この世界の生き物
人生初の戦闘描写です、温かい目で見てください。
異世界初ピクニックにはもってこいの晴天だ、右を向いても左を向いても青々とした木々がズラリと並んでいる、はっきり言って飽きる。
馬車が一台通るのにギリギリの砂利道を僕達は馬車に乗って進んでいた。
「暇だとは思っていましたがここまでだとは思いませんでした」
「実践授業だからってそんなにぽんぽん魔物が湧いてこないわよ、それにまだ王都に近いこの道で魔物が出たらここの警備担当の魔導師の首が飛ぶわ」
「……魔導師って結構シビアな職業なんですね」
首が飛ぶのかー、やっぱ魔導師は無しの方向で。
「まぁね、だってもし魔導師が見逃した魔物が王都に下りてきたら大変でしょ? 」
「確かにそうですね、そういえば僕がまだ魔物を見たことがないのは働き者の魔導師さん達が頑張っているからなんですね」
つまり魔導師さんは社畜さんなのです。
「でも今は平和で戦争もないんだから『国のため〜』とか言いながら魔物倒してたら、お金も名誉も男の娘も、何でも好きな物が手に入るわ」
サーフィアさんも結構僕に似てるんじゃないかなぁ。
「サーフィア……あなたそんなでよく生徒会長になれたよね」
そう言ったのはシタさん、薄茶髪にストレートの髪を肩辺りで切り揃え、髪と同じ薄茶色の目がクリクリとしたサーフィアとは正反対の大人しめの美少女だ。
因みに入学式後の試験でキマシタワーを建てていた人だ。
(サーフィアさんといいシタさんといい黙っていれば文句なしなんだけどな)
二人とも恋人はいないそうだ、それを聞かれたサーフィアさんは何故かそわそわしていた、僕は鈍感系難聴主人公ではないのでそれが何を意味するかよく分かる、やったねエディ。
そんな他愛の無い話をする事数時間、ついに魔導師の管轄外の道に入った。
今までの砂利道とはいえ清潔に保たれていた道とは一片、周りの木々は種類を変え、不安を煽るかのような薄暗い道にはところどころ魔物の足跡のようなものまである。
「皆、そろそろピクニックは終わりよ、いつでも魔物を向かい撃てるように準備をして、エディ君は魔導具で私達の少し上空から敵の偵察をお願い」
サーフィアさんのだらしのなかった顔が生徒会長らしい鋭い表情になる。
慣れた様子で馬車に乗っていた三人の生徒は馬車を取り囲む形で配置につく。
僕も言われた通りにグラヴィティブーツを起動させてサーフィア達の頭上に上がり周りを見渡す。
「今の所目に見える範囲に敵はいません」
「ありがとうエディ君、一応引き続き偵察をお願い」
「それにしても完全な飛行魔法かぁ、良いなぁ」
シタさんが羨ましそうに見上げていた。
しばらく馬車の周りを五人で囲むように進んでいると
、上空から十匹ほどの何やら小さな生き物の集団が目に入った。
「サーフィアさん、この道の次の右折先に何かが十匹ほど居ます」
ここはもはや道とは言いづらく、木の生えていない場所が必然的に道と言えるくらいだ。
「エディ君、それは茶色の肌に私達の半分くらいの大きさかしら? 」
「はい……猿と人間の間くらいの生き物です」
「さるって言うのが何かは分からないけど、きっとゴブリンね、十匹くらいなら問題ないわ、迎え撃ちます、私とシタが前に立つのでマインとラルは馬車の左右から私達二人と馬車を守りながら他に敵が居ないかを確認、エディ君は上から後方の敵を狙って」
手慣れたようにサーフィアさんは四人に指示を飛ばす。
ちなみにこのマイルさんとラルさんは双子の姉妹だ、マイルさんは赤茶色の髪を顎を隠すくらいのショートに、ラルさんは少し青みのかかったショートヘアだ。二人とも双子なだけあって顔はよく似ている、大きな目にニコニコと幸せそうな口の美少女達だ。
サーフィアの指示が終わった直後道を曲がってきたゴブリンの群れが僕達に気づいた。
「「「「ギャギィギャ!! 」」」」
初めて目にするゴブリンをよく見ると三頭身程の大きな顔はところどころただれ、肌色とは言い難いほど変色し、ボロボロの布を纏い刃の欠けた剣を持つ姿は人間のなり損ないのようでただただ気味が悪かった。
「シタ! 行くわよ! 」
「うん! 」
そう言ったサーフィアさんは質素だが美しく装飾されたレイピアを、シタは剣にしては薄く短い短剣を二本持ってゴブリンとの距離を詰める。
「雷球! 」「風刃! 」
ゴブリンとの距離が5メートルになったときサーフィアさんの魔法がゴブリンを焼き切りシタさんの魔法が切り裂いた。
味方がやられると思っていなかったのかゴブリン達が慌てたように一斉に二人に群がる。
「はぁ! 」
シタさんがゴブリンの剣を受け止めるとサーフィアさんがレイピアでゴブリンを刺し、そのまま電流を流す。
このままでは全滅すると思ったのかゴブリン達が一斉に飛びかかるが、大半は二人の後方から飛来した二つの流炎槍に貫かれる。
マイルさんとラルさんが火炎球の上位魔法である流炎槍を放ったのだ。
残り数匹となったゴブリンは今更になって逃げようと後退し始める。
「僕がやります」
役目が無かったので、ここぞとばかりに逃げるゴブリン達に地面から天にまで上る火柱を作り全滅させた。
ゴブリンの断末魔と共に終わった初めての戦闘は気楽な物ではない。
(……別にかわいそうなんて思わないけど元地球人としては楽な仕事ではないな)
絶対に魔導師なんてならない。
「皆お疲れ様、怪我が有ったら必ず報告すること。それにしても何度見てもエディ君の魔法は凄いわねぇ」
「私も二回目だけどびっくりしたよ、逃げるゴブリンに容赦無しだもんね〜」
「「今の何て言う魔法なの⁉︎ 」」
初めて見る僕の魔法に驚いたのは、同じ炎の魔法を使うマイルさんとラルさんだ。
「うーん、名前は決めてないんですが、あえて言うならメ○ゾーマ……ですかね」
「メラ○ーマか〜、かっこよかったなぁエディルトス君……」
(……メラ○ーマはないな、もう二度と言わないことにしよう)
マイルさんとラルさんがうっとりとした様子で頬を上気させ僕を見つめる、何もしてないのに美少女を落とすこのイケメンフェイス、母さん父さんありがとう。
「マイルもラルもダメだよ、エディ君はサーフィアが先に目をつけたんだから」
「「えーっ」」
「ナイスよシタ!…… と言うわけで今日の野宿用テントの部屋割りは私とエディ君です」
「何がと言うわけよ! エディルトス君と寝たいだけでしょ! 」
「違いますーー! 私はエディ君の監視を命令されてるんですーーこれも仕方なーくなんですから!」
「サーフィア……まずはよだれを拭こうね」
魔法の話だったはずが何故かエディがサーフィアと一夜? を過ごすことになっていた、これはもしや大人の階段を登るかも……




