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居候日記  作者: narrow
6/95

続き 5

   ◆

 中古ゲーム・マンガ・CDのブレイブ、と書かれたカンバンをかかげた店の前に立つのは、全身黒い服に身を包んだ男の子と、キレイなお姉さん。

 「ここにいるワケね?その不審人物は。」

 決して低くはなく、聞きようによって中性的にも聞こえる声は、女装した御雷のものだ。

 「あぁ。けっこうレイにまとわりついて、ウゼぇんだよな。」

 何か思い当たることでもあるように、見た目に合わない低く不機嫌な声を出したのは零。

 レイと仲のいいスズキに御雷をけしかけて、適当なところで男とバラして笑ってやろう、という計画なのだった。

 もちろん、その目的は御雷にも秘密だが。

 御雷に直接、復讐するのは難しい。

 でもウサは晴らしたい、というワケだ。

 やつあたり、とも言う。

 「じゃ、いきましょうか。」

 ふぁさっ、っと髪をかきあげて、過剰に女らしく御雷が言った。

 答えることなく、零はニヤリと笑った。

 数歩あるくと、自動ドアが開く。

 「っしゃぁせー」

 うわの空なのに、なぜか感じ良く響く男の声が出迎えた。

 「いらっしゃいまっせー」

 元気のいい女の子の声がおいかける。

 カツカツと小気味よい靴音を立てて、御雷がカウンターに近づいていく。

 「あっのーう。」

 ありもしない胸を意識させるような、見えそうで見えない絶妙な角度でカラダを傾けつつ、ねちゃぁっとした甘い声で御雷がカウンターの中にいる男を呼ぶ。

 「はーい・・・」

 ボンヤリした返事をしながらも、長い金髪の向こうの彼の目は、ゲーム画面に集中している。

 動作チェック用の機械で、ゲームを楽しんでいるのだ。

 後ろでは、運動不足そうな、これも長髪の青年がそのプレイを応援していた。

 店員らしいのにまったく働いていないカウンター内の二人の代わりに、名札も何も、店員らしいアイテムを身につけていない少女が前に出てきた。

 「いらっしゃいませ!なんか探してんスか?」

 明るい髪色がよく似合う元気そうな女の子で、言葉づかいはなっちゃいないが、アイソよくニコニコと話しかけてくる。

 零と御雷は彼女を無視した。

 「スズキ、おいスズキ!」

 零がイライラと呼びかける。

 「待って今大事!」

 スズキはうるさそうに止める。

 「あのぅ、ダメ・・・ですか?」

 どこかで聞いたことがある話し方。

 レイに似ている、と認識する前にスズキはそちらを向いていた。

 そこに立っている、レイそっくりな女性の姿に彼の手が止まった。

 デレレヅデデデデンッ

 ゲームオーバーらしい音がして、後ろで見ていた男が、ありぇねぇえ〜、と言いながら奥へ引っ込んだ。

 「レイちゃん?・・・じゃ、ないよね」

 声が全く違う。

 なのに話し方も見た目もそっくりだ。

 「レイの姉のぉ、ミライっていいますぅ。」

 「あ、・・・そっくり、ですね、僕は・・・」

 スズキが名乗ろうとすると、先にミライのほうから彼の名を口にした。

 「スズキさん、ですよね?妹から聞いてます。とっっても、仲良しだって。」

 とっても、というあたりに妙に力がこもっていて、少し違和感があったが、レイにそっくりなミライの笑顔に、釘付けになっているスズキは気づく余裕などなさそうだった。

 その笑顔が妹に比べるといくらか邪悪なことにも。

 なぜなら零とレイを応援してはいるものの、本当はスズキもレイが好きなのだから。

 そのことはレイも零も知っているが、レイは別に気にしていない。

 スズキが、割り込む気はないと宣言しているからだ。

 零は、そんなスズキとレイがちょくちょく二人だけでいるのが(バイト先で少し話す程度でも)気に入らない。

 それなりに整った顔立ちとスタイルで、誰にでも優しくいつも笑顔でいるスズキと、見た目こそ美少年とはいえまだコドモで、態度はデカいわ意地は悪いわの零では、いつ逆転されるかわかったもんじゃないのである。

 それでも反省することなく、ただスズキを邪魔者だと思っているあたり、救いようがない。

 「ところで、どこかでお会いしませんでしたっけ?」

 御雷が少し顔を近づけてスズキをのぞきこむ。

 以前、女装でないときにチラっと会っているのだが、お互い名乗ってもおらず、御雷にいたってはヒドい二日酔いで、よく覚えていないのだった。

 もちろん、スズキはそのヨッパライと、目の前にいるレイそっくりな女性(?)が同一人物だとは思いもよらない。

 不意打ちに頬を赤らめながら、スズキはかすかに首を横に振った。

(続)

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