呼び出し
その日の朝礼に生徒会のお知らせがあった。
その内容は変質者が現れたので一人で帰るな!と言うものだ。
「ヒヨリン。一緒に帰ろう!」
「うん。」
同じクラスで友達の平岡秋ちゃんに話しかけられた。
「うん。一緒に帰ろう。」
私がそう返すと秋ちゃんは笑ってくれた。
「えー、僕もひよちゃんと一緒に帰りたかったな!」
突然の声に振り替えると斜め左後ろに座っていた柚樹君と目があった。
「未来先輩誘えば良いんじゃない?」
「流石ひよちゃん!ナイスアイデア!でも、嫌がるだろうな~!」
「諦める気ないくせに。」
柚樹君はご機嫌でニコニコしている。
未来先輩頑張れ!
逃げられるとは思えないけど………
「それより、ひよちゃん。」
「ん?」
「舞台の上から殺気が半端ないよ。たい君怖。」
ぎこちない動きで舞台の上を見ると、案の定兄が冷たい視線を送っていた。
後でメールが凄そうだ。
私はそんなことを思いながら項垂れた。
お昼休み放送が流れた。
『一年B組篠崎日和さん放課後生徒会室へお越しください。~』
兄、メールすらぶっ飛ばして呼び出しか………
バックレよう!
私はそう決めた。
「ヒヨリン何やらかしたの?」
「なんも。バックレます。」
「駄目だよ~!ってか、生徒会長様に会えるんだよ!羨ましい!」
「譲るよ!私、生徒会長に会いたくないし。」
怒った兄恐い。
「解った!ヒヨリン副会長派でしょ!」
秋ちゃん。
そうだよ!そうだけどもさ!
私はため息をつき俯いた。
「"そうだ"と言ってくれるのを待った方が良いかい?」
突然の声に顔を上げるとそこには雪兎さんが居た。
何でこんなところに?
私は少し考えてから言った。
「ゆ、城井副会長は何故ここに?」
雪兎さんは暫く私を見つめると言った。
「城井副会長………太陽の事もそうやって呼ぶの?宮浦会長?」
「そ、そうですけど?なにか?」
雪兎さんはまた私を暫く見つめて言った。
「放課後、バックレたら太陽が迎えに来るから。お姫さま抱っこで拉致られたくなかったらちゃんと来るんだよ。」
「は?意味が解りません。」
「バックレなければ良いんだよ。」
どうやら雪兎さんは私が逃げないように釘をさしに来たらしい。
本当に迷惑だ。
………雪兎さんの顔が見れて嬉しいとか、少しでも話せて嬉しいとか思ってないよ。
「俺が迎えに来ても良いけど………どうする?」
「………ちゃんと行きます。大丈夫です。」
「じゃあ待ってるよ。」
雪兎さんは私の頭をポンポン叩くと去っていった。
目の前の秋ちゃんが滅茶苦茶恐い顔をしている。
「バックレて生徒会長にお姫さま抱っこされなよ!」
「ありえない!ってか、生徒会長にお姫さま抱っこされたくないし!」
「そっちの方がありえない!副会長も迎えに来てくれるって言ってたのに断っちゃうし!勿体無い!」
私はその後秋ちゃんにせめられ続けたのだった。