6 これ、命令!
起きなくてはいけないのは、わかっていた。あまりグズると、零の機嫌をそこねかねないことも。
それでも、昨日は寝るのが怖くて夜更かししたせいで、とても起きられそうにない。
まどろみながら、ぼんやりそんな事を思っていたレイは、シャツの首元が軽く引っ張られるのを感じた。
「…ぃきゃーっ!」
絶叫と共に起床。
ベッドの上で暴れる彼女の服のスソから、氷がいくつか転がり出た。
「くっくっく・・・おはよう。」
おかしそうに、そして陰気に零が笑っている。
「もーっ、零さんやりすぎー!超びっく り…」
そこまで言って、気が付いた。
声が違う。
今までより、だいぶ低い。
もうほとんど以前の通りに聞こえる。
そして、もっとハッキリした違いがある。
「零さん、おっきくなった?」
それに対して今日の零は、怒るわけでもなくフンと鼻先で笑った。
よく見ると、おっきくなったどころではない。
もう兄の背は、余裕で超えていそうだった。
髪も伸び、肩に付くほどの長さになっている。
ただ、顔つきにはまだ少年らしさも残っていたが。
数秒、黙って見つめられていた零の唇が動き出す。
「俺が大好きなのはわかったから、いつまでも見とれてないでサッサとメシ食って出てけ。」
「・・・みもふたもないよぅ。」
あんまりなセリフに、レイはいじけた声でつぶやき返した。
(続)