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最強魔導師だって嫉妬する  作者: rainydevil
学園編
29/69

負け組の人間

四匹のワイルドウルフがギャンギャンと鳴きながら一斉に飛びかかってくる。

一匹を空中で岩の弾丸を撃ち込み風穴を開け、もう一匹を魔法刀で横に一閃、残りの二匹は土魔法にって地面から隆起した土の槍に貫かれる。


だいぶ慣れたものだ、オークに追いかけられた日から3日、時間ができたのをいい事にティナがどこからともなく魔物を連れてきて僕と戦わせる。しまいには魔物を応援しだす有様だ。


「……つまらないですね、行きましょうか」

アラトもそうだがいちいち突っ込んでいてはこちらが持たない。

ティナの魔法刀を僕が使っていることもあるがもう戦っているのはほとんど僕だけ、アラトなんてファイアーボールで焚き木をつけるくらいだ。



喚いても仕方ないので重力魔法を使い再び馬車を持ち上げる。最近お馬さんが荷物持ちが僕に変わったことに気付き、ヒィンヒィン舐めた態度をとってくる。


マリーナ鉱山に向かって今日で10日目、僕達の進む道は次第に森が薄くなり、砂漠や岩場を見かけるようになってきた。先はワイルドウルフだったがサンドリザードと言う2メートル程で灰色のトカゲのような魔物も見かけるようになった。

さらに言えば僕達が追いかけている子供達を連れた馬車も近づいている、なぜなら馬車の車輪がつけたであろう二本の溝が地面に刻まれているからだ。このままなら今日か明日には追いつくかもしれない。



それはそうと、そろそろ追い付いたときどうするか考えなければならない。当たり前だが力づくで子供達を奪えば犯罪になる、もし見つからずに子供達を取り戻せても、子供達は見つかることに怯えながら生きていかなければならなくなる。お金の力で何とかなるのが一番なのだが、まず奴隷一人当たりの相場もわからない。


「なぁ、子供一人ってどれくらいするんだ? 」

聞き方を間違えた。


「エディ様……長旅で色々辛いでしょうがもう少し我慢しましょう? ね? 」

ほれ食いついた。


「はいはいもういいよ、真面目に答えてくれ」

「そうですね、エディ様の財産を使えばおそらく全員分取り戻せはするでしょう」

「おそらく? 」

「はい、もし鉱山主が金でなく純粋な労働力を求めている場合はその限りではないかと」

ふむ、確かにお金があっても人手が足りないならお金よりも欲しかろう。最悪僕が鉱山に出向いて、土魔法でザクザク掘るのも悪くはない。一番の問題は向こうが此方のワガママを聞いてくれるかだ。


「ちなみに僕の全財産ってどれくらいあるんだ? 」

どうせティナに全て管理されていて、自由に使えるお金などないので気にしたこともなかった。


「……実はドラゴンフライの一件、王だけでなく他の貴族達からも多くの謝礼や報酬が届いております、さらには数年後エディ様が貴族となったときのパイプや賄賂、謁見時にエディ様の容姿を見た他貴族が是非娘を嫁がせたいなど。様々な理由から集まっており、領地の一つや二つくらいなら軽く揃えることができる程です」


……貴族ってめんどくさっ! 日に日になりたくなくなってくるんですけど。お金いっぱいくれるのは嬉しいけど使うとこないし、異世界来たんだから奴隷ハーレム! みたいなのもできなくはないけどそこまで割り切れない。




「おっ、もしかしてアレじゃないか? 」

アラトが指差した先には、まだ遠くて小さく見えるが三匹の馬に檻らしき物を運ばせた物々しい馬車が立ち往生していた。

素早く近づいてみると何やら馬車を引いていた男達が甲冑と大剣を背負った大男数名と口論している様子だ。


まぁ簡単に言えば山賊の類いだろう、ここへきてテンプレ展開かよと思ったが流石に子供達を奪われる訳にはいかない。

「……山賊といいますか、大して変わりはしないのですが、身なりを見る限り冒険者のようですね」

確かに防具を着込み剣を持つ姿はどちらかと言えば冒険者に見える。


「でも冒険者が山賊の真似事をするのか? 」

「一概に全てがとは言えませんが、依頼で王都から離れた冒険者が犯罪行為に手を染めることは珍しくありません」


確かに魔法が有るからといっても、小説のように水晶に手を置いたら犯罪歴が分かるとかそんな便利グッズはない、バレなければ確かめようがないのだ。


「それに、冒険者が全て悪いとも言えないのですよ。冒険者と言えば人間の最終地点という風潮のせいで、どんな依頼も足元を見られます、彼等も生きていくのに必死なのですよ……」


……偽善かもしれないし、あるいは最近のアラトの影響を受けたからかは分からないが。ほんの少し、ほんの少しだけこんな世界を変えたいと思うようになった。



「……でも犯罪は犯罪だよな? 早くあの子達を助けよう」

同情はするが、アラトの言う通り子供達をくれてやる訳にはいかない。







「突然すみませんが、双方とも此処で揉めるのには少し邪魔ではありませんか? 」

第一声としてティナに声をかけさせる、もちろん威嚇として魔法刀も返している。これは子供の僕達が話しかけても取り合って貰えないかもしれなかったからだ。


「……なんだ? 綺麗な顔して物騒なもん持ってるじゃねえか、今取り込み中なんだよ少し待ってろ」

四人いる冒険者風の男達の内、リーダーらしき尊大な態度を取る男がティナに返した。


「そうは言われましても私達もその馬車に用がありまして。冒険者の方々とお見受けします、このことは黙っておきますのでここは引いていただけませんか? 」

ティナはガチャリと音を立て、睨みながら魔法刀を腰の辺りに固定した。


「……チッ貴族連中かよ、……だがそっちは三人だけのようだな、なんの旨味もねぇが口止めはさせて貰うぞ」

僕達の馬車を見た男が貴族だと言い当てた、まぁ確かに子供達を連れ去った馬車と見比べると、僕達の馬車は所々装飾がしており、高級感がでている。

そんなことはどうでもよいが、どうやら引いてはくれないようだ。


襲っていた馬車から離れ、僕達を囲むように四人と男達がニヤニヤと下衆な顔をして近づいてくる。

「よく見たらこのねえちゃんだけじゃなくて後ろのガキも悪くねぇな、楽しませて貰うぜ? 」

まさか生であの有名な『倒して犯す宣言』を聞けるとは思わなかった。男なのに。


これくらいならティナ一人で十分だろうし、たまには働け僕のメイド。

「おいおい、メイドの女一人に任せて自分達はいいご身分だな? え? 嬢ちゃん坊ちゃん」


まず嬢ちゃんじゃないし、アラトなんてただの貧乏野郎だ、全然的を射ていないぞ冒険者諸君。



僕達が素知らぬ顔をしたのが気に食わなかったのか、一番小者風な一人が先に片手剣のようなダガーでティナに斬りかかる。

ティナが魔法刀を鞘から抜き出すと、同時に冒け…敵Aの持つダガーは鐔から先がなくなった。


前から思ってたけどその刀切れすぎじゃない?


ティナは茫然とする敵Aの胴を一閃し、どうやったのか防具だけをバラバラに刻んだ後、踏み込んだ脚のまま魔法刀の鞘でAの頭を振り抜いた。

気持ちのいい音と共にAは崩れ落ちる、まるでどこかの抜刀斎みたいだ。


Aの有様を見て怯んだのか先ほどまで元気いっぱいだったB、C、Dは一言も発さない。


「……この程度ですか? 」

うちのメイドは煽ることも忘れない。



「……おい、一斉にかかるぞ」

素直に帰ればいいものの、しっかりティナの挑発に乗ったBCDは一斉にティナに剣を振りかぶる。


BCDの振る剣筋をティナは難なく躱し、代わりに空振りするたびその剣の先を少しずつ魔法刀で短くしてゆく。

ヒラヒラと躱しながら嗜虐的な笑みを浮かべ、三人の剣を短くするその姿はもう魔王とかそんな感じに見える……




結局ティナに一撃も加えれなかったお三方は肩で息をしながら刀身の無くなった剣を地面に叩きつけた。

「クソっ!! なんだこの化け物はっ!! 」

僕もそう思う。


「もうよろしいでしょうか? うちのわがままお坊ちゃんが暇だと申しておりますのでそろそろ終わりにしましょう」

人のせいにするな、飽きただけだろ。


そう言ったティナは刀身に風を纏わせる、むしろ今まで使っていなったのか。



「クソっ……今日は無理だ、逃げるぞお前ら」

明日も無理だがやっと悟ったのか、BだがCだかDだかのボスらしき男が逃げるように僕達の来た道へ走っていった。


おい、Aも連れてってやれよ。






「「「お姉ちゃんかっけぇぇぇーー!!! 」」」

檻の中に囚われていた子供達の中、男の子達がティナの戦いをみて興奮した様子で目をキラキラさせていた。

ティナが僕に目を流し、勝ち誇ったようにふっと笑う。



美味しい所をティナに全部持って行かれた。


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