魔法祭二日目
日間ランキング乗りましたぁ〜
ワーイワーイψ(`∇´)ψ
魔法祭二日目、本日は快晴なり、僕の心は曇り空でございます。
もはや恒例となった朝のお説教を受けるために職員室へ向かう。
「おはよーございまーす」
昨日より少しだけ明るくなった僕にレーナ先生は嫌そうな顔をする。
「……お願いですから、お願いですから魔法祭中だけは大人しくしていて下さい……ね? 」
レーナ先生は本当に心配性だ、別に壊したい訳でも壊すつもりもないのに。
先生からの有難いお説教を聞き流し、教室に戻る。魔法祭は全部で四日間、二日目の今日はアラトとリョウが僕に構ってくれるらしい。クロナは友達と既にどこかへ行っていた。
「お待たせー、怒られてきたよー」
「……全然反省してないじゃないですか 」
「まぁいつものことじゃねーな、それより早く行こうぜ! 」
そうそう、細かいことは気にしない。今日は男三人でナンパを決行するらしい、イケメンのリョウに僕、そして……まぁ、盛り上げ役のアラト。完璧な布陣である。
「二人とも! 今日のノルマは一人十人の女の子と仲良くなることだっ! 」
「おー」
「は? 聞いてませんよ? 」
もちろんこの世界に携帯もスマホもないので連絡先の交換なんてできない。よってその場で仲良くならないといけないのだ、ちなみに僕はナンパなんてしたことがない。
何だかんだ言いながらついてくるリョウを連れて、人通りの多い出店の前を歩き、ターゲットを絞る。
十分、二十分……出店前はあらかた歩き終わった、リョウはともかく僕もアラトも、まだ誰にも声をかけていない。
「ア、アラト君……そろそろ決めたらど、どうかね? 」
「ま、まぁ待てよ、一番手はやはりおモテになるエディルトス選手にするべきではないか? 」
「い、いやいや、こうゆうのは初めのテンションが大事なんだよ、だからここはムードメイカーのアラトが行くべきだ」
「いやいや初めだからこそ堅実にだなぁ……」
ジャンケンした、負けた。
「さぁ行け、その女みたいな顔面であの女性を落としてこい」
仲良くなるんじゃないのかよ、ハードル上がってる……
「……ここ、ここここんにちは〜、お、お姉さん一人ですか? 」
おかしい、ニワトリみたいになってしまった。
後ろ姿しか確認せずナンパしてみたがきっと美人に違いない、ブロンズの長髪を持った女性が振り返る。
キラキラと光り出しそうな髪を振り回し、その女性は力強い目で僕を見る。
我らが生徒会、そして最近痴女に進化したサーフィアさんだった。
「すいません、人違いでし「エディ君からのご指名なんて嬉しいわ、さぁ二人で楽しみましょうか 」
……まぁ、ナンパするならやっぱり一番の美人がいいよね? つまりナンパ成功。開き直って行こうぜ。何せ超絶美人のリアルお姫様だ、うぇーい。
ーーーー
「楽しんでこいよ〜」
「午後の試合観に行きますからー」
ナンパ一つできない愚民共が僕を見送る、サーフィアさんは自分の肩ほどまでしかない僕を連れ、まるで大勢の大衆に恋人を見せつけるかのように歩く、美人の彼女を持った鼻高彼氏みたいだ、彼女は僕、あれ?
「数日ぶりね、会いたかったは、ヘタレのエディ君」
「ぐぅ……」
あそこまで露骨に誘われて逃げ出したのだ、ヘタレと言われても言い返せない、というかこの人は自分の立場を分かっているのだろうか……一国の王女が婚前行為に及んだなどと知られれば僕は打ち首獄門。キリスト教だって婚前行為をすればサタンが地獄に引きずりに来るって言ってる。全然関係ないけど。
「と、とにかくっ! 不純異性交遊はイケマセン! 」
「大丈夫よ、私はもう成人してるから」
いや、もっとダメだろ……未成年保護条例とかに引っかかりそう、知らんけど。
「そうゆう訳じゃなくて……そうゆうのは好きな人とじゃないと……」
自分の生娘のような発言に自分でびっくりした、まだ僕の心は綺麗みたいだ。
「エディ君、愛してるわ」
「えぇ……」
男と女が逆だと素晴らしいシュチュエーションになりそうだけども……
忘れてはいけないが今日は魔法祭二日目、そしてここは祭で賑わう大衆のど真ん中、そんなとこで愛を囁くサーフィアさんは注目の的である、当然僕もだが。
数名のうら若き乙女達が頭に百合の花を咲かせ、頬を染めている気がしないでもない。確かサーフィアさんは同性からの人気も凄いとか。まぁだから何だって話だ。
「……そうは言いますけどね、サーフィアさんが勝手に決めていいものでもないでしょう……」
ほら、政略結婚とか? 王族なんだからそうゆうの有りそうだし。
「ふーん、エディ君が私がどこの馬とも分からない気持ち悪い豚オヤジの慰め物になっても構わないのね? 」
「うっ……それは、嫌ですけど……」
そこまで言ってない。
「ほら、エディ君も私に独占欲を持ってるじゃない、両想いよ、はい結婚指輪」
「へっ!? ……」
スポッと……スポッと、サーフィアさんは僕の指に金属で出来たプラチナ色の物体を嵌める。
「はっ?! ……へっ!? 」
「もちろん結婚指輪を外して返すなんて失礼なマネをエディ君なしないよね? 」
僕が指輪に手をかけ、外そうとするとサーフィアさんはそんなことを言い出した、人の指にいきなり結婚指輪を嵌めるのは失礼じゃないのか……
「なんてねっ、さすがに冗談よ、でもその指輪は私からのプレゼント、魔導具にもなる優れ物よ。あ、別に結婚指輪でもいいからね? 」
……心臓が止まるかと思った。サーフィアさんと結婚しても何の問題もないしむしろハッピーエンドなのだが、僕はまだエンドするつもりはない。
「ちなみにその指輪、白金貨5枚よ」
心臓が止まった、3秒ほど。
白金貨1枚はだいたい一千万円ほど、僕がサーフィアさんに見えない首輪で繋がれた瞬間だった。というか白金貨なんて見たことない。
「そ、そんな高価なものは頂けないといいますか、やいのやいの」
「気にしなくていいは、私の家ってお金持ちなの」
でしょうね。
まぁいいや、貰えるもんは貰っとこう。サーフィアさん好きだし、多分いつかは捕まると思うし時間の問題だよね。
「……ありがとうございます」
指輪はちょっと恥ずかしいけど。
「ちなみに外したら……ね? 」
呪いの装備だった、教会に行かないと。
「まぁ、勝手にあげたものだから気にしないで。その代わりデートしましょう」
デート代に5千万とはしゅごい。
「いいですけど、前みたいなことはしないで下さいよ? 」
「エディ君がかわいいのが悪いのよ」
サーフィアさんと並びながら歩く、残念な部分ばかり見ていたので知らなかったが、僕以外の人の前では立派な生徒会長らしい。何の仕事をしているのかは知らない。
すれ違う人の多くはサーフィアさんに気づき、話しかける。時々真面目な顔をして話す姿に僕は感心する。正面の話し相手に見えないように、背後から僕に触れるうねうねした手が無ければなおよかった。
もう手の動きが痴漢とかその類いだ。
「ちょっと……ダメですってば」
「そうね、続きは私の部屋でね……ぐへへ」
最近サーフィアさんの頭の壊れ具合が半端ない、今の台詞とかもう同人誌に出てきそうだ。
サーフィアさんと屋台で昼食を取り、並んだ出店を冷やかして回る。
「これなんかエディ君にぴったりだと思うの」
そう言ってサーフィアさんが手に取ったのは薄いピンクの花飾りがついた小さな髪留め、だから男と女が逆ではないのか? サーフィアさんはそんなこと気にする様子もなく僕の頭に髪留めをつける。
「僕って男なんですよ? 知ってます? 」
「何を言っているの? 男と女でしか子供はできないのよ? 」
貴女が何を言っているの? さっきから突っ込みがとまらない。
「……そうゆうことじゃなくて、僕は男なのでそうゆうかわいい小物はむしろサーフィアに似合うのであって……」
「ありがとう、でも大丈夫よ、私は付けなくてもかわいいから」
「さいですか……」
「それにエディ君こそ、随分と髪を伸ばして女の子にしか見えないじゃない」
それは仕方ないというか、元々肩にかからないくらいのおかっぱ風に切り揃えていた僕の髪型は、一カ月の家出期間中にずいぶんと伸びて、今は肩に触れるくらいのセミロングになっていた。
「なぁ、お嬢ちゃん達、付けるんなら買ってくれよ」
髪留めを売っていた出店のおっちゃんに言われた、しかしサーフィアさんは僕が何か言う前にあっという間に会計を済ましてしまう。
さっきからこんなのばかりである、出店を見てはサーフィアは僕にプレゼント、プレゼント、プレゼント。
「サーフィアさん、買って貰ってばかりで申し訳ないんですが……」
買って貰った髪留めは付けたままだ。
「気にしなくていいわ、物で釣る作戦は有効って書いてあったの」
それを言ったらおしまいではないのだろうか……意外とサーフィアさんは恋愛経験が少ないのかもしれない。
昼も過ぎ、デートのおひらきにはまだ早いがそろそろいい時間である。後三十分ほどで御前じゃない御前試合の二回戦が始まる、今日も今日とて準備などして無いが多分大丈夫だろう、そういえば昨日のス……ス何とか先輩が僕を目の敵にしていた理由も聞けなかった、まぁいいさ目立てば叩かれる、これはどこの世界でも同じ、2ちゃんねるとかもうトラウマになった。
「そろそろ二回戦の時間ね……頑張らなくても勝てると思うけど頑張ってね」
苦い記憶を呼び起こしているとサーフィアさんが激励? してくれる。
今日も早く終わるといいな。