1 召喚と特典
思い付くままに始まりました。きっとハチャメチャです。
くそ、寝坊した……早く、早く、今日は所長と仕事だってのによ。
うっ、赤信号かよ、早く変われよ、もう間に合わないだろ。
くそぅ、何で今日に限って目覚ましが鳴らなかったんだよ。
よし、青にな……何、足が動かない。これ、金縛り? なんでこんな所で。
おい、嘘、だろ、なぁ、これ、もしかして……この足の下の、丸い、光って。
来るのか、アレが、おい、来るのか、召喚が……こんな事がマジで……おい、待てよ、オレには、人生設計がぁぁ……後2人で……達成になるのに、やめてくれぇぇ……
《済まぬの……くそっ、もうチョイで昇進の、はぁぁ、所長に殺されるぜ……なになに、その所長とやらは来れぬのじゃから、そのような事にはなるまいて……》
くそっ、何でこんな事になってんだ。後2人で昇進だったってのに、今日の仕事でそれがクリアするって時に……所長と仕事とか、超ラッキーな仕事なのによ。
《やはり勇者召喚ですか……うむ、じゃからの、ワシにはどうにも出来ぬのじゃ……なら、透明になれるスキルがいい……ほんにそれで良いのじゃな……はい……なればおまけもいくつか付けておいてやろう……はい》
神にもどうにもならんと言われたら、こりゃもう開き直るしかねぇよな。
透明になるスキル、それに若返りに現地の言語、後はアイテムボックスか。
確かにもうあんまり若くはなかったけどよ、そりゃありがたいよ? 若返りとかさ。
だけどな、オレはあの仕事は気に入っていたんだし、後2人で昇進って言われていて、オレはそれを楽しみに……くそぅ。
☆
「おお、勇者よ、私の言葉が聞こえたら、どうか私の元へ」
「あのよ、目の前に居るだろ」
「おお、勇者よ、早く聞き届けておくれ」
「おい、透明ってオンオフねぇのかよ。しかも、声も聞こえてねぇぞ」
「勇者様ぁぁぁ、来てくださーい」
こりゃダメだ、見えねぇし、聞こえねぇらしい。どうすっかな、これから。
確かに狩りは楽だけどさ、素材を売りに行けないじゃないか。
冒険者にもなれないし……透明になれるって聞いたけど、ずっと透明とか聞いて無いよ。
お陰で召喚失敗って事になっちゃって、新たな勇者召喚の話になって……せめて、会話が通じるようにしてくれよな。
言葉は判るけど、話しても誰も聞こえないってまるで幽霊じゃないかよ。
武器とか防具とかはお城の備品を借りたけどさ、装備したら見えなくなるとかどうなっているんだよ。
アイテムボックスはくれたけどさ、モンスター素材は溜まりっぱなしで、食事は泥棒するしかなくて……このままとか冗談じゃないよ。
誰か何とかして……レベルの上がりが早い。
そりゃそうだ、相手から見えないんだから倒し放題だ。
強い相手も全て不意打ちになるからだろうけど、このままじゃ辛いよ。
話し相手が無いって、こんなに辛い事だったんだな。