続き 7
直後、今まで そーこ をなだめていたスズキは、今度は御雷に詰め寄るレイをなだめなけれいけなくなった。
その様子と、完璧な御雷の女装を、さっきまで怒っていた そーこ は興味深そうにながめ、当の御雷は全く反省もせず面倒くさそうにレイのお説教をきいている。
一応なだめながらもオロオロしているスズキに、立場もわきまえず御雷が言う。
「なー、アンタ優しいのもいーけど、そんだけじゃダメよ?ビシっていくときゃいかねーと、さ。」
「あ、ハイ。」
レイの兄ということで、一応の敬意を払っているのか、納得したのか、スズキは素直な返事を返した。
だが、これにはレイがヒートアップ。
「おーにーいーちゃああああん!今怒られてるとこでしょー!」
怒鳴るレイに、なぜかスズキが首をすくめて目をつぶり、御雷はやはり動じない。
「あー、ハイハイ、わり、で何だっけ?」
「こらぁー!」
「うーけーるー!きゃはははは!」
見ていた そーこ が笑い始めた。
スズキが、笑う そーこ をたしなめ、御雷は聞いちゃいなくて、レイがさらに怒り、しまいには半泣きになり、そーこ は笑うのをやめず、なんとなく少し時間がたったところで、全くまとまらないままレイのお説教は終わってしまった。
「もー、いい。もーおにいちゃんと話すのイヤ。疲れた。とにかく、しばらく来ちゃダメだからね!」
「んー、じゃ来週またってことで。」
答える気にもなれないレイは、スズキにだけ、作戦会議はまた今度ー、と告げ、力ない足取りで去っていった。
「じゃ、俺も自分ち帰るわ。またな、スズキちゃん。」
「あ、はい、また・・・また?!」
また来ちゃうのか、とさすがに思ったスズキだった。
「まったねー、ミライさん!」
この騒ぎを一人だけ楽しんだ そーこ は、笑顔で元気にぶんぶん手を振った。
後ろ姿の御雷が、片手だけをあげてそれにこたえた。
◆
「もー、おにいちゃんたら、全然話きいてなくて、ほんとムカつく!」
自分の家に帰ってくると、何も知らないレイは騒ぎをおこした張本人にそうグチった。
「そうか、俺はただ、仲よくしてくれていると言っただけなんだが、勘違いさせたようだな。」
御雷が零のせいにしなかったのは、さすがに子供のなゆ太に責任を押し付けるのは気が引けたのか、それとも言い出せなかっただけかわからない。
ともかく、レイには零が黒幕だとはバレていないようで、それをいいことに零は今回のことを全て御雷の独断、単独犯ということにした。
当然それがわかるわけもなく、零が彼らしくもなく反省するような口ぶりなのに気づいたレイは、疑うことなく否定した。
「零さんは悪くないよー!いっつもおにいちゃんああなんだから!」
悲しいかな、日ごろの行いが悪い兄はすべての責任をおしつけられ、悪者にされていた。
それを気にする人格でないのが、人としてどうかは別として、このさい幸いといえよう。
「まあ、そんなに責めるなよ。」
さらに零が、零らしくもないことを言う。
それは、うまく責任をのがれられたことと、ガッカリするほど情けないスズキの姿を見られたという収穫が、どちらも御雷のおかげだったからだ。
思ったほどには動いてくれなかったが、これはこれで結果オーライといってよかった。
「うん、零さんがそーいうなら、もういいや。」
零の言葉に、少し嬉しそうに笑ったレイには、彼の考えなど全く想像もつかないのだろう。
やっぱり、最近少しずつ優しくなってるみたい、などと勘違いをしているのは明白だった。
お互いに全く通じ合っていないものの、とりあえず関係は良好なまま、何事もなかったように今日もまた、一日が終わっていくのだった。




