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居候日記  作者: narrow
30/95

続き

    ◆

 見覚えのあるドアを開くと、そこは自分の部屋だ。

 黒い服を着た、子供が倒れている。

 あぁ、この光景は、覚えがある、とレイは思った。

 零さんが、子供になっちゃった日だ。

 子供の横にしゃがみこんで、その肩を軽くゆする。

 冷たいカラダが、もぞり、と動く。

 見慣れた顔が、こちらを見る。

 瞳が、光った。

 これは、記憶とは違う。

 レイは、動けなくなった。

 光る瞳が、たまらなく怖いのだ。

 なんで?だって、零さんなのに。

 でも、怖い。

 まるで、零さんじゃないみたい。

 出会ったことのない、モンスター。

 ソレが、口を開く。

 「お前の、名は。」

 問われているのに、レイの唇は、縫いつけられたように開かない。

 緊張にノドが締め付けられ、答えるどころか声を出すこともできない。

 「答えられないなら、契約通りに。」

 首筋に伸びてくる、白く小さな手。

 冷たい指が触れ、レイは息を呑む。

 「ひ」

 思い切り目をつぶる。

 とたんに衝撃を感じて、また目をあける。

 暗闇だ。

 「何の夢だ?」

 すぐ近くで零の声がした。

 どうやら、脱出できたらしい。

 「ひぃっ!」

 それでも、たった今まで見ていた夢のせいで、ただ話しかけてきただけの零の声まで、怖い。

 「ひーじゃねえ。」

 レイのヒタイを、全然チカラの入ってない でこぴん が襲った。

 ぴす。

 「ヒトの顔面殴っといておびえてんじゃねえ。何の夢・・・まさか、俺か?」

 どうやら、うなされたせいでレイは零に危害をくわえたらしかった。

 闇に慣れてきたレイの目に、いぶかしげな零の表情がおぼろにうつった。

 レイの脳裏に、ネコの言葉がよみがえる。

 

 この話聞くとね、夢みちゃうんだよ。

 

 レイは、何も言わず首を振った。

 「寝るのをイヤがったのと、何か関係があるのか?」

 ぶんぶん、とレイはさらに激しく首を振る。

 どうしても話そうとしないレイに、零は一計を案じた。

 「・・・そう、か。話せないような夢なんだな?」

 レイは、ただうつむいた。

 「話せない、ような・・・つまりイカガワシイ内容だったと。」

 「ぇ?えー?!違っそななんじゃないにょ!」

 ロレツも回らぬネボケっぷり、慌てっぷりでレイは否定した。

 「話せないってことは、いやらしーい夢だから、恥ずかしいんだろ?」

 「ちーがーうーよー!」

 「じゃ話せ。話せないならお前は欲求不満決定な。」

 「えー!そんなぁヒドいよぉ!あたしは、零さんのために」

 「エロいなー、大人だなーレイはー。」

 困った声を出すレイに、零の棒読みな非難が降り注ぐ。

 「違うもん違うもん違うもーん!」

 「で、夢では俺と どーんなコトしたんだ?」

 ほんのり、零の声に誘うような甘さが混じった。

 「しーてーなーいー!!」

 「あー、そっか。いえないようなコトだったんだよなあ。」

 思い出したそぶりの小芝居は、またもや棒読み。

 「違うもんっでもだって、言ったら、零さんが」

 「違うって証明するには、話すしかないな?」

 「ううっ・・・じゃ、じゃいいよエロくても。」

 開き直り、諦めてもう一度寝なおそうとするレイの耳に、軽いタメイキが聞こえた。

 「俺が、どうなるんだよ。言ったら。何を心配してるのか知らないが、俺はお前らとは違う。」

 「だって、この夢スゴい怖いんだよ?」

 何が怖いのか、自分でもよくわからないが、その恐怖は思い出しただけで泣きそうになるくらいだ。

 「はー・・・」

 今度のタメイキは、はっきり大きく、そしてわずかにイラ立ちを含んでいた。

 「お前が怖がってた映画で、一度でも俺が怖がったことがあったか?」

 「・・・」

 沈黙を自分の勝利と感じた零はフフン、と鼻先で笑った。

 「さぁ話せ、何がそんなに怖・・・って、寝てんのかよ!」

 一瞬の間が空いたスキに、レイはまた眠ってしまっていたのだった。

(続)

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