表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/33

水浸し

娘が38.6℃の熱を出しました。

学校での私に対する評価は2つ。

好意的なものと敵意的なもの。

好意的な人達は兄と居ると生暖かい目で見てくる。

敵意的な人達は兄と居ると殺意を向けてくる。

私がそんなことで、凹むと思ったら大間違いだった。

家柄が良かろうが、悪かろうが同じ。

兄と雪兎さんの横にいたら妹だとわかっていても側に寄るなって言われたりは普通だった。

だから凹んだりしない。


「庶民のくせに!」

「身の程知らず!」

「会長のご家族が許すわけないわ!」

「庶民だから精神がず太いのかしら?」


足掛けしてこようとしてくる令嬢の足はもれなく踏みつけさせてもらった。


「きゃーっ骨が折れたわ!」

「ごめんなさい!私の母親医者なの!母の病院ならちゃんと見てくれるわ!この辺で一番大きな病院だし、踏まれたぐらいで折れちゃうなんて骨粗しょう症でしょ!入院した方がいいわよ!」


私の返しにその子は顔を赤くして叫んだ。


「そんなわけ無いでしょ!」

「なら、ごめんなさい!これで良いですよね?失礼しま~す。」


金持ち組なんて怖くないです!

プライドが邪魔してしまうんでしょ!



その日はちょっと違った。

気が付いた瞬間には頭から水浸しになっていた。

2階からバケツの水をかけられたみたいだ。

保健室に行こう。

着替えは無くても授業サボって服を乾かせてくれるに違いない。

私は水浸しのまま保健室に向かった。

途中で庶民組の子に気遣われてしまって、私は笑顔で言った。


「これで、授業サボれる!ラッキー!」


こたえてないって解ればやった奴は悔しいに違いない!

保健室につくと保健の先生の中西紫音(なかにししおん)先生が真っ青な顔をしていった。


「どうしたのそれ!ちょっと!直ぐ脱ぎなさい!」


先生は確か女性のようなしゃべり方や見た目をしていても男性だったと思うのですが?


「カーテン引いて!私のジャージ貸してあげるから!」

「あっ、ありがとうございます!」


私は言われた通りにカーテンを引いて先生に渡されたジャージを着た。

濡れた髪の毛をふくようのタオルにぶかぶかの赤ジャージの袖とズボンの裾を折ると紫音先生の方に向かった。


「あら可愛い!はい、温かいココア!」

「ありがとうございます。助かりました。」

「事情は知らないけど、ほどほどにしないともっと酷いことされちゃうわよ?」


先生は私にココアを渡しながら言った。

私は苦笑いを浮かべた。


「もっと酷い事してもらえたら簡単なんですけどね。」

「貴女何企んでるの?」


先生の言葉に少しだけ黙り、私は言葉を探しながら言った。


「先生には特別に言いますけど、私、生徒会長と副会長が大好きなんです。だから、付き合う相手は私に嫌がらせしてくる様な小者じゃ駄目なんです。もっと二人の側に居て彼らを支えられる人間じゃないと。」

「………貴女がやるんじゃ駄目なの?」

「駄目です。生徒会長と私は………事情があって駄目なんです、副会長は………私の後ろ楯じゃあ弱い。もっと利益に繋がる令嬢じゃないと。」


私の言葉に先生は眉間にシワをよせた。


「そんなことのために女の子が体はる必要があるの?」

「紫音先生、最初に言ったでしょ!私はあの二人が大好きなの。私にとってはそんなことじゃないんですよ!一番大事な事なの。私がしてあげれないから私の変わりが出きる人を探してる。紫音先生は女の子の味方でしょ!誰にも言わないで下さいね。」


紫音先生は深くため息をつくと言った。


「私を共犯にする気?」

「いえ、先生に必要以上の情報を引き出される前に言える事だけ言ったんです!」

「………やられた。後は何聞いても黙秘するつもり?」

「必要な情報はあげました。先生は女の子の秘密に深入りしてこない女心の解る先生ですもんね?」

「うわ、釘まで刺してくるわけ?だてに学年一位なんてはってないわね。解った!その代わり今日みたいに何かあったら私の所に来るのよ!可愛い部屋着でも用意しとく?いつも私のジャージじゃ嫌でしょ?」


先生は本当に優しい。

私は手の中にあるココアを一口飲んだ。

スッゴク温まる。


「篠崎ちゃん!無理だけはしないでよ?私は貴女の味方だからね。」

「もう!紫音先生格好良すぎ!ありがとうございます。」

「篠崎ちゃんも良い女よ。」

「紫音先生に褒められると嬉しいです。」


私と紫音先生はニコニコと笑いあった。

紫音先生は私の制服とブラウスを乾かしてくれ、髪の毛を巻き可愛くしてくれ軽い化粧までしてくれた。


「ヤバ!可愛い!こんだけ可愛くしてあげれば、やった奴はムカつくでしょ!」

「ありがとうございます!可愛い!先生美容師になれますよ!」

「だてにトリミングの免許持ってないんだから!」

「犬扱い!」


先生はクスクスと笑ってくれた。

私もつられて笑ってしまった。





教室に戻ると秋ちゃんに怒られた!


「何でそんなことになってるってメールしてくれないの?」

「ありがとう!でも、巻き込みたくなかったんだもん。」

「もんじゃない、もんじゃ!私だって心配してるの!」

「………ごめんなさい。」

「次は頼ってよ!連絡してよ!」

「うん。」


私が頷くと秋ちゃんは私を抱き締めてくれた。

本当に良い友達を持った!

秋ちゃん大好き!


「に、しても何でピカピカになって帰ってきたの?」

「紫音先生がトリミングしてくれた!」

「犬か?」

「そうかも!ワン!」

「いや、可愛いけどね!」


秋ちゃんに褒められた!

あれ?褒められた?


「可愛い!ちょっと写メ撮りたい!」

「本当?撮って撮って!」


私は秋ちゃんに言われた通りにポーズをとって写メに撮ってもらった。


「私にも送って!」

「良いよ!」


クラスメイトいわく、そんな私達を苦々しげに見つめる金持ち組の生徒が3人ほど廊下に立っていたのだと言う。

私達はそんなこと気がつかないで、笑いあっていたのだった。

体調悪いときだけ大人しい娘。

いつもこうなら楽なのに!


熱をだして辛そうな娘がうわ言で「ま、豆まきしたい。ママ、お豆さんなくなったら、鬼にキック……キックしてたおす!豆よりキックの方が良いよね?」って………

「鬼にキックしたら食われるぞ!鬼は豆か嫌いだから豆投げたら逃げてくけど、キックする奴は頭からバリバリ食われちゃうぞ!」って言ったら、小さく「豆まく。」って!

起き上がれない奴が何豆まきたがってんの?

無理だろ!

ってな訳でうちに節分は来ませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ