありがと、明後日は緊急の仕事が入って早退した、って設定で」
「いいですけど、偶には自分で出てくださいよ。いつか刺されても知りませんから」
「ってかさ、エディよ。お前あんな感じでチヤホヤされるの好きだっただろ? 」
確かにエディ君はそんな感じですが、それはアラトも同じだと思うのですが。
「お前と一緒にすんな、僕はもうそういうの卒業したんだよ」
らしいです。
「本当はどうなんですか? 」
エディ君は問い詰めればだいたい口を割ります、チョロいチョロい。
「……調子乗ってたらサーフィアさんが切れたんだよ、浮気だって」
「……まぁ、エディ君はすぐに調子に乗りますからねぇ」
因みに、エディ君とサーフィアさんがそういう仲なのは既に周知の事実です、4年前の卒業式、サーフィア会長が送辞で、エディ君捕獲宣言を放った事で判明しました。
あの時は凄かったですね、卒業式は魔法が飛び交う戦場となり。一対全校生徒の約半分、流石は魔法祭の優勝者といったところでした。
実際はほとんど、サーフィア会長対クロナちゃんだったんですがね、まぁいいです。
「次に浮気か疑わしい行為をしたときには、監禁されるんだって、僕」
「実際にやりそうだから怖いよなぁ、あの人」
そう言えば、アラトはサーフィア会長が卒業するまでの半年くらい、犬のように扱われていました、というか今でも扱われています、俗に言うパシリというやつですね。
「でもちゃんと餌も貰えて、暖かい住処もあり、繁殖までさせてくれるんだって。破格の待遇だと思わない? 」
「思わねぇよ、ドン引きだよ」
「いい感じに調教されてますねぇ……」
餌に住処に繁殖って、それはもう立派な飼育です。ペットとての自覚が半端ないです。
全く、本当に、いや本当に。口さえ閉じれば完璧なんですがねぇ……。
「繁殖……なぁ、エディ……。その、お前、あっちの方はもう、いたしたのか? 」
「いやいやいや、何聞いてるんですか」
「リョウだって、気になるだろう? 」
いやまぁ、僕も男な訳で、気にならないと言ったら嘘ですが。
「聞いてどうするんですか」
「それはもう今晩の「あぁもういいです」……オカズは何かなぁ」
「まだしてないよ」
こっちも黙ってください、もうお願いします。
ほら、聞き耳を立てていた女性陣が無言のガッツポーズを決めているではありませんか。
「意外だな、遠の昔にエディの純潔は散っていたのかと思ってたよ」
「僕のかよ」
「何故君達二人が話せばそんな話題にばかりなるんですか……」
「いやだって、健全な男子の頭ん中なんて8割がこんな感じだよ? リョウの頭がおかしいんじゃないかな」
「そうだそうだ〜」
国中の健全な男子に謝って下さい。
この二人が組むと本当に鬱陶しい。
「そうは言いますけどねぇ、二人共後半年もすれば学園を卒業して成人するんですよ? いつまで男子なつもりなんですか」
「いやまぁほら、少年の頃を忘れずに殊勝な態度で物事に挑めっていう僕なりの戒めだよ、…………ごめん、反省してるからそんな顔しないで」
なんと言いますか、やはりエディ君はからかい甲斐がありますねぇ、そんな顔されると、いじめたくなるサーフィア会長の気持ちもよく分かります。
「そ、そういや仕事の方はどうなんだよ? 今日はここに来ていい日なのか? 」
アラトは反省したくないのか、自分で作った話題をぶった切って変えてきました。
「逃げんなよ、いいけどさ。サーフィアさんが偶には顔を出しとけってさ、明日からまた書類の山とサーフィアさんのお世話で大変だよもぅ」
「ふーん、大変なんだなぁ〜」
「お前、自分で聞いといてそれはないだろ……あ、そういやさ、僕来週から暫く王都を離れるからレーナ先生に伝えといてよ」
「いいですけど、何かあるんですか? 」
「外交だってさ、がいこー、その護衛として僕も行くみたい、サーフィアさんの横に立ってかっこいい顔して黙ってるのが僕の仕事らしいよ」
「突っ込みたいけれど、敢えて無視しますが……気をつけて下さいね? いくら強かろうがエディ君だって死なない訳ではないんですから」
「ん、ありがと」
エディ君はニコニコと、あの頃から殆ど伸びていない小柄で華奢な体に薄い青色の髪を揺らしながら微笑みました。
僕達がこうして話せるのも後半年もありません。
作者が『〜年後』とかちょろっと書くだけでその年数が経つんですね、しゅごい。