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最強魔導師だって嫉妬する  作者: rainydevil
学園編
54/69

トラックと公園

嘘ですごめんなさい……_:(´ཀ`」 ∠):


今回で第1章といいますか、学園編といいますか、は終了です。

次話からやっと主人公がなろうっぽく活躍していきますのでよろしくお願いします。

いつもなら重量靴グラヴィティブーツで家までひとっ飛びするところだが、リョウに合わせて徒歩で帰路に着く。まぁ、帰路に着くってかっこ良さげに言ったものの、僕の家は学園から徒歩10分だったりする。


僕よりも一回り背の高いリョウはわざと僕の歩幅に合わせてゆっくり歩き、時折何か言いたげに僕の方を盗み見ては逸らす。


「今日、どうしたんだ? ……分かりにくかった? 」

「いえ、すいません……そういうわけでは無いんですが……」

話を聞いてやる、とアピールしているのになかなかリョウは切り出さない。真面目な話ならリョウを家に上げようと考えていると、リョウは大きな溜息をついた後、深呼吸をして、それを繰り返す。



「エディ君、少しいいですか? 」

リョウの真剣な表情に、僕の方が驚く。

これから告白でもされるのか、脚を止めたリョウの顔は真剣そのものだが、僕に友達の悩みを解決できる器量はない。


「えっ? う、うん。どったの? 」

「……アラトっていい奴だと思いませんか? 」

質問を質問で返されると困るのだが、概ね同意である。だが、あのバカを手放しで褒めたくない、調子に乗ったアホ面が頭に浮かぶもん。


「バカだけどね」

そう言うと固い顔をしていたリョウが口に皺を寄せて笑う。


「そういうの、ツンデレって言うんでしょ? 」

……むぅ、たまに日本生まれの俗語を使ったりするが、使われるのは久しぶりだ、恥ずかしいけど懐かしい。


「んで、アラトがどうしたんだよ」

軌道修正、口先で生きる者として勝てぬ喧嘩はしないのだ。


「……エディ君に魔法を教えて欲しいっていうのは、僕が言い出したのではなくて、アラトが誘ってくれたんです。どうせ一人も二人も変わらないからって」

「何でアラトが言ってんだよ」


「本当にいい奴だと思いませんか? ……僕ならわざわざ、自分よりもできる奴に、敵に塩を送るようなことはしませんよ」

「敵ではないだろ」


何でもそつなくこなす真面目なリョウが、そんな風に考えているなんて思わなかった。


「意外ですか? 実は僕がこんな嫌な奴だったことが」

「まぁ……嫌な奴だとは思わないけど、意外は意外かも」


ちょうど、帰り道の途中にある小さな公園に二人で入る。低い鉄棒や、滑り台に似ているようなそうでないような遊具があり、地面は砂でなく石の床が剥き出しになっていて、いかにも土地が中途半端に余ったから作った、みたいな形も広さも微妙な公園だ。


その公園に一つでけある石の長椅子に僕とリョウは腰を下ろす。


放課後に二人に魔法を教えていたこともあり、既に陽は傾いて空はオレンジ色になっている。雲は無く、太陽と呼んでいいのか知らないが、少なくともこの世界に光を届けている星が地平線に潜り始める。


缶コーヒーも自販機もないが、不思議と地球あっちで見た最期の景色に似ている。


「んで、何が言いたいの? 」

「いやまぁ、皆凄いなぁって、それだけなんですよ。エディ君もアラトもクロナちゃんもトーマス君も、そしてサーフィア会長も、それぞれ羨ましいところばかりで。

この中で何にも持ってないのは僕だけなんですよ、家もただの平民ですし、魔法も頭もせいぜい中の上くらい。

別に偉くなりたいとか、そんな風に思っていたつもりは無いんです、人並みに期待されたから、人並みに努力して、適度に痩せ我慢して、そうして僕なりに生きていくつもりだったんですよ」

「それのどこがダメなんだ? 」


「別に悪い訳ではないんですが、こんな人達に囲まれていたら、僕だって羨ましくなりますよ」


まぁ、分からなくもない、というかよく分かる。

隣の芝生は青いとか、そんなレベルではない、他人が羨ましくて、自分がどうしようもなくて、何かしていないと涙が勝手に出てくるときは良くあった。今でもある。


「そんなこと僕に言われても困るよ」

僕だってその答えを、どうしたらいいのかを教えて欲しい。


「……そうですよね、ごめんなさい」

さっきまで、何かに縋るように説破の詰まっていたリョウの顔が、失望したように暗くなる。


何故こんな質問を僕にするのか、明らかに人選を間違っている。父にでも母にでもすればいい、少なくとも僕よりもマシな答えを出してくれるだろうに。


あの時の僕もそうすれば良かったかもしれない。


ただ今のリョウを羨ましく思うところは、ただの一つも無い。

そんなつもりは無いが、見下しているのかも知れない。


多分僕もこんな風に見られていたんだろう。悔しい。


「リョウは何で魔導師に成りたいの? 」

何となく分かるが一応聞いておく。


「正直に言うと、そこまで強い理由があるのでなくて、ただ親に言われて町のみんなにも期待されたからここに来ただけなんです。……エディ君やサーフィア会長にはふざけてるように聞こえるかもしれませんね」


やっぱり、聞けば聞くほど僕に似ている。自分が成りなくて成ったんじゃないと予防線を張るのも僕そっくりで、イジイジしているリョウに苛立ちが湧いてくる。


「僕も似たようなもんだし何にも言わないけど、サーフィアさんには言わない方がいいよ、多分怒るなら」


「そうですか、でも、こんな話を聞いてくれてありがとうございます、憧れのエディ君に話せて、少しだけ楽になりました」

リョウはさっきよりも少しだけ明るくなった顔をクシャッと痩せ我慢して笑顔を作った。


「憧れとか、変な奴だなぁ。何にもアドバイスできなくてごめん。

でもまぁ多分、期待されてるなら、分からないなりに脚を動かし続けてたらいつかは『やってて良かった』って思えるんじゃないかなぁ、多分だけど」


先輩なりに役に立つか立たないか微妙なラインの助言でお茶を濁す。


「今日のエディ君は歳上みたいですね、やっぱり僕の憧れです」

クシャクシャで皺だらけだったリョウの顔が今度こそ花のように開く。やっぱりイケメンは卑怯じゃないか、くそぅ。



できれば、リョウには『やってて良かった』と思って欲しい。

僕はあの苦痛と世界からドロップアウトして、才能ギフトを貰ってこっちに来た、そのまんまチーターだ。

もしリョウが正しかったら、あの時の僕もあの世界も悪いもんじゃなかったかもしれない。


リョウは小さな掛け声と共に石の椅子から腰を上げて、服に付いた砂をパンパンと叩いて落とす。


僕がそれに従って同じ動作をすると、リョウはゆっくりと公園の出口へ向かう。


トラックは突っ込んで来ない。





ティナ「ソシャゲなんて止めてとっとと続きを書きなさい、クズが」


って言われたいです。脚舐めるから許して、むしろ舐めさせて。

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