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青春のカタチ

なんとなく作品です。

とりあえず、あっさりと読んで欲しい。


恋人ができれば誰だってその人を優先する。

友達なんて二の次で構わない。



それが、正しい。





『ごめんね、今日、彼氏とデートの約束してて…、』

『恋は一瞬だけど、友情は永遠だって言うじゃん?だから、私と李花の絆も永遠だよ!』


私からしてみれば、本当にそうだろうか?そう思ってしまう。

永遠なんてこの世には存在しない。

一番仲がいい友達、遥子に彼氏ができた。

教室で嬉しそうに彼氏の話をしている遥子はとっても可愛らしかった。だから、仕方ないことだってのは分かってる。彼氏ができれば友達よりそっちを優先するのは当然だ。



恋は盲目。



だけど、友情も何が起こるのか分からない。

あの子が私に何を期待しているのだろうか。彼氏ばっかりに呆けて私が本当に平気だと思ってるのだろうか。私はできた人間じゃない。孤独を好むタイプでもない。

私は遥子の彼氏くんに嫉妬をしている。だけど、そんなこと幸せそうに笑っている遥子を前にしては何も言えなくなる。

以前、放課後の教室は遥子ととめどない話をしていた場所だった。だけど、今ここには…私、一人。

外で楽しそうな笑い声。私の心をイラつかせる。

朱色の光が教室に一人でいる私を照らし、床にくっきりと黒い影を映し出す。



なんだか、滑稽だ。




「…あれ、人、いたんだ。」


静寂した教室に急に気だるげな声。私は振り返ってその声の主を見る。


「夏本…。帰ったんじゃないの?」


夏本、と私が呼んだ彼はどこか元気がなくてぼんやりと私を見据えていた。

そして、ゆっくりと私のもとに近づき、適当に机の上に座った。


「フラレタ。」


それは唐突なことで私は思わず「え?」と、間抜けな声を発してしまう。


「最近、電話もメールもなくてさ、久々に『会おう。』って言われたから行ってみれば『別れてください』だってさ。」


素で落ち込んでいる夏本を見て、私はその姿を思わず、遥子に移し替えて想像してしまった。だが、それがとてつもなく最低なことだと感じて、罪悪感に苛まれながらすぐに脳内のその姿を打ち消した。

夏本の彼女は見たことがある。すごく仲が良くて、「相思相愛」ってこんな感じなんだろうなって、心がほっこりする二人だった。さまざまな人が二人のような恋人同士を目指しているくらい憧れの存在だった。


「なんで、そんなこと私に言うの?」


だけど、それをあっさり私に伝えるのが理解できない。私よりもっと身近な人に伝えるのが普通じゃないのだろうか。


「さぁ。多分、誰でもいいから慰めてほしかったのかも。」


「ヘタレ。」


夏本は私の冷ややかな言葉に小さく笑う。

でも彼の言葉に納得していないわけでもなかった。

夏本の仲がいいのは誰だろう?

そう考えてみると「元」彼女さんしか私には思い当たらない。

私は再び夏本の笑顔を見た。

そして少し動揺している。

夏本はこんなに弱々しい男だったろうか。私が知っている夏本は人懐っこくて「彼女が可愛い、可愛い。」と、鬱陶しいくらいいつも自慢しながら、一番幸せそうな男だった。

今の夏本は誰だろう。私の知らない人だ。そこにいるのはただの抜け殻。彼は空っぽ。


「李花はどうしてここいんの?」


「どうしていきなり名前で呼んでんのよ。」


夏本は普段私のことを苗字で呼ぶ。それが今名前で呼ばれて少し気味が悪い。


「いや、この際親睦を深めようかと。」


「彼女に振られて適当に居合わせた私に流れようとしないで。ムカつく。」


そう言って、睨むと彼は自分の不謹慎さに気が付いたのかしょぼくれた顔をする。そして、私も彼がこういう人なんだと、冷静になって彼から視線をずらす。


「で、ほんとにどうしたの?いつも一緒にいる相良は?」


遥子の苗字が出てきて私は自然と不愛想な顔をする。


「彼氏とデート。…私も、夏本と似たようなもんかな。少し…話し相手がほしかった。」


友達に彼氏ができて、自分がここまで疎外感を感じるとは思わなかった。人は知って分かる事実がいっぱいある。


「私、なんか疲れた。遥子はなんかすごく楽しそうで、それが喜ばしことだって分かってるのに。すごくムカつく。なんで私は彼氏のいる友達に期待なんかしてるんだろうって。」


「期待?」


流して欲しい部分に夏本は容赦なく突っ込む。これはあまり言いたくない話だった。でも、もう口に出してしまったから、仕方ないとも思い、嫌々口を開く。


「今日ね、私の誕生日なの。私たちは毎年二人の誕生に祝ってるの。それでね、今年も遥子の誕生日、祝ったの。だけど、…私の誕生日すっぽかして、彼氏とデートって、」


笑えない。

この歳になって誕生日祝いあうって少しバカげてるかもしれない。だけど、昔からあまり祝われたことのない私にとっては嬉しいことだった。私たち二人の純粋な楽しみでもあった。

自分の誕生日でこんな醜い自分を発見するなんて思ってもいなかった。


「…ごめん、俺、その感覚分かんないや。」


夏本は困ったような顔をして首元をかいていた。


「分かるって言われたら、ぶっ飛ばしてたよ。」


だって、夏本はずっと彼女と彼女との時間を大切にしていた。友達よりも彼女。そんな彼に私の気持ちがわかるなんて腹立たしすぎる。


「こんな状況で、なんで李花にカミングアウトしたいのかわかんないけど、俺も言っていい?」


「何を?」


夏本は深く深呼吸をしてから窓を眺めた。


「俺の彼女…いや、元カノね、俺が親友から奪った彼女なんだ。」


「え?」


「あの子とはさ、中学から付き合ってたんだよ。その、中学の時に俺が親友から奪ったの。あいつは怒んなかったよ。でも、泣かせたら殴るって言われた。だから、俺はその子をすごく大切にしたよ。だからまさか、振られるとか考えられなかった。」


彼は永遠を信じていたんだ。

夏本は口ではそう言っているが、彼女が別れたいってことを知っていたのかもしれない。

なんだか、すごく落ち着いてる。だから、彼の言葉に違和感がある。


「どうして、振られたの?」


「重いって。疲れたって言われた。だから、俺はあっさり受け入れたよ。」


「じゃあ、中学の友達に殴られに行かなくちゃね。」


すると、彼は急に切ない顔をした。歪んだ笑顔を私に向けて、首を横に振った。


「…ダメなんだ。できないんだ、それ。そいつ、死んじゃったからさ。」


私は言葉を無くした。何も言ってあげられない。私ごときが何かを言ってはいけない。


「あの子もね、俺と一緒にいるとアイツのこと思い出すから辛いって。根本的な振られた原因はそれ。」


私は彼がかわいそうだと思った。だから、彼は空っぽなんだ。責められるはずの存在がいなくて、彼を救えない。

私は弱々しい彼の頬に手を伸ばした。

パシリッ。

乾いた音が教室に響く。


「李花…?」


夏本は真ん丸の目で私を見る。


「天国からお告げが来た。目の前にいるヘタレてる男をおもいっきりひっぱたいてやれって。だから…ビンタ、してあげた。感謝しろよ。」


私は何してるんだろう。バカにもほどがある。怒られても仕方ないだろうな。


「ぶはッ…!やばい。李花に殴られた。くくく…っ!」


「え…?」


だけど、夏本は思いのほか、笑い出した。私はあっけらかんとしてしまった。


「そんなカッコいいことしてくれちゃうと、俺、マジで李花に惚れるよ?」


「だから、振られてすぐにたまたま居合わせた私に流れないでって。」


「いやいや。そんなんじゃないって。割と本気。李花、好きな人とかいないだろ?」


「いないけど、ダメ。私、夏本のことそんな風に思ったことないし。」


それに私はもっと大切なことができたから。


「私、帰る。じゃあね。」


足早に荷物を持ち、教室を出ようとした。


「あ、おい!待て!」


だが、それは夏本に止められる。


「離してよ。」


私は思わず顔をしかめる。だけど、彼の顔は私が想像していたより真っ直ぐな瞳をしており、思わず息をのんだ。


「軽い気持ちじゃないから。本気で考えておいて。それから、誕生日おめでとう!」


夏本はそれだけ言って私をすぐに離してくれた。


「アリガト。じゃあね。」


私は久々にニッと笑ってみた。

なんだか心がうずうずして、心臓がばかみたいに煩い。

階段を駆け下りてみた。廊下を走ってみた。下駄箱ロッカーを開いた瞬間、私は驚いた。






『誕生日おめでとう!!今日は祝えなくてごめんね。今度、二人でパーティーしよう!遥子より』






そう、彼女の字で書かれたポストカードが入ってあった。



なんだか…私は誰よりも、青春を謳歌してるようだ。

世の中、何が起こるかなんて分からない。

その中の恋愛だってそうだ。

だから私はこのままでいいかもしれない。






「楽しい、誕生日じゃん。」



また明日が楽しみでいられるように、辛くたって今という青春を楽しめばいい。

いろんな恋愛思想があると思います。恋人ができればやはり浮き足立ってしまう人だっています。そんな中で、寂しい気持ちができてしまう子たちはいます。

恋愛と友達の両立が苦手な人、失敗している人。

今が辛くても将来、昔話になって大笑いできる友達が素敵な友情だと、牛乳ビンは思います。


読んでいただき、ありがとうございました。

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