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居候日記  作者: narrow
71/95

続き 3

 昔のドラマみたいだったが、子供の作り話にしては出来過ぎたそれに、御雷は揺り動かされた。

 少し考えてから、彼はたずねた。

 「でもな、俺が前に会ったのは、そのアニキの方なんだ。なのに弟が“おひさしぶり”って、アニキのフリをした。これは、なんでだ?」

 「名前が同じだから、あっちも勘違いしたんじゃないか?つきあってる零なら自分のことだから、話あわせたんだろ。途中で気付いたろうが、修正しようにもアンタは怒っちまってるし。」

 見てきたような(実際そうである)物言いだが、御雷はそれに気付くよりも話に納得していた。

 「そ…か。なるほど、な。じゃ、ついでにもっときいてもいいか?」

 零は良いとも嫌とも言わず、黙っている。

 御雷は、なゆた についてずっと気になっていた事を口にした。

 「あのさ、なゆたん なんでいつも居るんだ?家、帰ってないだろ?あのオヤジが意地悪だからか?」

 前回会ったとき、元の姿だった頃の零は御雷の都合の悪い内面を丸裸にしてしまい、印象は最悪だった。

 零はまたうつむいてみせる。

 レイはハラハラして見守る。

 「いや…母親のほうに、ギャクタイ、されてて。」

 兄妹はのけぞった。

 それぞれ違う意味で。

 御雷は優しくはないが“可愛いモノ”に弱く、なゆた の見た目は、間違いなく可愛かった。

 御雷は解決策を一緒に考えようとする。

 「オヤジは何もしてくれないのか?弟の家にひきとってもらうとか。」

 なゆた、零は弱々しく首を横に振った。

 「父親は、精神的にオカシくなった母親の相手で精一杯なんだ。弟の方の零も、ばあさんが3年

前から入院して、そのせいで じいさんも参ってて

世話をしなくちゃならなくて、だから、レイが。」

 ここで零がレイに視線をやる。

 あわせろ、という合図。

 レイはうなずいた。

 「そ、そうなの!零さんタイヘンだから、あたしがね?でもれ、じゃない、なゆくんイイ子だから全然手がかからなくて、返って助かってるくらいだよね、ねー?」

 零の話は何もかもが、テレビの中のようだった。

 あとでレイが何気なくたずねてみたところ、事実テレビドラマとニュースなんかを参考にでっちあげたということだった。

 それでも、全く信じられないということもなく、というより結果的に御雷は全て信じた。

 「そっか、タイヘンだったんだな、なゆ太…。」

 そっと御雷に抱きしめられた零のすごく迷惑そうな顔が、レイからは丸見えだった。

 「あは、あはは、そうなの。だから、今までどおりでいいでしょ?お兄ちゃん。」

 やや乾いた笑いと共に、レイが言うと、御雷は冷たい顔で答えた。

 「あぁ、その弟くんを認めるかどうかは別の話としてな。」

 「じょっ、女装はやめてよね!もうバレてるんだから…あの、お兄さんから聞いてるし。」

 本当は、同一人物だから知っているだけのことだが、レイなりに気をつかう。

 兄はさらに言う。

 「じゃ面接な。ぜってー不合格、うん、ウソとかついたし。」

 「話あわせた、って言ったでしょ?だいたい最初から不合格じゃ意味ないじゃん!」

 レイは不満を口にし、零は何も言わなかった。

 結局、零が二人に増えてしまい変にフクザツになったが、おかげで、どの零がレイの周りをうろついても不自然ではなくなった。

 もちろん、なゆた の父親である“大きいほうの零”も。

 その日はそのまま、御雷は零が戻ってこないようにとか何とか言って泊り込み、“可愛いなゆた”と風呂に入って彼のヘソを曲げさせた。

(続)

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