再起する凡人
痛かった、それはもう痛かったし死ぬかと思った、語彙力が乏しいのでこれ以上に表現できない。
死んだはずだった、なにせ僕の体は大型トラックにはねられ三回バウンドしながら公園の向かいの道路まで吹き飛ばされた後、ペキペキと色々大事な所が潰れる音がしたからだ。
なのに何故意識があるんだろう、真っ暗だけど意識はハッキリとしているし痛みもない。
これが死後の世界なのだろうか? にしてもこのまま真っ暗闇の中意識だけでふわふわするのか?
もしそうだったら発狂してしまいそうだ。
とりあえず目だ、目を開こう(たぶん)目である場所に力を入れてみる。
するとぼんやりと目に光が射し込んでくる、良かったと安堵すると同時に目の前にセミロングに白銀の髪を持つ自分と同じか少し上くらいの年齢の美女がいた。
(ひぃぃい‼︎‼︎⁉︎ )「お、おぎゃぁあ‼︎ 」
……普通にびっくりした、当たり前だろうたとえどんな美人であろうとも、目の前に突然人の顔があったら驚くに決まっている。
(ん⁉︎ ……何か変な声が聞こえた気が)
そんな事を考えていると目の前の女性が話しかけてきた。
「はじめましてエディ、私はエメリア、貴方のお母さんよ」
多すぎる情報量に脳の処理能力が追いつかない。
僕は考えることをやめて目を閉じた。
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少し考えるつもりが寝てしまっていた。こんなときなのに快眠である、気持ちよかった。
目を覚ましたとき周りには誰も居なくて、良かったと安堵しつつ起き上がろうとする。
あれ? ……手も足も上手く動かない。
慌てて自分の体を見てみる。
「ぁぅあ? 」(なんだこれ……)
とりあえず自らの小さな息子を確認し、安堵した後真也は再確認した。
どうやら転生したらしい。
受験勉強の合間ライトノベルを読み漁っていた僕には直ぐに理解できた。
むしろあれほど自分にコンプレックスを抱えていた僕は戸惑いよりも興奮が勝った。
(やった……これでやり直せる、もう見上げる人生は終わりだ、今度こそ誰かに認めさせてやる‼︎ )
そう思ってふがふがしているうちに、再び眠りについていた。
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この体になって2年が経ち、この世界についてもそれなりに分かってきた。
どうやら僕の新しい名前はエディルトス・ディアマン、無駄にかっこいい名前になっていた。
そしてあの銀髪の美女は僕の母親のエメリア・ディアマンというらしい。
それにこの世界には魔法というものが存在するらようだ、母が手の平に向かい『ライト』と唱え光の球体を作って見せたからだ。
さらにこの世界は貴族社会が根付いていて僕の父であるアウル・ディアマンは一代限りの領地を持たない名誉貴族なそうだ。
どうせなら領地も金も自分に残してくれよと思ったが美形である両親のDNAだけで我慢する事にした。
さらに、やっと僕は待ちに待った自分の手足で動く事ができるようになったのだ。
実のところ僕はこの2年焦りに焦っていた、というのも転生したはよいものの肝心なチートを持っていなかったからである、さらに中身は変わらない自分自身のまま、このまま何もしなければ同じ人生が待っている。
しかし何かしようにも言葉は出せず動く事すらままならない、焦りは募るばかりだった。
こうして晴れて自走できるようになった凡人エディは父の書斎にある【魔道書 入門編】を手に取った。