◇閑話 クロナ・ワイズガード
クロナ視点の閑話を入れてみました。ノリと勢いなので悪しからず。
*前話の最後、サーフィアさんとの会話を少し加筆しました。
初めまして。私はクロナ・ワイズガードと申します。いったい私は誰に言っているんでしょう。
まぁそんなことはどうでもいいのです、今私は非常にモヤモヤとしています。というのも私の師匠でもあるエディ君が、なんと第二王女であるサーフィア生徒会長と婚約する、という話をお爺様から聞いたからです。
いえ、別に私がエディ君を好きだとかそんなことはありえません。まぁ確かにかわいらしい顔をしていて明らかに私よりも整った顔をしていますが? 私の好みの男性はもっと王子様のように頼り甲斐のある男性です。
あ、そんなことを考えているとエディ君が教室に入ってきました。
「……」
なんということでしょう、私の顔を見て固まったエディ君は私を無視して通り過ぎようとしました。
「エディ君⁉︎ 無視するとはどういうことですか⁉︎ 」
「い、いやー気づかなかったなぁー。お、おはようクロナ」
いい度胸です、さぁ問い詰めましょう。
「サーフィア王女とのこと! お爺様が嬉々として話してくれました! どうゆうことですか⁉︎ 」
あ、エディ君がお爺様と聞いて本気で嫌そうな顔をしました。本当に分かりやすいですね。
どうやら問い詰めたところエディ君はサーフィア王女との婚約に消極的のようです。
何度も言いますが私がエディ君のことを好いているなどありえません。ですが、なぜか私の女の勘が逃した魚は大きいぞ。と囁くのです。
正直エディ君は餌が無くとも釣れそうと言いますか、餌も針も糸も、釣竿すら無くとも釣り人に喰いつきそうなお魚さんだと思います。
「おはようクロナちゃんエディ君と何話してたの? ケンカ? 」
お友達のニーナさんが話しかけてきました、この方は私が学園でできたお友達です。時折エディ君を監禁したいだなんて妄言を吐くこと以外は素晴らしい方だと思います。
「おはようございますニーナさん、ケンカではありませんよ」
危なかったです、サーフィア王女がこの国の王女様であることは秘密なんでした。
「ふーん、私からしたらエディ君と話せるだけでも羨ましいだけどなぁ」
「……普通に話したらいかがですか? むしろエディ君の方が話しかけて欲しそうに見えるんですが」
「クロナは分かってないなぁ〜、クロナはかわいいからエディ君と釣り合うけど。私達凡人からみたらエディ君なんて高値の花なんだよ? 」
そうでしょうか? 私からみたら、戦闘力はともかく普通の人にしか見えません。
彼はとにかく自分と他人を比べ、自分を下卑します。
魔法という唯一無二の物があるのに、彼は決して魔法を自分の力だとは言いません。
「話したことがないから高値の花に見えるんですよ。エディ君は特別優しかったり気遣いができたり、そうゆう王子様みたいな所は一つもありませんよ」
「……クロナちゃんってエディ君のこと嫌いなの? 」
そんなことはありません、彼は本当に優秀ですし、私の師匠さんでもあります。
ですがその能力と生き方がどうにもチグハグな気がするのです。
「そんなわけないじゃないですか、ただエディ君は王子様じゃないってことです」
「王子様って……クロナちゃん王子様が好きなんだ、かわいいね」
……恥ずかしいです。
ニーナさんと話した後、今日の授業が始まり、そして放課後になりました。
エディ君はレーナ先生の授業で質問を当てられ、答えれたことに喜んでいました、彼の魔法を見る限り答えれて当然なのですが、無邪気に喜ぶ彼は本当に普通の人です。
しかし、そんなことよりも重大に事件が起こりました。何とサーフィア王女が私達のクラスへ突撃してきたのです。
「エディ君久しぶり! さぁ今から私とデートに行きましょう‼︎ 」
サーフィア王女の目が凄いです、血走っています。
「……突然どうしたんですか? 」
「そのままの意味よ、エディ君に拒否権はないわ」
サーフィア王女は一枚の何やら高級そうな紙をエディ君に見せつけました。
そこにはなんと『エディ君を一日好きにできる券(再利用可)』なんて書いてあるではないですか、しかも再利用可とは狡いです。
これにはエディ君も渋い顔ですが同意の上のようです。
二人は気付いていないのでしょうか、エディ君に男子が向ける視線がサーフィア王女に女子が向ける視線が、とんでもない事になっていますよ?
そんなことはお構いなしにサーフィア王女はあっという間にエディ君を攫っていきました。
「……クロナちゃん、やっぱり私、エディ君は監禁するしかないと思うの」
ニーナさんの目から光が消えています。少しだけならいいかな、なんて私も思いました。