私、今日ギルドを抜けます
「お前がこんなヤツだとは思わなかった。」
心底軽蔑した声色で目の前の男は私に吐き捨てた。
目の前の男は私が所属するギルドマスターである。
その隣には儚げな少女がいる。彼女は最近入ったばかりの新入りだ。
「なんのこと?」
「とぼけるな!!魔物に奇襲を受けた際、レーナを一人置いて逃げたらしいじゃないか!!回復魔法しか使えないレーナを置いて!!お前の実力なら簡単に倒せた相手に!!」
「いつの話よ。」
「つい先程の話だ!!レーナがたまにはお前と行きたいというから散策に行かせたが。遅いと思って探しに行けばレーナは一人でいて泣いていたんだぞ!!」
「知らないわよ。私が行ってる間にレーナに会った記憶も魔物に会った記憶もないもの。」
「戯れ言を!!以前からレーナに悪質な行為や言動をしていたこともこちらは知っているのだぞ!!」
頭に血が上っているようで、話が通じない。
溜め息を吐きながら周りを見ると好奇心と侮蔑の視線を受け、苛立ちが募り周囲に睨みをきかせた。
「ノイン様。私は大丈夫です。ダリア様が私を嫌っているのは辛いですが…仕方がないことです。」
ノインの服の裾を握り身体を震わせるレーナ。
ノインは心配そうにその手を握った後、こちらを睨み付けた。
「お前がその態度を改めないのならばギルドを抜けてもらう!!例えお前がどんなに強かろうが仲間を裏切るヤツなどこのギルドにはいらない!!」
ざわっ
静観していた周りからざわめきが起きた。それもそうだろう。このギルドが有名になったのも私がこのギルドに所属していたからだ。
しかも、目の前の男にしつこいくらいに懇願されてだ。
ソロで動くと決めていた私は最初は断っていたがノインの熱意に負け、絆されギルドに入った。
だが、それももう終わりだ。
自分の中のなにかがさぁっと引いていったのがわかった。
「あ、あの!!そこまでしなくてよいのでは!?」
レーナは慌ててノインに訴えかける。
「レーナに感謝するんだな。そうでなければ今すぐギルドを抜けてもらっていたところだ。」
「なら、抜けましょう。」
「なに?!」
「別に私がこのギルドにこだわる理由はないもの。元々ソロで動く気だったのだから。こんな茶番に付き合ってられないわ。それじゃあみなさんさようなら。」
「ちょ、ちょっと待ってください!!これまでのことは許すっていってるんですよ?!なにも、抜けなくても!!」
儚げな様子はどこへやらレーナはノインを押し退け前に出てきた。
私が抜けたら困るのでしょう。ギルド内には女性は私とレーナのみ。レーナがハーレムを築いている間に私は彼らのご飯やら時には洗濯やらもしていた。一応女性としてやるべきことはやっていたのだ。それを、私が抜ければ彼女がしなければいけなくなる。まぁ、もしかしたらうまいこと男達を唆してやらせるつもりかもしれないが。
おそらく一番の理由は私と言う悪役がいなくなることなんだろう。彼女は私を悪役に仕立て上げ男達から同情をかうのを得意としていたようだからね。
本気で彼女に惹かれてしまったもの達は私がギルドを抜けることに賛成で、好奇心で見ていたもの達はことの重大さに慌てている。
「レーナ大丈夫だ。俺達は強い。ダリア一人いなくてもお前くらい軽く守れるさ。」
「よかったわね。じゃあね。」
ノインとレーナがいちゃついてるのか揉めてるのかわからない光景と、周りからの雑音を背に私はギルドを抜けた。
さぁ。これで自由だ。
私の好きにやろうではないか。
「やはり、私にはギルドは向かないな。」
少し寂しげに呟かれた言葉は空に消えた。
――――――――――――――
ダリアが抜けたギルドは最初はよかったもののすぐにボロが出始めた。
軽くこなせていたSランクの依頼がこなせなくなった。そのためギルド自体のランクも落とされた。
収入が悪くなるのも仕方がなかった。それでもなおレーナは男達を言いくるめて貢がせていた。
気づいたときにはノインがまとめるギルドは悪評高いものとなっていた。次々にギルドから抜けていくもの達。
レーナに好意を寄せていたもの達もダリアが抜けたことで、レーナの粗が目立ち始めその好意も消えていった。
ギルドを抜ける際、皆、ダリアを見放したことに後悔し、レーナを怨み、ノインを罵り去っていった。
「俺は一体何を見ていたのだろうか。」
「ノイン!!待って、置いていかないで!!助けて!!私は回復魔法しか使えないのよ!!こんなの酷いわ!!」
泣きわめくレーナを魔物の前に置き去りにしてノインは去っていく。
それから数日後、かつて、そのギルドを知らないものはいないと言われていたギルドが解散した。




