誕生日
娘も回復してきました。
土曜日!
学校では気をはってないといけないせいで私は惰眠をむさぼっていた。
家の呼び鈴が鳴ったのは午前11時を少し過ぎた頃だった。
新聞なんてこのご時世に必要無いですよ~!
私個人の意見ですごめんなさい。
呼び鈴は規則正しいリズムで押されていた。
出ないと駄目かな?
私はボサボサの頭を気にせず玄関のドアを開けた。
「はーい!………雪兎さ、ん?」
「凄い頭だな。」
「………うぎゃーーー!」
私は叫ぶとドアを閉めた。
な、なななななななな何で雪兎さんがここに!
涙があふれた。
私は必死で髪の毛を手ぐしで直したがもう見られた後だ。
私はゆっくりとドアを開けた。
霞む視界のさきで、雪兎さんが困った様な顔で私を見ていた。
夢なら覚めてくれと本気で思った。
「寝てたみたいだな。すまない。」
「あ、いや、その………こちらこそ珍妙な奇声を発してドアまで閉めてしまって………ごめんなさい。」
「いや………パジャマだけど大丈夫か?」
「見ないで。」
私の言葉に雪兎さんは私から視線をそらした。
「今日はどうしてここに?」
「………デートしないか?」
「?はい?」
「嫌か?」
嫌なわけない。
でも、意味が解らない。
なぜ?デデデデデート?
「き、着替えてくるので10分下さい。」
「慌てなくて良い。待ってる。」
「あ、あの中で待ちますか?」
「………俺も男なんだが?」
「?知ってますけど?」
「………………外で待たせてくれ。」
雪兎さんはなぜか右手で口元を押さえていた。
私はそれを気にするよりも、待たせてしまう事の方が重大だった。
準備をするのに必死になったが時計を見ると、15分を少し過ぎていた。
「雪兎さん!ご、ごめんなさい!」
「大丈夫だ。可愛い。行こうか。」
可愛い!ちょっ、私を喜ばせてどうする気ですか?
しかも、雪兎さんはさりげなく私の手を握って歩き出します。
頭が追い付いてない。
何でこんな嬉しいことが………夢落ち?
私は夢見心地で雪兎さんについていく事になった。
雪兎さんは私が気になっていたお洒落なカフェでランチ、その後見たいと思っていた映画に連れていってくれゲーセンで可愛いく無いくまのヌイグルミを、取ってくれた。
何がおきているのか解りません。
雪兎さんがたくさん笑ってくれて、たくさん私も笑った気がした。
暫くして映画の時に切っていたスマホの電源を入れて驚いた。
スマホの着信画面には"たいちゃん"の文字がズラリ。
「な、何で?」
私の呟きに雪兔さんはクスクスと笑いながら私の手の中にあるスマホを取り上げ、代わりにスマホと同じ大きさの箱をおいた。
「開けてみな。」
言われた通りに箱を開けるとそこには妖精が真珠を抱えているデザインのネックレスが入っていた。
可愛い!凄くファンシーだけど私の誕生石の真珠って言うのが………
「私、今日誕生日?」
「今気がついたのか?」
「はい。………今日は、ありがとうございます。」
ここ最近の忙しさに忘れていた自分の誕生日を雪兔さんと一緒に過ごせるなんて………嬉しすぎる。
「つけてみるか?」
「あ、はい。」
私が箱からネックレスを出すと雪兎さんが笑顔で手を出した。
私はその手にネックレスを置いた。
雪兎さんはネックレスの止め金を外すと正面から私に回した。
ち、近い!
なぜ正面から?
端からみたら抱き締められているようにしか見えないだろう。
うぅー早く終わって!
私が固まっている事に雪兎さんは気がついているのに、はなれてくれない。
「雪兎さん、まだですか?」
「悪い。」
「いえ。」
意識しないようにすればするほど顔に熱が集まるのがわかった。
「………出来た。」
雪兎さんの言葉に安心と残念が入り交じった息がもれた。
「日和。誕生日おめでとう。」
そう言って雪兎さんは私を腕に閉じ込めた。
えっ?何で?
雪兎さんは直ぐに私からはなれて頭をポンポンしてくれた。
「たぶん叔父さんが日和の誕生日の用意をしていると思う。送ってく。」
「あ、ありがとうございます。」
雪兎さんはニコって笑うと私の手に自分の手をからめた。
俗に言う恋人繋ぎってやつだ!
雪兎さんと家までの道を何を話したのか覚えていない。
家につくと、雪兎さんは手をはなしてくれた。
兄に何で電話に出なかったって怒られ、映画を見ていたって言ったらようやく許してもらった。
家にはお父さんもお母さんも居てラブラブのオーラを作り出していた。
帰ろうとする雪兎さんを兄と引き止めて、一緒にお誕生会をした。
兄からは濃い藍色の財布お父さんからは同じ色の大きめバッグ!
お母さんからはスキンケアセットをくれた。
本当に今年の誕生日は良いことばかりで楽しい一日になったのだった。
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