生徒会に入ると言うことは………
私が生徒会に入った事は直ぐに学校じゅうに広まった。
その日のうちに金持ち組の女子5人組に声をかけられた。
人気のない3階の一番奥の地理の教材置き場に資料をおきに来た所だったから、回りには誰も居ない。
私はこの5人組の事を知っていた。
私の情報では右から樋山、長宮、西園寺、高梨、廣瀬の五人だ。
中でも西園寺姫は祖父が政治家で権力者だ。
「えーと、篠崎さん。貴女どんな手を使って生徒会に入ったのかしら?」
権力者特有の上から目線のしゃべり方がしゃくにさわる。
「学年一位の頭脳を買われたんじゃないかと思ってます。」
私は満面の笑顔でそう答えた。
だてに学年一位なんてとってないでしょ。
「何それ自慢?」
「頭が良いのがそんなに偉いの?」
「頭でしかこの学校に通えないんだから仕方ないんじゃない?」
「そんなことぐらいであのお二方の側をうろつくなんて許せない!」
西園寺の取り巻きのような後の四人に口々にそう言われた。
やっぱりあの二人目当てのご令嬢でしたか。
「貴女あまり太陽会長に近寄らないで下さらない?」
西園寺の言葉に腹が立つ。
「私が近寄るんじゃなくて会長の方から寄ってくるんですよ。」
「な、何を言ってるの?そんなわけないじゃない!」
西園寺はかなり動揺して見せた。
嘘は言ってない。
兄から寄ってくるのだ。
私は余裕の笑顔を作った。
西園寺は怒りで顔を歪ませた。
はっきり言って生徒会に入るって事はこう言う事だ。
生徒会に入るんだから、誰かから敵意を向けられるなんて想定の範囲内だ。
私はそれを使って兄と雪兎さんに相応しい婚約者を見つけるんだ!
雪兎さん!私はもう利用価値が不十分だから婚約者にはなれないけど、きっと貴方の婚約者に相応しい相手を見つけ出してみせます!
だからこそ、生徒会に入るならお金持ち組に喧嘩売ってでも本性を見極めます!
雪兎さんのためなら悪役にだってなれるんだから!
本当は目立たず騒がず影からこっそり調査してやろうと思っていたんだけどそれはもう無理だから、諦めた。
自分の安全なんてくそくらえだ!
二人のためなら頑張れる。
だって、大好きなんだもん。
私は笑顔を絶やさなかった!
笑顔は武器になる。
笑っているだけで優位に立てる。
心理的なものだ。
「貴女馬鹿なの?」
「私は頭良いですよ?学年一位ですからね!」
「頭が良ければ人生上手に生きられると思ってるの?」
「親の権力振りかざして、でかい顔してる人よりは上手に生きられる自信がありますけど!」
私はクスクス笑ってやった。
5人は真っ赤な顔をして顔を歪ませていた。
私はひとしきり笑うと真顔を作り言った。
「もう良いですか?失礼しま~す。」
私はそれだけ言うとその場を後にした。
これであいつらは私を敵だと思ってくれただろう。
側に秋ちゃんが居ない時に声をかけてくれたことは良かったと思っている。
秋ちゃんが居たら面倒だったと思う。
あそこまで心置き無く嫌みが言えなかったかも知れない。
秋ちゃんを巻き込むのは嫌だな~。
そんなことを思いながら階段のある方へ曲がると、そこには柚樹君が居た。
「ひよちゃんは何たくらんでるの?」
柚樹君は楽しそうにクスクス笑いながら言った。
私は少し口を尖らせて言った。
「そ、たくらんでるの!だから、邪魔しないでね。」
「ひよちゃん、うさちゃんにも言わない気?」
「うさちゃんって………雪兎さんの事?柚樹君そんなファンシーな言い方してんの?」
「え?そこ?気にするのそこ?」
「え?なんで?そこしか重要じゃないじゃん。」
「え~………あのさ、知ってたのになんで言わなかった!って怒られるの僕嫌なんだけど。」
柚樹君は本当に嫌そうに言った。
私は苦笑いを浮かべた。
「聞かなかった。知らなかった。って事にすれば良いのに。」
「それが出来ないからうさちゃんが厄介なんじゃん。僕勝てない人には媚を売るって決めてるの。僕うさちゃんに勝てるって何にたいしても思えない。」
雪兎さんは柚樹君に何をしたのだろう。
柚樹君は飄々となんでも出来てしまう天才なはずなのに………
雪兎さんの計り知れないスペックを格好いいと、とらえるか恐ろしいととらえるべきか?
悩む私に柚樹君は笑顔で言った。
「うさちゃんだけには言った方が良いよ。ちゃんと僕は言ったからね。それに、困った事があってうさちゃんにも相談出来ない時は僕が力になるからね。」
柚樹君は私にプライベート用の携帯の番号とメアドの手書きしてある名刺をくれた。
「ありがとう。未来先輩の情報なら何でも用意してあげるね。」
「さすがひよちゃん!期待してる!」
柚樹君は跳び跳ねて喜んだ。
内心未来先輩ごめんなさいと思ったのは仕方ないと思う。
日和ちゃんは頑張る子です。