その音が鳴り止む前に
・その音が鳴り止む前に
―アイツはホントにバカだった
真夜中。
明日が今日へ、今日が昨日へとチェンジする。
そんな時間にそのメロディは突然流れ始めた。
忘れもしないこのメロディ。忘れることも多分、ムリ。
―アイツと別れて2ヶ月ぴったり。
今でも想い出すだけで胸が苦しくて何だか全てを恨みたくなる。
結局何が別れる原因だったのかは今でもわからない。
けれど人生とかっていうモノは必然的な不可抗力で動いていると悟った。
コレもその一つに過ぎないのだろう。
辛いのは今だけだ。
何度もそう言い聞かせた。
そんなワケなかった。
ふたりが最初に出逢ったのは同じコンビニのバイト組として。
アイツがヒトメボレしたらしく、よく話をしてきた。
何となくバイトが楽しくなって、自分とは正反対のあの明るい性格に憧れた。
夕暮れ間近の雨の日、アイツはとても自然に一言
付き合って
と告げてきた。
もしかしたらずっとその言葉を期待していたのかもしれない。
ホンモノの愛情なんて見つけられるのはほんの一握りのヒトだけなんだ。
貧富の差があるように、学力の差があるように、メンタルの強さがあるように、
結局あっという間に時間だけが流れて、ホンモノってやつを見つけられないまま別れた。
それでも、別れたという事実は心にポッカリ穴を開けた。
それもデッカイデッカイ穴。
全てが現実味をなくしてしまったように見えた。
ホントに味気ない、みたいな。
相変わらずメロディは止むことを知らない。
今ごろアイツはどんな気持ちであの繋がる前の不安な音を聴いているのだろうか。
失ってからやっとわかることが多すぎるんだ。
本当に大切なモノ、言葉っていうのは当たり前の中に潜んでいる。
普通に生きていたらソレには気がつけない。
そんなことをアイツは教えてくれた。
―さて、そろそろいいかな?
焦った表情、アーだのウーだのワケのわからない言葉を発するクセ、全部覚えてる。
今、このメロディの向こうでどんな顔しているのかもハッキリわかる。
苦笑気味で携帯に手をかけた。
―アイツはホントにバカだった
それでもしっかり誕生日のコト覚えていてくれた。
生まれてきたことを誰よりも祝ってくれるアイツ。
バカだけどダイスキ。
ありがとう
アイツの嬉しそうな声が胸いっぱいにひろがった。
あとがき:今回は男女の設定はありません。アイツ、が彼氏なのか彼女なのかは皆様の
ご想像にお任せします(笑)ちなみに作者の恋人からの着うたはRADWIMPS
の「もしも」です(蛇足)それではまた次の作品でお逢いしましょう。
ありがとうございました。感想など大歓迎です。