私の秘密
眠い………。
放課後。
兄と雪兎さんが私達を迎えに来た時、私達の教室はギャラリーがたくさんいた。
本当に兄と雪兎さんが来るかを確認しに来たようだ。
金持ち組の生徒に物凄い形相で睨まれていた。
そのくせ、兄も雪兎さんも気にしていないようで秋ちゃんと私をエスコートしてくれて迎えに来た車に乗り込んだ。
「日和様、ご無沙汰申し上げております。」
「北森さん。ご無沙汰してます。今日はよろしくお願いしますね。」
運転手の北森さんは私が宮浦だった時専属で運転手をしてくれていた人だ。
63歳なのに武術にたけていてSPの用な事もしてくれるマルチナ運転手さんだ。
「また日和様の送迎をさせていただけて光栄でございます。」
「北森は日和の送迎が出来なくなって一週間寝込んだんだぞ。」
北森さん………なんだか御免なさい。
「北森さん!私北森さんには元気でいてほしいの無理しないでね!」
「日和様の命令とあらば長生きしてみせます!」
命令じゃないよ~北森さ~ん!
「ヒヨリン愛されてるね。」
若干引いた顔の秋ちゃんに苦笑いがもれた。
「秋ちゃんに言っておきたい事があるの。」
私はとりあえず兄の事を話す事にした。
「なに?」
「あの………」
どう説明しようか?
私が悩んでいるうちに家についてしまった。
家に入ると私は秋ちゃんの手をつかんだ。
「私の部屋で話すから。」
私が言うと秋ちゃんは頷いてくれた。
「お茶持ってく?」
「たいちゃん来ると面倒だから、雪兎さんと自分の部屋に居て。」
「はいはい。」
私はそのまま自分の部屋に向かった。
私の部屋は屋敷の一番奥にある。
途中お父さんが廊下を歩いてくるのが見えた。
「日和!来てたのか?」
「今来た所!たいちゃんの部屋に雪兎さんも居るよ。」
「ユッキーも?なんだユッキーとイチャイチャしてると太陽がすねるぞ!」
「友達と一緒なんだから変な冗談止めて!」
お父さんは私の後ろに居る秋ちゃんを見て笑顔を作った。
「いつも日和がお世話になってます。日和の父です。」
「はじめまして!平岡秋と言います!え?ヒヨリンのお父さん?」
「そう!日和のお父さんです。秋ちゃんこれからも日和と仲良くしてやって!お父さんちょっと出掛けてくるから帰ってくるまで家に居ろよ!送っていってやるから。」
お父さんは幸せそうに笑った。
「残念。お母さんは夜勤で朝まで帰って来ません!」
「何だよ!折角の休みなのに!杏子さんに会いたかった。」
シュンとするお父さんに笑顔を向けると私は言った。
「お母さんにお父さんが会いたがってたって言っとくよ。」
「絶対だからな!」
「うん。約束。」
お父さんはニコッと笑うと私の頭を撫でて去っていった。
「お父さんイケメンだね!」
「うん。お母さん大好きなイケメンだよ。」
秋ちゃんと笑いあってから、二人で私の部屋に向かった。
部屋につくと秋ちゃんはキョロキョロ部屋を見た。
ピンクを基調とした部屋は少しファンシーな家具が揃えられていた。
「私、12歳までここで暮らしてたの。」
「へ?」
秋ちゃんは驚いた顔をした。
「親が離婚して、私はお母さんについていったから篠崎なの。前は宮浦だった。たいちゃんは私の実の兄。」
「………え?………えぇぇぇぇぇぇぇ~!」
秋ちゃんの絶叫が部屋中に響いた。
「秘密にしてね!兄と雪兎さんのために私はまだ妹だってバレる訳にはいかないから。」
「どう言う事?」
「私は金持ち組の生徒の本性が知りたいの。私の義姉になる人の本性が知りたいの。」
私が笑うと秋ちゃんは更に驚いた顔をした。
「副会長はお兄さんじゃないよね?幼馴染みってのは本当?」
「雪兎さんは私の元婚約者だった人。」
「………えぇぇぇぇぇぇぇ~!」
秋ちゃんの反応は仕方ないと思う。
私は秋ちゃんに笑いかけた。
「秋ちゃんにだけ教えるね。私はまだ雪兎さんが好きなの。絶対秘密だよ。」
「ヒヨリン!そんな秘密私なんかに話して良いの?」
「秋ちゃんは今、私の一番仲良しの大親友だからだよ。それに私の側に居るとたぶん嫌な思いをすると思う。そしたら、私から離れてほしいの。」
秋ちゃんは眉間に皺をよせた。
「嫌な思いをしても、ヒヨリンの友達辞める気ないからね。」
「秋ちゃん。」
秋ちゃんは私にぎゅっと抱きついた。
「秋ちゃん、私性格悪いよ。」
「そんな事ないよ。私に秘密教えてくれたじゃん!」
私達は友情を確かめるようにぎゅっと抱き締めあった。
その時足音とともにドアが勢いよく開いた。
「日和!どうした?」
勢いよく入ってきた兄は抱き締めあう私達を見てフリーズした。
「お前らなにやってんだ?」
「………百合ゴッコ?」
「今すぐ止めなさい!」
兄は眉間に皺をよせた。
さっきの秋ちゃんと一緒だ。
「話は終わったのか?」
「うん。居間に行こっか?雪兎さんは?」
「たぶん驚いただけだろってお茶飲んでる。」
さすが雪兎さん!冷静だ。
私達はそんな雪兎さんが待つ居間に向かった。
雪兎さんは全員分のお茶を用意して待っていてくれた。
「お帰り。」
「ただいま~!雪。」
「太陽に言ってない。」
「ドS!」
兄と雪兎さんの、会話に私と秋ちゃんは笑った。
秋ちゃんは笑ながら私にこそっと言った。
「素敵なお兄さんだね。」
「うん。自慢のお兄ちゃんだよ。」
私と秋ちゃんは二人でクスクス笑いながら兄と雪兎さんを見つめたのだった。
秋ちゃんが仲間になった。




