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影絵の犬
僕は妹さんと夜の町を歩いた。
遠い昔に兄と二人で歩いた記憶を思い出した。
「この先に廃屋があるの」
「廃屋!?」
「姉と二人で秘密で犬を飼っていた廃屋よ」
「そう」
彼女にとってこの町は始めてではないらしかった。
街灯が僕らの身体を影絵のように地面に写しだす。
その背後を二匹の黒い生き物が追ってくる。
追いかけているはずの影に逆に追われているような気がした。
目的の廃屋を訪ねると、そこには立派な駐車場が出来ていた。
無人のコインパーキング。
それでも痕跡を探すように妹さんは駐車場に入った。
僕は胸騒ぎを覚えたが、仕方なく着いていった。