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最強魔導師だって嫉妬する  作者: rainydevil
学園編
47/69

流れ星のように

そろそろファンタジーしろよ、って自分に突っ込みながら書きました。

しばしお待ちを。m(__)m

「おはようございまーっす」

サーフィアさんとイチャコラしながら登校し、滾ったテンションのままレーナ先生のいる職員室の戸を開く。因みに職員室とは僕が勝手にいっているだけで、本来は 魔導講師準備室 と言うらしい、長い。

勢いよくスライドされた扉が鳴らす音に中の先生達が驚いてこちらを見る。


「おはようございますエディ君……ノックくらいしなさい」

昨日よりも顔色の悪いレーナ先生が手招きで僕を呼び寄せる。僕がマリーナ鉱山から帰って来てから、レーナ先生の顔色が徐々に紫色に近くなっている、毒状態なのかもしれない、今度ポーションでも買ってきてあげよう。


「昨日は何も言わずに居なくなってしまってすいません」

追求される前に罪を告白して反省してますアピール。

「昨日負けてしまったのが少し辛くて、1人になりたかったんです」

さらに同情を誘うことも忘れない、なんだかんだでここの先生達は僕に甘いのだ、筋肉隆々でいかにもな実技魔導の先生もいるのだが、僕がきゅるんっ、とすればイチコロだ。


「にしては元気そうですけど? 」

元気ですから、彼女が婚約者が二人もできて幸せです。

「いやいや、そんなことないですよ。ただ負けたことをバネに心機一転したんです」

レーナ先生は僕を訝しげに見つめる、どこの世界でも本音と建て前は使い用だ。使い方を間違えているかもしれないが気にするな。


「まぁいいです、そんなことよりもエディ君に重要なお話があります」

何だろう、本来なら説教を貰いに来た僕だが今日は他の講師陣に囲まれてリンチされる様子も無ければレーナ先生が手を焼くあまり泣き出すこともない。


「何でしょう? お金なら払います」

覚えは無いが、またどこか壊してしまったのだろうか? 炭酸飲料の売り上げで僕の懐は寂しくは無いが、それ以上に最近の出費が多い。


「……私を何だと思っているんですか? 違います、これを受け取ってください」

そう言って僕に一枚の、白に何やら豪勢な金の刺繍が入った封筒を手渡す。

「見てもいいですか? 」

先生から許可を得て封筒を開く。

封筒には一通の手紙と数枚の書類、レーナ先生に促され手紙を読む。




「……ふむふむ……意味が分からない、どういうことでしょう? 」



差出人は知らない人だ、だが家名があるくらいだからどこぞの貴族様なのだろう。

ヴァヌス・ガレリオン と言う人らしい、偉いんだろう、手紙も偉そうだ。

手紙の内容を要約するとこうだ、ヴァヌスさんはゾンネ王国聖魔導騎士団の総督らしい。聖魔導騎士団って魔導師か騎士かどっちなんだろ、しかし名前がダッセェな。話が逸れたが続けよう、この聖魔導騎士団はいわゆる軍隊にあたるものらしい、クロナのところのワイズガード家は国防、ガレリオン家は本国から出向いて闘う家であり、ワイズガード家とは犬猿の仲、そしてどうもエリート至高主義なのだろうか、手紙の節々からプライドの高さが垣間見える。

そしてなんと、そんなプライドの高いエリート様が今朝土下座をきめた僕を騎士団へスカウトしたいらしい。


「どうもこうもその手紙の通りよ……」

レーナ先生はあからさまに苦い顔をする。

「しかし……なぜこのタイミング何でしょう? 僕は昨日負けたばかりなんですが……」

魔法祭の試合に勝手国からスカウトが来るという話は聞いたことがあるが、何てことのない負け方をした僕が目にとまるとは考えにくい。


「エディ君の試合が終わってすぐにヴァヌス様が私のところに来てあの学生は誰だって、言うから……」

レーナ先生も詳しくは分からないらしい、しかしどうやらこの騎士団とやらは本物のエリート中のエリート、出世コース真っしぐらで手柄を上げれば直ぐさま昇進というスーパーエレベーターのようで、思わぬ幸運を見過ごすのは勿体無い。


「もし僕がこの話を受けたらどうなるんですか? 」

「……先ずはこの学園を飛び級という方で来年にも卒業することになるわ、そしてその後に騎士団に入るって手順ね」

そう言ってレーナ先生は封筒に入っていた一枚の書類を二本の指で摘み、ピラピラとする。

一年でこの学園から去るのは後ろ髪が引かれる思いだが、よくよく考えればこの学園にそこまで思い入れもない。

「先生は反対なんですか? 」

良い話だと思うのだがレーナ先生は快く思ってないみたいだ。


「……まぁ、教え子が立派になるのは嬉しいんだけどね、10歳の、しかもまだ学園ここにきて半年も経たない子供を戦争に行かせるのは……」

「? ……今は戦争なんてしてませんよね? 」

確かそうだったはず。

「……そうだけど、いつ起こるか分からないのよ? 私は反対だけど、期限は今年いっぱいみたいだからよく考えて」

それ以上話す時間もなくなり、保留となった。


正直なところこの話に今すぐにでも飛びつきたい、スカウトされたのだ、どこの誰だか知らないが他の誰でもなく僕を選んでくれたのだ。それが堪らなく嬉しい。

やっと誰かの目にとまった、別にここまで大物でなくても良かったが、やっと自分に自信が持てる気がした。降って湧いたチャンスをなんとかものにしたい。



ーーーー


一度教室に戻り、アラトやリョウ、クロナに挨拶を済ませた後、三日目の魔法祭が始まった。

もちろん婚約者のサーフィアさんと楽しむつもりだったのがなぜか僕、サーフィアさん、クロナ、アラト、リョウの五人が僕の周りを囲んでいる。


事の始まりはこうだ。

教室に戻った後、さぁ今日も楽しもうというときに、当たり前のように僕達の教室にサーフィアさんが現れた。そこまでは特に珍しいことはない。サーフィアさんは僕の腕に僕の腕を絡ませ、手のひらは僕のと恋人繋ぎ、ガッシリと僕と腕を組む。普通に考えたら頭のおかしい行為だがサーフィアさんならおかしくない行動だ、問題となったのは僕がそれを拒まず、何食わぬ顔で受け入れたことらしい。

いつもはサーフィアさんに捕まってから五分くらいは暴れた後連行される僕が、まるで恋人のように自然に腕を組んだことが不自然だったようで、教室中から様々な悲鳴、呪詛、はたまた窓から飛び出す者まで現れた。


結局、事態の収拾に学園中の教師が総動員して収まった。そして、壊れた笑い声をあげながら付いてくるクロナとニヤニヤしながら付いてくるアラト、流れで付いてきたリョウ、そして僕とサーフィアさんが固まって、両脇に露店が並び、賑わう土の道を歩く。


「……ちょっと、クロナちゃん? どうして付いてくるのかしら? 一昨日はエディ君を貸してあげたでしょ? 」

人混みに揉まれながら、サーフィアさんはクロナを追い払おうとする。

「サーフィア様は昨日エディ君と回ったんですよね? ……キヒヒ」

おーおー、クロナさーん、目がー、怖ぁーい。


「えぇ、それが何か? 私達はもうただの先輩後輩じゃないの、見て分からない? 」

サーフィアさんは組んだ僕の腕を手繰り寄せ、クロナに見せつける。


「……じゃあどんな関係なんですかぁ? 」

ハイライトの無いクロナの目がドロドロと渦巻く。

「そうねぇ……只ならぬ関係よ」

まぁ、確かに只ならぬ関係だけど。

「間違えたわ、爛れた関係よ」

それは言い過ぎ。

只ならぬ関係だろうが爛れた関係だろうが、きっぱりと否定しない僕にクロナがついに壊れてしまう。


「……そう、そうなのね……あはは、うふふふ」

クロナはそのままケタケタと笑いながら、ふらふらと人混みの中に消えていった。


「サーフィアさん、後でクロナに色々文句言われるのは僕なんですよ? 」

次にクロナに魔法を教えるのは明後日の休日なのだ、正直もう教えることも少ないのだが、クロナは辞めることを許さない。

そもそも何でクロナはあんなになっていたんだろう、僕のこと好きなのかな? それともお腹でも痛いのか。

「あら……また浮気? 今度は3人目? 」

僕の腕が締め上げら、変な音が鳴り始める。

「違いますっ! ごめんなさい! 」

ゴギゴギ、バキンッ、と盛大に鳴らしてからサーフィアさんは僕の腕を離す。


「浮気?……3人目? えっ? 」

聞き流せばいいものをアラトが食い下がる、今のお前はモブなんだから黙ってて欲しい。

「そうよ、聞いてアラト君」



いつの間に2人は仲良くなったのだろう、サーフィアさんは一つの迷いもなく昨日の出来事、今日の出来事、僕の前科の全てを洗いざらい吐いたのだった。


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