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居候日記  作者: narrow
50/95

続き

    ◆

「風邪じゃねえかバカ。」

 夜になって咳をしだしたレイに、零は冷たく吐き捨てた。

 「はなみじゅ、でた。れぇさん、ティッシュ。」

 箱ごと渡そうとした零の手が、レイの手に触った。

 零が、小さくつぶやく。

 「ん?」

 白い手がレイの頬に伸びる。

 「…熱でてるじゃねえかバカ。」

 「ふぇ、何か、そーやっていわれたらぁ、ボーッと…」

 「寝ろバカ。」

 「でも、おふろ…」

 「許さん。気になるなら拭いておけ。」

 有無を言わせぬ零が、パウダー入りでせっけんの香りのサラサラボディ、というキャッチフレーズのついた箱をレイの前に置く。

 熱で脳がゆだってしまったと見えて、レイは小さくうめきながらその場で服を脱ぎ始めた。

 パンツを残して全部脱ぎ散らかし、カラダを拭いていたのだが、零は特に何も言わず、ただ彼女の脱いだ服を淡々と片付けた。

 翌日その(見られちゃった)ことを思い出したレイは、深く落ち込んだ。

 が、わりと一瞬で忘れた。

 幸いすぐに食欲も戻り、あっという間に彼女は回復してしまった。

    ◆

 それから、二日ほど後の朝。

 零が寝坊した。

 うっすら朱の差す頬が可愛らしくて、レイは隣の寝顔をそっとつつく。

 「んん」

 眉を寄せて、小さな声を出す零。

 なんかおかしいな、とレイは思う。

 もう一回、つんつん。

 「う ざ…」

 ウザい、らしい。

 レイは少し笑って、気づく。

 声がおかしい。

 おまけに、頬が朱いのも零にはありえない。

 どんなに怒っても、真夏の炎天下に何時間さらされても、彼の顔色はいつも青白かった。

 その朱い頬に、触れる。

 熱い。

 「うそ、熱?!」

 その声に零が目を覚ます。

 「るせぇ…何だ?」

 ゆっくりカラダを起こした彼を、レイが押し倒す。

 「ダメ!寝てて!」

 零は驚きのあまり、無抵抗に寝かされたままつぶやく。

 「・・・は?」

 「ごめんね零さん、カゼうつっちゃったみたい・・・」

 眉尻を下げ、困りきった顔でレイが謝った。

 「…カゼ?俺がカゼなんか」

 言いかけて、零本人も自分の声の変化に気付く。

 ・・・っくしゅ。

 たぶん、彼にとって生まれて初めての、くしゃみ。

 「ほらあ、零さんハナミズたれてきたよ?」

 信じられない、といった顔でぽかんとしている零のハナを、レイはパパッとティッシュで拭いた。

 「はい、くしゅくしゅ、チーンて。」

 どうも耳に入ってないようで、彼は微動だにしなかった。

(続)

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