4 現実と破局
こりゃすっかりイカレてんな。
まあいい、朝まで責めてやるから心配するな。
オレも久しぶりだからよ、クククッ……しっかし本当に馴染む身体だな。
これで13才って嘘だろ。
ふうっ……さて、次だ。何度ヤっても飽きない身体ってのも貴重だよな。
あいつは早々と寝ちまったが、殺しに慣れるとそれが発散みたいになって、こっちのほうはサッパリ言わなくなってきたんだよな。
あいつも殺人機械になりつつあるか。
もっと染めてやろうな。
そうしたら殺しが生活の一部になり、ちゃんと女も抱けるようになる。
その代わり、身体の一部だけが熱くなったとしても、頭はクールなままになる。
こうやって色々と考え事をしながら女を抱き、そして射精に至ろうとも頭はクールなままだ。
上半身と下半身がまるで別の生き物のように感じられて、制御しているような感じになるのさ。
さあ、夜はこれからだ。
もっと責めてやるからな、クククッ……
けど、なんか夢みたいなんだよな。
13才でこんなの、普通はあり得ないからな……
だからそう思うのかも知れないが……
はぁぁ、目覚めたら夢でしたとか、そういうのは無しにしてくれよ……
彼の世界と少年の世界は違う世界と思い込んでいるが、実は同じなのだ。
その訳は……全てが夢の中がゆえ……彼らは皆……殺された者も殺した者も皆……
成熟した人間だけで社会を築くため、生まれた子はすぐに仮想の世界に送り込まれる世界。
その中で生涯を全うした者だけが目覚めた世界でエリートと呼ばれ、事故や病気で死んだ者は一般市民となる。
犯罪を起こして処刑された者や、抗争などで死んだ者達は目覚める事なくそのまま死に至る。
世界はエリートによって管理され、そのせいか犯罪発生率は限りなく低い。
そう、皆が信じている世界は、更なる存在達によって管理される仮想の世界。
全ての存在は睡眠ポッドの中で眠りに就き、いくつもの人生を体験していく。
それは人生のシミュレーション。
その中には勇者の召喚という変わった体験もあれば、異世界転生という体験もある。
そういうありとあらゆる人生を体験し、成熟する事こそシステムの本懐。
恒星間移民船の中の、仮想の箱庭。
現地でのトラブル対策として考え出されたこのシステムで、人間の精神を成熟させるのが目的。
犯罪者達の精神は調整され、新たな赤子として人生体験をする事になる。
突出した才能よりも平均的に高い才能の集団を目指して。
ユーラシア号は太陽系を出て、シリウス星系までの旅を続けていた。
ただ1人を除いてシステムは完璧に人を導いていた。そう、ただ1人を除いて……
そしてその1人こそがこの移民のリーダー。
彼だけはシステムも調整出来ず、彼は人生の体験の結果、どんな存在になってしまうのか、それはシステムにも予想が付かなかった。そして悲劇が起こる。
「全部嘘かよ、ふざけやがって。こんな船、こんな船……壊れちまぇぇぇぇ」
システムに異常発生……システムに異常発生……修復は……不可能……機能……停止……
西暦3548年(移民歴316年)
移民船での出来事は隠され、エンジントラブルでの遭難と発表され、計画はうやむやのうちに闇に葬られた……
はい、夢オチでした。ごめんなさい。