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最強魔導師だって嫉妬する  作者: rainydevil
学園編
32/69

死ぬのは一回で十分です

数日前投稿した32話はまだ早かったと思い削除しました。m(__)m

読んでしまった方には申し訳ございません。

厚い壁越しから衝突事故のような音と振動がくり返し伝わってくる。


僕の言い訳に耳も傾けず、地龍は何本もの土でできた槍を僕に放ってくるのだ。

はじめこそ透明度の高いアイスバリアを盾にしていたがものの数十秒で砕かれ、仕方なく厚さ十センチほどの鋼の盾を造り何とか凌いでいる。

『ほらほらどうした? 特別な人間! かかって来い! 』

槍投げに飽きたのか、今度はいかにもやっつけで造った直径1メートルほどの岩の塊を雨のように降らせてくる。

(こっちは一発なのに、そっちの方が卑怯じゃん!! )


土の槍が飛んでこなくなったのでボロボロになった鋼の盾を捨て、魔法で飛び回って岩の雨を躱す。

(……ちょっと掠った!! 血でてるよほらっ!! やめてほんと)


攻勢に回ろうにも魔力も無ければ敵の弾幕も潜れない。

『……羽虫のように鬱陶しいやつだな…、一発くらい当たりにこんか』

(一発で死ぬから躱してんだよっ!! )


当然だが文句を言っている暇はない、隕石のように岩石が次々降り注いでくるのだ。残りの魔力も少なく、撤退も視野に入れつつまずはこの攻撃をやめさせる。


「ウインドッッ!! 」

風を起こすだけの初級魔法だがここで使えば目くらましの砂嵐が出来上がる。砂嵐に囲まれた地龍は僕を見失い、一旦岩石の雨が止む。


『相変わらず卑怯な羽虫だな……出てこい人間!! 』

「うっせーーっ!! それは僕サイズまで縮んでから言え!! 」

散々言われたのでここぞとばかりに言い返しておく。



『そこかゴミ虫っ!!! 』



僕の声に反応した地龍がこちらに岩の弾丸を飛ばしてくる、大人気がない。

(ていうかゴミ虫は言い過ぎだろ、死ね)


いつまでも足止めはできない、さらに言えば高威力の魔法を撃つほどの魔力も残っていない。しかし打ち出せばしなくとも土魔法で金属を生成するだけなら何とかできる。


地龍の真上の真上、自分でも見えないが上空約1000メートルあたりに鉛製の二本の矢創り出す。魔法でエネルギーを与えずとも自由落下で勝手に威力は増す、後は矢が落ちるまで地龍をここから動かさないことだ。

ちなみに何故鉛かと言うと、単純に体積あたりの重さが大きい、要は同じ大きさのゴムボールと石のどちらが重い? という話だ。



地龍が痺れを切らして暴れないギリギリの時間で砂嵐を消し、両手を挙げ降伏を見せつけながら地龍の目の前に降り地面に立つ。




「……話し合おう」

お互いせっかく口があるのだから。



『……話し合う前に攻撃してきたのはお前ではないか』

龍の表情なんて読めないが呆れていることだけは分かる。というか龍に話が通じると思う奴のほうがどうかしてると思う。


「まぁそこはごめんなさい? こっちも悪かったよ、でもさ、結局傷一つないし……それに比べて見てよほら、キミの攻撃で僕は怪我をした、とっても痛い」

そう言って僕は岩で擦りむいた膝小僧を見せる、血がダクダク……いやチョロチョロ流れている。


『……むぅ、確かに』

あ、納得するんだ。意外とチョロいね。


「……ね? だから一旦水に流して話し合おうよ、僕にも事情があるんだ」

『ふむ、久々に強者と闘えたことに気分が良いからな、いいだろう』

さっきゴミ虫とか言ってきたくせに、ゴミドラゴン。







『……ふむ、なるほど。私がここにいるせいでお前達の仲間が助け出せない、というわけだな? 』


時間をかけ、懇切丁寧に事情を説明する。

「なんなら今からどっか行って明日に帰ってきてもいいからさ」

『……お前、本当にクソ野郎だな』


呆れられても構わない、何故ならこのマリーナ鉱山にもコルトにもマルタヒにも何の義理もない。地龍を何処かにやれと言われて、帰ってきてももう僕は知らない。

『とは言っても私にも事情があってな……』


そう地龍が言ったとき、何かが風を切るような音が鳴った。上空の矢が音速に達しソニックブームを起こしているのだろう。しかしソニックブームは音速の340m/sを越えるとまた徐々に消えていく、自分の矢で死ぬ、なんてことにはならないだろう。


ソニックブームの音で矢がバレないようにウインドの魔法で風を演出する。



『私がここ最近ここにいる理由はな……

地龍が語り始めた瞬間、ドスッっと低い音とともに灰銀色の光沢を放つ矢が、地龍の横10センチほどの地面に突き刺さった。




『…………』

「…………チッ」




一本目は残念、もう一本いってみよう。


『……おい、お前。これはなぁっ!? 』


地龍が何か言おうとした瞬間、二本目の矢が金属音と地龍の鱗を割る音を出して、地龍の胴に深々と突き刺さった。


「 100倍返しだっ!! ざまあみろバーカ!! この際だから言っておくけどな、僕を羽虫呼ばわりしてたけど、その羽虫を必死になって追い回すお前の方が馬鹿なんだよ!分かったかこの駄龍がっ!! 後僕は羽虫でもゴミ虫でもないから、エディルトスだ、エディ様と呼べ。それと僕が小さいんじゃなくてお前がデカすぎるだけだからな、忘れるなよ? 」


地龍が動かないことをいいことに言いたい放題しておく、流石に自分でも自分の器が小さいのは分かる。しかし勝ちを確信してから煽るのが僕のやり方です。


「……まだ言い足りないな、後は……」

『もう十分か? 』

「……あー、うん。ちょっと言いすぎたかも……ごめんね? 」


地龍はそれまで下げていた頭を上げ、僕を向きながら再び姿勢を戻した。


『ここまでやられたのは何千年ぶりだったか……』


そう言いながら地龍は鉛の矢が刺さった部分を大きくうねらせ、その割れ目からまるで脱皮をするように灰色の肌を脱ぎ去っていく。


しばらくかけて現れたのは、先ほどとはうって変わり、赤黒い鱗を纏った龍だった。どうやら今まで地龍の鱗だと思っていた砂色の皮膚は土魔法で作った鎧で、4本の脚は砂を掻きやすいようにヒレ状にしていたようだ。さらに驚く事に、砂の鎧の中に大きな二枚の翼を折りたたんでおり、そのうち片方の翼に僕の放った矢が鎧越しに貫いていた。


約60メートルほどの体に鱗を纏い、背に二枚の翼を持つ四足歩行の龍が僕達が地龍と呼んでいた龍の正体だったのだ。

砂の鎧を貫いた矢は鎧によって軌道がずれ、龍本体ではなく翼だけを貫いている。



「……なんでもするので殺さないでください」

流石に万策尽きてもうできることは命乞いだけだ。

『二度も同じ手に引っかかると思ったか? 』

思いません。


『……もう落ちてこないな? 』

龍が疑わしげに空を見て、僕に聞くので必死に頭を縦に振り肯定する。



『……そんなに怯えなくとも、もう戦う気はない』

「……本当に? そう言いながら槍とか落としてこない? 」

『そんなことするのはお前だけだ……』

念には念を、とりあえずすぐに飛ぶ準備だけはしておく。

『今の状態でお前の一撃を貰うとこちらもタダではすまんからな、それにこの姿になった時点でこちらの負けだ』

「……本当に? 殺さない? 絶対? 」

一撃目を撃つ魔力はもう無いが、地龍が警戒してくれるなら余計なことは口にしない。


『話を聞け、鬱陶しいな。……それとお前、何でもすると言ったな? 』

「死ねとか以外なら! お願い殺さないで!! 」

『……お前、恥ずかしくないのか? 』

「無いです殺さないで!! 」


死ぬのは一回で十分です。


『……まぁいい、殺さないから私の言うことを聞け。むしろお良い物をくれてやる』



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