続き 4
◆
翌日、御雷のいなくなった夕方に、レイは
「はぁ、どうなることかと思ったけど、なんとかなってよかったね、零さん。」
と笑った。
表情もなく、あぁ、と答えた零は昨日のことを考えていた。
人間じゃない、と言った御雷。
人間じゃなくたって、と言ったレイ。
御雷は兄弟どちらとも付き合っている、という乱れた関係を心配したらしいが、真実はそうではない。
が、そうでないからいい、という状態とは言えない。
まず、本当に“人間じゃない”こと。
そしてその上、人を殺すこともある悪魔だということ。
妹を溺愛する御雷が、いや、彼でなくとも兄であれば、家族であれば、“そんなモン”とレイが一緒に暮らすこと、どころか近づくことすら許しはしないだろう。
許されない。
それが自分たちの“今”ではないか?
そう考える一方で、許すも許さないもない、と零は思う。
自分の好きにするだけで、誰がどう思おうが関係ない、俺はそう思っている、と。
俺、は。
知らぬうち、レイをじっと見つめてしまっていた。
照れた顔が、こちらを見つめ返している。
「なに?」
「…二股できるツラか、って思っただけだ。」
たちまち悔しがる顔になり、レイは文句を言う。
「えーヒドーイ!それ絶対けなしてるよねー?」
自分がからかって、レイが振り回される。
“今まで通り”の会話に、ほんの少しだけとはいえ、不本意ながら零は安心を感じていた・・・。