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居候日記  作者: narrow
45/95

続き 2

 話が学校のことに及んだとき、ミッチーは急に黙り込んだ。

  数秒そのままでいると、ユゥちゃんが彼の顔をのぞきこんだ。

 「どしたの、ミッチー?」

 「忘れ物、しちゃったんだ。」

 それがどうしたのか、と零もユゥちゃんも黙っている。

 「宿題のノート、もって帰らないと宿題できないんだった!ヤバい。」

 「明日誰かのうつせば?」

 ユゥちゃんが言うと、ミッチーは首を振った。

 「間に合わないよ、今日のやつメッチャいっぱいあるんだ!」

 「ママにおこられる?」

 ユゥちゃんがきくと、ミッチーはうなずく。

 「別に、死ぬわけじゃないだろ。」

 零はつまらなそうに言ったが、ミッチーはさらに暗い顔になった。

 「でもヤだよねえ、ねー?」

 ユゥちゃんはミッチーの味方らしい。

 「じゃ、取りに行けばいい。」

 零が言うと、ミッチーはおびえた。

 「入れる、けど、けどダメだよ!4時おばけが出るかもしれないから・・・」

 「あー、あれ?ミッチー信じてるの?」

 なんでもなさそうに、ユゥちゃん。

 「なんだ、4時おばけって。」

 零だけが、それを知らなかった。

 「4時44分にー、学校でオバケが出るんだってぇ。」

 言って、怖がるミッチーがおかしいのか、ユゥちゃんは笑った。

 おびえるミッチーに、零はこともなげに言う。

 「24時間制で言えば、夕方4時は16時だ。心配しなくていいんじゃないか?取りに行けよ。」

 誰か(ほぼミッチー)をイジめるわけではないただの子供の遊びに、彼はもう飽きてきていて、これを口実に解散したかった。

 とはいえ、この零の考えには何の保証もない。

 よってミッチーの不安もおさまることなく、彼はさらに迷い続けた。

 「えー、でも大丈夫かなー、おばけ出たらどうしよう、やっぱやめようかな。」

 取りにいくことを考えるとさらに怖くなってしまったらしく、ミッチーは激しく独り言をいい始めた。

 零は、くっくと笑い、ユゥちゃんは悩むミッチーに一喝した。

 「もー、ミッチーかっこ悪い!」

 そこへ零が口をはさんだ。

 「んなこたない。一人で行けるよな、ミッチー?」

零の微笑には一点の曇りもなく、ミッチーはさらに拒むことができない。

 「幸い、暗くなるのはまだまだ先だ。今日はここで別れることにして、お前は忘れ物をとりに行け。」

 自然にその場を仕切る零に、ミッチーは流される。

 「うん・・・わかった。」

 渋々了解したが、ユゥちゃんには通用しなかった。

 「えぇえー?もうバイバイすんのぉ?ユゥちゃんもっと遊びたぁい。」

 零の方も、そのくらいは読みきっていて、イラつく事も無く対応する。

 「送ってってやるから、ほら行くぞ。」

 歩き出すとユゥちゃんは、待ってよぅ、と言いながらついてきた。

 あとから、ユゥちゃんは一瞬だけふりむいて、

 「ばいばい、ミッチー。」

 と手を振り、少し元気のない彼に、ガンバレー、と無責任な応援を投げかけた。

 弱々しい笑顔でミッチーがそれに応えると、今度は零が振り向き、じゃあな、と言った。

 その後、唇の動きだけでこう付け足した。

 “あとで”

 それはうまく伝わったようで、ミッチーはほっとした笑顔を浮かべ、元気に零たちに手を振ってきた。

 彼らが見えなくなるまで。

 その後、零はユゥちゃんとの何気ない会話の中から、学校の場所を聞き出しつつ、彼女を家のドアの前まで送った。

 明日の誘いを蹴ってユゥちゃんをドアの向こうへ押し込む。

 それから人気のない通りへ入ると、完全に誰も見ていないタイミングを見計らい、姿をほどいた。

 霧状になって高速移動を開始する。

 4時44分に、間に合うように。

(続)

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