謝罪行脚
本日後5話くらい……
僕を入れたら七人の小人、僕を入れずに六人の子供達は女の子三人男の子三人だ。この度僕の家で働くことになったこの子達を紹介していこうと思う。
まず一人目、僕の妹候補で六歳のハルノちゃんだ、美しい金髪だがサーフィアさんのような力強さはなく、まん丸の目が愛らしい幼女。
次は五歳の男の子でタヤ、この子は男なのだが小さい顔に大きな目、黒髪の髪型こそ男の子だがどこか僕と同じ臭いがする、しかし性格は悪ガキそのもの、マイブームは僕のズボンを降ろすことらしい。
お次は二人まとめて、ニルヤとニルナという双子の女の子で五歳、どちらも真っ白な白髪が腰までかかるロングヘアに両目が赤色、はじめこそアルビノ? などとにわか知識で聞いてみたものの特に不自由もないらしい。何故か僕のことをお姉様と呼ぶ。
さらに二人纏めて四歳の男の子二人、名前はマルクとマシュー、二人は双子でも何でもないが同い年のせいかいつも二人でいる。マルクはプリン頭を短く切った変な髪型、マシューはマシューだけに茶髪をマッシュルームヘアにしたシメジみたいな頭の男の子だ。二人ともタヤに僕のズボンを降ろす極意を学んでいる。
なぜこんな解説を今しているかと言うと、今まさに六人がメイド服と執事服を着て僕を起こしに来たのだ。
マリーナ鉱山から帰った翌日、疲れた身体を癒したいところだが一ヶ月も無断欠席した学園をこれ以上休む訳にはいかない。毎朝僕を叩き起こす役目はティナの仕事なのだが今日からこの子達になるのかもしれない、六人もいらないだろ。
起こす前に僕が起きたことにハルノちゃんがあわあわと戸惑っていると、代わりにニルヤ&ニルナのコンビが僕に挨拶をする。
「「おはようございますエディお姉様、ニルヤにします? ニルナにします? それともハ・ル・ノ? 」」
ハルノちゃんが顔を真っ赤にしてニルナとニルナをぽこぽこと叩く、とても愛らしい。
しかし誰がこんなこと教えたのだろうか……ティナに違いない、十年後を楽しみに待とう。え? 十年でもダメだって? 大丈夫大丈夫、この世界は十五歳で成人だから。
「……その台詞は僕以外には言うなよ? 」
そらそろアラトにロリコンのレッテルを貼られそうだ。そう言いながら自分のベッドから降りようとすると脚が絡まって転げてしまった、自分の脚を見ると寝間着に着ていた筈のズボンだけが、膝下まで下がっている……
タヤを見ると目を逸らされた、この子供達を預かったのは間違いだったかもしれない……
いつまでも遊んでいる時間はない、今日はいつもより早く学園に行き、レーナ先生に謝らねばならないのだ。僕はさっさと身支度を整え子供達を連れて朝食に向かう。
「おはよう、こうして家族が揃うのも久しぶりね」
母さんが嬉しそうに、いつもよりほんの少しだけ豪華な朝食を運んでくる。本来はメイドの仕事なのだが母さんは自分ですることも少なくない。
「おはようございます、母さん父さん」
父さんも昨日のことを引きずったりせず、僕を見て微笑みながら席に座る。
一ヶ月しか経っていないがこの光景がひどく懐かしく感じる、まだまだ僕は親離れできそうにない。
一ヶ月ぶりに学園の制服に袖を通した僕は、始業よりも一時間ほど早くに学園に着き、レーナ先生の元へ向かった。先生は僕を見て驚いた後、座ったまま僕と向かい合って話しかける。
「はぁ、突然来なくなったと思ったら今日いきなりですか、本当にエディルトス君は迷惑な生徒です……」
先生は机に肘をつき、こめかみをコンコンと叩いている。しかし一ヶ月前よりも明らかに血色が良く体調も良さそうだ、なんだかんだで僕のいない一ヶ月を楽しんでいたようだ。
「えっと……御心配をかけてすいませんでした」
父さんから聞くと、僕の帰りが余りに遅いため、両親だけでなくここの学園の教員までが捜索活動をしていたらしい、本当に沢山の人に迷惑をかけた、今日から当分は謝罪行脚して回るつもりだ。
僕がレーナ先生に頭を下げ謝罪を伝えると先生は目をパチクリとさせ不思議そうに僕を見る。
「……? どうしましたか? 」
そう問いかけると先生は我に返って僕に言う。
「……いえ、エディルトス君はいつも謝罪より先に言い訳をするものですから……少し驚いてしまいました、でもそれ以上に無事で何よりです」
レーナ先生は呆れと安堵の混ざったため息をつく。
「それで、一ヶ月も無断欠席したエディルトス君へのペナルティなんだけど」
なんと、なんとなんとペナルティが有るらしい。まぁ当たり前か、トイレ掃除とかは嫌だなぁ。
「まず一つは一週間後にある魔法祭での御前試合、エディルトス君に来ていたシード枠が取り上げになりました」
んー、まぁそれくらいなら構わない。一回戦が増えるだけだし。何より前世でシード枠を貰ったにも関わらず二回戦負けという恥ずかしい成績を残したことがある。
「他にはどんなのがあります? 」
「次に、これはペナルティというより私からのお願いなんだけど。アラト君のことでね、エディルトス君は成績はいいから問題無いのだけれどアラト君はそうゆう訳にもいかないのよ、だから罰だと思ってアラト君にも魔法を教えてあげてくれる? 」
仕方のない奴だ、僕に尻拭いばかりさせる。いつか纏めて支払って貰わねば。
「そして最後に……」
レーナ先生が渋い顔で付け加える。
「まだ有るんですか? 」
「えっと……これは罰というか……サーフィア会長がエディルトス君が帰ったら引きずってでも連れてきなさいって……」
……なぜ教師のはずのレーナ先生が生徒のサーフィアさんに命令されているのだろう。
それにしても婚約を断って以来一度もサーフィアさんに会っていない、久しぶりにサーフィアさんに会いたいような、会うのが怖いような。