両思いend
クライマックス!
あの事件のあと雪兎さんが家まで送ってくれる話になった。
「悪いので大丈夫です。」
「送らせてくれないか?」
雪兎さんは拒否出来ない勢いでそう言った。
仕方なく送ってもらう事になったのだが………
雪兎さんはご機嫌らしく私にニコニコと笑って見せる。
私はおずおずと手を出して見せた。
雪兎さんが首を傾げる。
私は恥ずかしかったが言った。
「手を………繋ぎたいなって……思って………駄目ですか?」
雪兎さんは驚いた顔の後とろけそうな笑顔で私の手を握ってくれた。
ちょっと手汗が気になって失敗した気持ちになる。
「日和………好きだ。」
「!」
雪兎さんは悪戯が成功したような笑顔だ。
私は一気に顔に熱が集まるのが解った。
「日和がそんな可愛い顔をしてくれるなら、もっと早く好きだって言っておけば良かった。」
雪兎さんのニコニコ笑顔に私は翻弄されていた。
「わ、私だって………好き……なんだから。」
雪兎さんはヘニャリと笑って呟いた。
「幸せすぎる。」
雪兎さんの反応は大袈裟に感じた。
それから暫く他愛の無い話をして家についた。
繋いでいた手がはなれるのが何だか寂しい。
「………雪兎さん!」
「?」
「お茶でも飲んでいきませんか?」
雪兎さんは目を数回しばたかせると言った。
「おばさんは?」
「………夜勤だから居ませんけど?」
「………」
雪兎さんは暫く悩んでから苦笑いを浮かべた。
「………日和は俺の事を試しているのか?」
小さく呟かれた雪兎さんの声はよく聞こえなった。
「今、なんて?」
「いや、一杯だけご馳走になろうかな?」
私は笑顔で雪兎さんを招き入れた。
雪兎さんは少し固まってからゆっくりと家に入ってくれた。
私はリビングに雪兎さんを案内してソファーに座ってもらった。
「珈琲と紅茶どっちにしますか?」
「じゃあ、珈琲で。」
「はい。」
私が珈琲を入れていると雪兎さんは私の方を見てニコッと笑った。
「………あ、緊張しますね。」
「えっ?」
「………雪兎さんの横にはいつも兄が居るので………二人っきりは珍しいですよね。私の誕生日以来ですね。」
雪兎さんは驚いた顔の後は~っと息を吐いた。
呆れられちゃったかな?
「日和………可愛すぎるんだけど、抱き締めて良いかな?」
「?!」
「駄目かな?」
私は、はいったばかりの珈琲を雪兎さんの居るリビングのテーブルに置くと雪兎さんの前に座った。
「ち、ちょっとだけですよ。」
雪兎さんはガバッと私を抱き締めると首筋に唇を寄せた。
「ひゃっ。」
「凄く気持ちいい。」
「あ、あぅぅ~。」
私は抵抗できずに変な声が口をついて出た。
雪兎さんはクスクスと笑いながら言った。
「男を部屋に招き入れたんだから、覚悟は出来てるんだよね。」
「!違!違くて、あの!」
「解ってる。日和にそんなつもりが無いことぐらい。………日和の部屋に案内されてたら我慢なんかしなかったけどね。」
耳元で囁かれて背中がゾワゾワする。
自分が大胆な事を言ってしまっていた事を今更ながらに理解した。
「俺以外の男を家に上げたら駄目だぞ。」
「はい。………………家に寄ってほしいと男の人に思ったのは雪兎さんだけです。兄やお父さんですら私から招き入れたりしないです。」
「………襲って良いかな?」
「ほえ?」
雪兎さんは私の顔をのぞきこむと言った。
「理性とかぶっ飛んだんだけど。これはもう邪魔が入らないうちに俺のものにしたい。」
「………もう、雪兎さんのものです。」
雪兎さんは大きくため息をついた。
失礼である。
「解ってない。」
「雪兎さん?………だって!私は雪兎さん以外要らないから!雪兎さん以外の人のものになんかならないよ。」
雪兎さんは恨めしそうに私を見ると言った。
「本当に解ってない。俺は日和が思っているより我が儘で傲慢で自分勝手なただの男なんだぞ。そんな殺し文句にたえられると思ってるのか?煽りすぎ!」
雪兎さんの顔が近すぎる。
唇が触れそうだと思ったその時、雪兎さんの携帯が着信を知らせた。
その場に沈黙が流れた。
着信音だけが響いている。
雪兎さんはゆっくり私からはなれると電話に出た。
『雪?日和に手出してないだろうな?』
兄の声がもれて聞こえた。
「太陽………お前、凄いな………逆に空気よめすぎだろ?なんだ?監視カメラか盗聴機が仕掛けられてるのか?」
雪兎さんの呟くような声に兄の笑う声が響いた。
『さっきも言ったが、日和はまだお前のじゃないんだからな!必要以上に触るな。』
「キスぐらい許してくれ。」
『キスだけですむのか?』
「………うん。無理。」
雪兎さんの言葉に肩がビクッっと跳ねた。
顔に熱が集まる。
集まらない訳がない。
雪兎さんはそんな私を見て苦笑いを浮かべた。
「太陽のせいで警戒された。」
『当たり前だ!そのために電話したんだからな!』
「後で覚えとけよ。」
『妹を守るのは兄のつとめだ!………その場に乗り込まないだけましだろ?俺は日和の兄だが雪の親友だしな。』
「………ああ、今日は我慢する。」
雪兎さんは私の頭を優しく撫でて言った。
「今日はな。」
また、肩が跳ねたのは仕方がないと思う。
ずっと好きだった人に艶っぽく求められている。
息が上手く出来ないくらいドキドキしている。
雪兎さんは電話を切ると冷めはじめた珈琲を一気に飲み干すと言った。
「我慢できるうちに帰るよ。」
雪兎さんは苦笑いを浮かべてから玄関に向かった。
私はそれを追いかけてお見送りすることになった。
「戸締まりはしっかりするんだぞ。日和は可愛いんだから心配だ。それじゃあな。」
「ちゃんと戸締まりします。また、明日………あの、雪兎さん。」
「?どうした?」
私は雪兎さんを家の外に出すと背伸びをして雪兎さんの唇に自分のを重ねた。
軽く触れるだけのキスをすると私はそのまま家に逃げ込みガチャリと鍵をかけた。
「………あ~!嘘だろ?この状況で?煽るだけ煽って鍵ガチャって。ツンデレ。」
雪兎さんがドアの前でなにかを呟いているようだったがよく聞こえなかった。
そのあと雪兎さんの気配が無くなるまで私はドアの前でうずくまって悶えていたのだった。
あれから数日後その日も麗ちゃん達とお昼ご飯を食べるため食堂に居た。
「日和ちゃんが雪君と上手くいって良かった。」
麗ちゃんのニコニコに私も笑顔でかえす。
「………今、うさちゃんの話聞きたくな~い!あ!ひよちゃん、未来ちゃんの秘蔵写真もっかい送ってください!御願いします!」
柚樹君の言葉に未来先輩にめちゃくちゃ睨まれた。
「前にあげた写真は?どうしたの?」
「………うさちゃんに消された。」
「へ?」
「この前うさちゃんのパパさんに会ったんだけど、うさちゃんがひよちゃんのエロい画像持ってるみたいだって聞いたからパソコンにハッキングしたら返り討ちにされて未来ちゃんの秘蔵写真消されちゃったんだよ~!ひよちゃん、だから未来ちゃんの秘蔵写真もっかい送ってください!」
柚樹君の言葉はとちゅうからよく聞こえなくなっていた。
エロい画像って聞いて思い当たる物は1つ!
雪兎さんが私を好きなら、あの画像を消しているとは思えない。
「ぎ、ぎゃー!」
私は思わず叫んだ。
その場に居た全員がビクッと驚いて見せた。
「ひよ?どうした突然叫んで?」
兄がやって来て心配してくれたが、それどころではない!
「兄!雪兎さんは?」
「先生に捕まってる。もうすぐ来るだろ?」
私は頭を抱えてうずくまった。
「日和どうした?」
すぐに雪兎ちゃんの声がして私は顔を上げた!
「ゆ、雪兎さん!あの忌まわしい写真は消してくれたって言いましたよね?」
雪兎さんは柚樹君を睨んだ。
「ぼ、僕は大事な写真消されたんだからうさちゃんも苦しめ!」
柚樹君はテーブルに突っ伏して雪兎さんの視線を回避した。
「日和は俺が信じられないのか?」
「………雪兎さんの性格ならよく知ってます!私の事好きだって言いましたよね?なら、消すなんて考えられない!」
雪兎さんは私から視線を反らして言った。
「………大事にしています。」
「う、うわ~ん!ゆ、柚樹君パソコン貸して!私がハッキングする~!」
「柚樹!貸すな!柚樹のパソコンから消した画像プラス匠さんからもらった別画像も付けてやる!」
柚樹君はパソコンを背中に隠すと言った。
「ごめんねひよちゃん。」
「うわ~ん!誰も味方してくれないよ~!私の黒歴史が~!」
私は雪兎さんを睨むと言った。
「お、御願いだから消してください!何でもしますから!」
「じゃあ、俺の前であの格好してくれる?」
「………出来るか~!」
私は大絶叫してうずくまった。
「副会長って日和の婚約者なんだろ?結婚したら全部見るんだから別に良いんじゃん?どんな格好か知らないけどやってやれば?画像が残ってる方が私は嫌だけどな。」
未来先輩の言葉に少し考えてしまう。
「………へーほーふぅ~ん、なら、未来先輩は柚樹君の前でその格好をすると?」
「何で柚樹なんだよ!しねえ~よ!」
私は携帯の中に入っている月花さんの写メを未来先輩に見せた。
「これと同じ格好をしろって?」
「エロ!なんだこれ!こんなんどこで売ってんだよ?」
「柚樹君のために買ってきてあげますから着て見せてあげてください!」
「馬鹿か?着るわけないだろ!こんなエロエロ写真撮る意味がわからない!」
私は涙目で叫んだ。
「私だって!撮られるなんて思ってなかったです!こんなのがまだ残ってるなんて絶えられないですってば!全部桔梗ちゃんのせいだ~!」
私の携帯を麗ちゃんがのぞきこむと言った。
「凄いね!月花様のためにも今はこの画面閉じようか?」
「う、はい。」
私が画像を閉じると麗ちゃんが続けた。
「こんな格好したら襲われない訳ないね。」
「食べてくださいって言ってるようなもんだな!日和頑張れ!」
未来先輩に応援されて私は絶句した。
頑張る?何を?い、意味が解らない。
「ひよちゃん!その写真僕も見たい!」
柚樹君の言葉に未来先輩が冷たい視線を向けた。
「柚樹、見たらドン引きして二度と顔も見たくなるが良いか?」
「え?未来ちゃんが僕の事顔も見たくなるぐらい嫌いになっちゃうぐらいきわどい写真なの?」
「………そうだな。きわどいってレベルで言って良いのかわからんがな。」
「そんなに?未来ちゃんは僕にその格好見せてくれる?」
「目潰しされるのと記憶なくなるほど殴られるのどっちが良い?」
「未来ちゃん、それ死んじゃうよ。」
柚樹君と未来先輩はかなり仲良くなっている。
って現実逃避してしまった。
私が雪兎さんに視線をうつすと雪兎さんはニコッと笑った。
「日和が嫌なら家まで消しに来るか?」
雪兎さんの優しい笑顔に頷こうとしたその時兄に言われた。
「今の話の流れでひよをお前の家に連れて行くわけねえだろ!」
「………本当に太陽は俺の事、親友だと思ってるのか?」
「思ってるが親友だからお前は信用ならない。」
「チッ」
雪兎さん今舌打ちしませんでしたか?
兄と雪兎さんは笑顔なのに睨みあっているように見えた。
私は兄に抱き付くと言った。
「兄が行って消してきてくれる?」
「良いぞ!」
兄の笑顔にほっとする。
「……太陽は見たら消さないと思うぞ!むしろデータを寄越せと言うに決まってる!」
「そんなわけないだろ?」
「三木谷が持ってた日和の写真をデータ寄越せって言ってただろ?」
三木谷って秋ちゃんの彼氏?
って事はあのコスプレ写真?
「い、嫌~~!」
「可愛かったぞ!」
ニコニコの兄の首をしめてしまったのは仕方がないと思う!
私達は気持ちが通じ会っても、一筋縄では行かないみたいです。
私は雪兎さんの楽しそうな笑顔を見ながら思いました。
これからも頑張らなければ!っと。
end
長らくありがとうございました。
happyendになりましたかね?
思っていたより長く出来た気がします。
コメントなど下さった方々ありがとうございます!
おまけで未来ちゃんと柚樹君の話をのせようと思っています。
もうしばらくお付き合いいただけると嬉しいです。




